「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
MTR v.s. DAW


今でも売られてるカセットのMTR。これはこれでシンプルで味があるな・・・・・・・

 功利主義的に考えると、あらゆるモノ作りの中で音楽活動ほど労多くして益少ないものはないだろう。しかし因果なことに、そぉゆう儲からないことに血道を上げるのは実に楽しい。だからこそ「音が楽しい」で音楽なのだな。

 最初っから話が脱線するが、明治時代「Literature」って単語が入ってきて、どう訳すかでかなり翻訳者は困ったらしい。「Music」は「音楽」とすんなり決まった。そしてその伝で「Literature」を訳すと「文楽」となる。
 ・・・・・・アカンがな。元々、「文楽」って言葉はある。日本の古典芸能である人形浄瑠璃のことだな。それと区別がつかなくなってしまうのだ。
 かくして「Literature」は「文学」となってしまい、青びょうたんのような「文学青年」を多数生み出すこととなってしまった。たしかに「音楽青年」っちゅー言葉は絶えて聞いたことがないし、「文楽青年」では志す気も起きないってモンだろう。黒子だもん(笑)。
 などと、もっともらしく書いたが、このエピソードはアホな文学青年を戒めるための捏造かもしれない。というのも、「人形浄瑠璃」が「文楽」と一般的に呼ばれるようになったのは明治の初めではなく、この芸能が衰退して劇場が「文楽座」一座のみとなった大正時代以降とも言われるからである。ま、その辺を深く掘り下げて真偽を調べるのは、本稿の本意ではないのであとはパスね♪

 ともあれ、音楽青年っちゅーコトバはないにせよ、音楽にウツツを抜かす若者は後を絶たない。おれなんて青年どころかそろそろいい分別を備えているべき中年なのだが、やはり音楽の魔力から離れられない。それで一山当てたいとかそんなんぢゃない。音響の向うにはまだ見たことのない何かがあるのだ。
 一度でいいからそこに自分でも近づいてみたい、って気は恥ずかしながらある。

 しかし、おれはさほど楽器に熟達してるわけではない。具体的にどの程度かっちゅーたら、ギターのあまりテンションのいろいろくっ付いてないコードが初見で弾け、ベースならピックで譜面見ながらルートを追っかけつつ、たまに3rdや5th、7thを交えながらクロマッチックのパッセージもオマケで入れつつ弾ける、って程度だ。キーボードはほとんどダメ。その場ですぐに片手でコード押さえるのもできない。無論、絶対音感もないし、譜面見ながら歌うこともできない。ショボいことこの上ない。

 ほんっと、小学生までのチャンスロスは大きいわ。シクシク。

 後悔したって始まらないが、今の時代、ITの進歩のオカゲで技術はさほど重要ではない。極端なコトいえば、何一つ楽器ができなくったってフルオーケストラを作って鳴らすこともできるご時世なのだ。
 ただし、時間がかかる。要はプログラムとの格闘なので、一つ一つの音を登録していかなくちゃなんない。ぶっちゃけかなり鬱陶しい作業だ。おれはとにかくめんどくさがり屋なので、何事もササササッとできるのが一番なのだ。

 その点ではバンドやるのがいっちゃんお手軽なのだろうが、これにも問題がある。まずメンバー集めがタイヘン。集まっても、全員揃うにはかなり各自が犠牲的にスケジュール調整しなくちゃなんないし、趣味趣向の違いは最初はなくても後から出てくるので、ヘンに民主的な運営やっちゃうと収拾がつかなくなってしまう。かといって独裁主義の絶対君主制では、ゲストミュージシャンでも呼ぶような方式でないと、これはこれで不満がたまる。

 そうなると必然的に宅録しかない。要は協調性のないヤツにゃ〜これしかない、っちゅうこっちゃね。

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 家で一人で楽曲を作るには大まかに言ってMTRにするかDAWにするかの2通りがあるらしい。どっちもまぁDTM(デスクトップミュージック)ってコトでは変わりない。ま、理想は両方持つことらしいが、それなりに費用もかかる。あ、この段落は知ってる人には初歩的なことばっかなんで読み飛ばしてくださいな。初心者なんで勘違いもあるだろうし(笑)。

 MTRとは「マルチトラックレコーダー」の略で、要は多重録音機。楽器の音を一つ一つのチャンネルに録音していって、最終的にそれをステレオの2チャンネルに編集(トラックダウン)する道具だ。昔はカセットテープを片面だけで走らせて4チャンネルで録れる、通称「4トラのマルチ」でも4万円くらいは最低した。無論、空間処理なんてできないし、最終的なトラックダウンのためにはもう一台カセットレコーダを用意する必要があった。また、編集にはダビングを繰り返すことになるので音質劣化が激しかった。
 そんなカセットテープ式、先日3,980円で山積になって売られてるのを見かけた。もう絶滅寸前。

 今はすごい。8チャンネルデジタル録音で各チャンネルに何種類ものエフェクトは掛けれるは、リズムボックスとベースのシーケンサくらいはついてるは、最終的なマスタリングにも各種エフェクトがかませるは、チューナーはついてるは、キーの補正はついてるは・・・・・・とこれだけテンコ盛りで3万円くらいからある。
 1つの機械で完結してるので比較的コンパクトで機動力があるし、さまざまなノブは実際に手で動かせるので感覚的な操作がしやすい。だからバンドの音をスタジオでパパパパッと撮るにはいいと思う。だが、液晶画面がマッチ箱2個分くらいしかないので打ち込みはかなり面倒。


お安くて機能タップリのZOOMの8トラ。バンドやってる人にオススメ

 一方のDAWとは「デジタルオーディオワークステーション」の略で、音源+シーケンサ+エフェクター+マルチトラックの録音機がくっ付いたような仕組みをPC上で動かしちゃうものだ。これも昔は、音源なら音源、シーケンサならシーケンサ、空間系エフェクターならエフェクターと機械をそろえて、それをPC上で同期させて走らせなくちゃならなかったのが、PCの進化によってそぉゆうモノも一切合財PCの中にビルトインできるようになった。オマケにいろいろなすぐれたソフトが無料で出回ってたりもする。使い慣れたPCの中に環境組んでしまうので余計な道具があまり要らないし、何より画面が大きいので作業はラクだ。
 しかし、ギターやボーカルの生音を録るにはオーディオインターフェース、っちゅー小さな箱をPCにくっつけなくちゃなんないし(PCのマイクインプットからもできるが、ちょっとマトモには使えない)、PCの性能に依存する部分がメチャクチャ大きいし、専用機に比べれば音質はやはり落ちる。ソフトウェアなので絶えずヴァージョンアップの問題が付きまとうし、OSが変わればゴッソリ使えなくなるリスクもある。それと何ちゅーか、全ては画面上にヴァーチャルに示されるだけなので、直覚的な操作がむつかしく、生々しさに欠ける気がするのはロックぢゃない気がする。


DAWの代表例、スタインバーグのキューベース

その画面


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 昨年、フリーソフトで「MusicStudio」ってーのを入手して、しばらくグリグリ遊んでた。これはフリーソフト(※)とはいえ内容テンコ盛りで非常に評価の高いものだが、音源が別途必要でやはりこれだけで1曲作ろうと思うとちょと苦しい。ギターとベースは打ち込みではなく生音で録りたいし、歌も入れたい・・・・・・たってスクリーミングだけど(笑)。

 やっぱしわいにはややこしい機械はアカンのや、MTRの方が性分に合うとるんや、と最初はそっちをいろいろ当たってみたのだが、どうやら最近、DAWに比べるとかなり分が悪いらしい。なんでも一通りそろってはいるが、内部で完結しちゃってる分、そっからの拡張性がないのだそうだ。
 冷静に考えると機能より何より、一杯つまみのついたいかにも機械らしい機械がこれ以上家に増えるのは、ただでさえニワトリ小屋の我が家がますます狭くなるし、何だか手入れが面倒にも思える。スライドコントロールのすき間とかホコリが入ったらガリも出るだろう。イライラするのは必至だ。

 方や店で売られてるDAWは単なるボール紙の箱に過ぎない。全てはCDとマニュアル、メーカーのWebサイトの中にある。オーディオインタフェースにしたって意味不明の小箱だ。何だか説明されてもサッパリ分からないし、いろいろついたMTRが3万円少々で、変換だけしかできない小箱が2万円っちゅーのもより一層混乱する。そもそも、フェティッシュな志向が強いおれにとってはこざっぱりしすぎて何ともたよりない。

 まぁ、キモチは9割がたDAWに傾いてるのだが・・・・・・さらには制作時間の捻出って問題も残ってる。ああ、悩みは尽きない。


※MusicStudioはフリーの”Producer”、シェアウェアの”Standard”、”Independence”とある。動作が軽く、一番高いのでもたったの3,500円。PCの知識が豊富な人にはオススメではないでしょうか。


ちょっと変り種。ヤマハのMP3多重録音機・サウンドスケッチャー。上等なオモチャってカンジ。

2005.11.03

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