「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
実は干物の美味さ・・・・・・VelvetUnderground

 
今やユニクロのTシャツにもある!(笑)1stと凶暴な名盤の2nd

 いわゆるスリーコードのシンプルなロックンロールが好きか?と訊かれると、ちょっと答えに窮してしまう。無論、キライっちゅーコトはないが、好んで聴くことはない。

 そりゃ〜、まぁ酒飲んでツェッペリンの「Rock And Roll」なんてーのをなぐさみにギター1本で弾くこともあるけど、弾く曲と聴く曲と演る曲が違うのは世の常で、別段この曲がフェバリットナンバーっちゅーワケではない。単にカンタンだからだ・・・・・・ソロ以外は(笑)。

 何で素直に好きになれないのだろう?

 思えば、そこにはある種、おれ自身のコンプレックスが横たわってるような気がする。A7⇒D7⇒E7とか、なんてーか、もうパターンは出尽くしてるワケですよ・・・・・・はサンボマスターのセリフだ。で、そこで問われるのは何かといえば、テクニックでも目新しさでも何でもなく、「味」とか「存在感」とか「カッコよさ」とか、リクツでは説明のつかないモノなのであって、そこにイマイチ自信がないおれは、どうにも要らんものをいろいろ身にまとおうとしてしまうワケだな。
 イワクありげな音楽に傾倒して行ったのは、どうもその辺に原因がありそうだ、と今頃になって思えてきた。ホンマ、ニブチン、遅いわ(笑)。

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 さてさて、そんなひねくれた自分でもけっこう素直に好きだ、と言えるロックンロールバンドの一つが、60年代のニューヨークに咲いた悪の華、あるいは早過ぎたパンクバンドとも言われる「ヴェルベットアンダーグラウンド」だ。A・ウォーホールの「ファクトリー」の取り巻きにして、デビューアルバムはサイケの歌姫・ニコとの共作、ライブではメンバーが後ろ向いて演奏してたっちゅー、ヘンチクリンなバンドだが、これは単にフィードバックを容易にするためにやってたことらしい。

 どうにも出だしがポップアート周辺からってコトで、アヴァンギャルドでアーティスティックな活動ばっかしが取りざたされるが、それは中心メンバーの一人J・ケールがそうゆう趣向だっただけで、ヴェルベッツの基本はなんのかんので筋金入りのロックンロールである。ケールのカラーが強く出たといわれる凶暴な名盤「WhiteLight/WhiteHeat」にしたって、出だしのタイトルチューンからしてノイジーでサイケな表層の下にムチャクチャ骨太なスリーコードロックンロールが横たわってる。
 ま、あらゆる物事には陰と陽があり、彼らのロックンロールが決して「陽」でないのは事実だ。そもそものバンド名の由来も、何か怪しげな三文ポルノ雑誌から取られたらしい。アンダーグラウンド、だもんな。明るくはないわな(笑)。

 ノイズ野郎の分際で意外かもしれないが、おれは名盤の誉れ高い「1st」や「2nd」よりも、「3rd」や84年に出された未発表スタジオテイク集の「VU」といった作品の方を良く聴き込んだ。「4th」はイマイチかな?ほとんどルーリードおらへんし。
 ともあれ、J・ケール脱退後の軽やかさが何ともいい感じ。「シスターレイ」とか、やっぱ聴き続けるには疲れるもんな。メロディメーカーとしてのルー・リードの才能はむしろ後者の方に開花してるような気がする。歌詞の方はよぉ分からんけど・・・・・・あ、だからって1st・2ndがダメってこっちゃおまへんで。

 彼らの音の魅力って何だろう?

 単純極まりないコード進行にキャッチーで覚えやすいメロディ、クセのあるボーカル、文学的とか言われるけど、けっこう下世話な歌詞やタイトル・・・・・・「アノコがよぉ〜オイラの悪口言ってんだよぉ〜!」とか「キャンディーが言うにはさぁ〜」みたいな(笑)、ペラペラのタイコの連打と、ジージーと油蝉のような音を立てて鳴るファズギターに初期には顕著な大量のノイズ・・・・・・ところがそうして一つ一つ要素に解体して行っても決して答は出ない・・・・・・どれもこれも、そりゃまぁたしかに60年代には刺激的だったかもしれないが、おれが始めて聴いた80年代には別段目新しさはなかったのだから。

 考えていくとそれは意外なことに「干物」の美味さに近い。それも一夜干とかではなく、カンパチコンに乾かしたヤツ。決して華やかな味でもないし、ちょっと苦みや渋みといった雑味もあったりするけど、噛むほどに味が出る。滋味、と言ってもいいかも知れない。おれはイカが嫌いなのでスルメはあまり好きではないけれど、メザシやちりめんじゃこ、ホタテの貝紐みたいなモンだわ(笑)。

 それかあらぬか酒が良く似合う音だもん。日本酒ではないけど・・・・・・



ちょっと地味だけどこっちの方が好き。「Ocean」は名曲やね


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 今でこそ無数の再発やブートレグが出され、ファンサイトも多数存在する彼らであるが、現役当時は時代の寵児ウォーホールの肝煎があったにもかかわらず、最後までサッパリ鳴かず飛ばずだったのがどうやら事実のようで、その辺のイラ立ちが解散後の怪作「メタルマシーンミュージック」に結実したのかも知れない。
 こうして彼等自身はマイナーなまま終わったのだけど、ヴェルベッツへのリスペクトを隠さないミュージシャンは数知れない。JoyDivisionが本家よりさらにヘタな演奏で「シスターレイ」カバーしてたり、PsychicTVがライブで驚異的な音痴で「サンデーモーニング」歌ってるのには笑ったけど・・・・・・カバーだけでまとめたアルバムも存在する。あ、「裸のラリーズ」と「ジャックス」も忘れちゃいけない。
 控えめに見たって何より、「ニューヨークアンダーグラウンド」と呼ばれる潮流のルーツとなったことは疑うべくもない事実だろう。直系ともいえるテレヴィジョンを筆頭に、トーキングヘッズだってラモーンズだってニューヨークドールズだってハートブレイカーズだって、何がしかヴェルベッツの影響を受けてない連中なんて一人もいないんぢゃないだろうか?

 しかし、解散からはや35年(!?)、ウォーホールの追悼アルバムをルーリードとJケールが作ったのがキッカケで90〜93年に一度再結成してツアーまでおこなってはいるが、こりゃもうはっきしゆうて同窓会ついでのこづかい稼ぎやったな。関係者もずいぶん鬼籍に入ってしまった。前述ウォーホールはじめ、ニコも不慮の事故で亡くなって久しいし、最後までメンバーだったスターリングモリソンも95年にこの世を去っている。生き残った連中もすっかりオッサンオバハンだ。

 そんな中でルーリードだけはアメリカの大御所となった。1942年生まれっちゅーから、御年63歳。それでもいまだに歪み系エフェクターを足許に並べてギターをソルダーノでバリバリ言わせ続ける、しぶとくもいかしたロックンロールジジィだ。おれもそうありたい。

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 最後にいくつかの蛇足を。

 ヴェルベッツは、モノラルの安っぽいラジカセでボリューム絞って、夏の浜辺で聴くとすごくハマる。シチュエーションどおり「Ocean」なんかオススメ。オーディオなんて音質良けりゃいい、っちゅーもんぢゃないのだ。

 日本のヴェルベッツ、といえば「ジャックス」とよく言われるけど、どんなもんだろう?おれ的には「ラリーズ」の方が近いと思うけど、いかんせんマトモに作品を発表しとらんからなぁ〜。ま、どっちもファッションはたしかに1st、2ndの頃のヴェルベッツそっくりだたけどね〜。

 ・・・・・・それにしても再開したてだと、どうも文章のチョーシ出ねぇなぁ〜。


ヴェルベッツを語る際に外せないのがこの人、サイケの歌姫・ニコ。早世が惜しまれます。


それとこの人、親方のA・ウォーホール。このショットもユニクロのTシャツになりましたなぁ(笑)。

2006.01.12

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