「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
爆音出せりゃそれでよし!!


皮肉ぢゃなしに世界一のアンプの一つと思う。面白くはないけど。

 「磁石入っててなぁ〜、電気仕掛けで音出とるんぢゃ!アホンダラァ〜!!」とは、何のライブでだったかは忘れたが、若き日の町田町蔵が絶叫した名言だ。まっこと電気楽器は、アンプで増幅しないと楽器として使えない。

 アンプの音の良し悪しはある程度分かるツモリだし、特に最近の新興ブランドのチューブアンプの音色ときたら、どれも甲乙つけがたい素晴らしさだ。マチレスとかソルダーノ、コッホ、ヒュー&ナントカ・・・・・・etc、う〜ん!もぉホレボレェ〜♪タダでくれるっちゅーんなら四の五の文句言わず喜んでもらう。で、そのままメインの機材にする。
 ・・・・・・つまり、実のところおれ自身はアンプにほとんどこだわってない。以下の条件を満たせばなんでもOKなのである。

    1.デカい音がする。 ※当然、家庭の居間用ではこの条件は除く
    2.大きくない。
    3.頑丈で壊れない。
    4.安い。

 ・・・・・・アホみたいやな(笑)。

 ま、無論、オブリッジっちゅうか、TPOもあって、ヘビメタのギタリストがフェンダーのちっこいコンボアンプぢゃカッコ悪い。「チャンプ」だったりしたら泣くな。逆に、マーシャルの壁をバックに面鳴りガンガンでさわやかなポップソングを歌われても困る気がするけどね。
 それに音のデカさと図体のデカさ(ついでに言うと重さ)はおおむね正比例してる。だから、「大きくない」とはワッテージに対しての相対的なものだ。

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 昔バンドやってた頃に所有してたアンプは、ローランドの「Cube60」ってヤツだった。カタログ見ると、今でも売られてるみたいだ。選んだ理由は無論、上の条件に合致したからだ。縦横が40cmほどで奥行きが25cmほどのサイコロ状、だからキューブ。日産のキューブとネーミングのセンスはいっしょ。
 ちなみにベースのヤツも、これの100W版を使ってた。



おれの持ってたのとは色が違うけど、だいたいこんなんっす。


 これだと、かつかつだけど何とかスクーターの足許にも置けて、持ち運びカンタン。そのくせ音だけはやたらデカくてヌケもよく、中くらいまでのライブハウスならPA通さなくても十分に鳴り響いてくれた。

 当然、問題もある。キューブではあってもチューブぢゃないので、回路はトランジスタ。だから、アンプ側で歪ませるとどうにも音にコシとか芯とかツヤがない。その分、クリーントーンならハラ立つほど歪まない。この辺は元が電子オルガン屋さんなのだろう、クリーンに増幅させる技術はピカイチだった。
 ・・・・・・というものの、おれの弾くギターの80%くらいは、クリーントーン(それもフロントピックアップ!、笑)だったので、ほとんど実際の影響はなし。

 しかし、やはり歪んだ音は必要なので、ここで歪み系エフェクターの登場となる。

 そう、おれは「アンプで歪ませる派」ではない。全部エフェクターだけでやっちゃう。金とヒマとこだわりのある人なら、クリーン系と歪み系で別のアンプ立てる、っちゅーのもOKだが、めんどくさがりのおれとしては、そんなややこしいこと到底やる気になれない。
 このやり方は、デジタル技術が進歩した現在ならともかく、20何年前はまったく邪道と思われていた。いや、今だって厳密に言えば邪道だろう。アンプ側で歪ましたディストーションの音色のクオリティに、残念ながらエフェクターやモデリングで作った音は、かなり肉薄しつつあるものの、まだ追いついたとはいえない。何てーか、上品過ぎてナマナマしさに欠けるのだ。


当時のおれのセッティング。これにさらなる飛び道具でカシオトーンをピックアップに押し付けたりもしてた。ファニーキャットだけは取り返したい!!
ちなみに廃版モデルはいっちゃん近いもので代用

 でもさ〜、バンドって、みんなでやるモンでしょ?その程度の差は埋もれちゃいまっせ。それに、音楽は音色だけで決まるものぢゃない。特にギターは、ピックアップ、弦、ピック、エフェクター、そして何より技量、といろいろ不確定要素の多い楽器で、そこがまた面白いのだけど、その中でアンプの占めるウェイトはそれほど高いとは思えない。それと何よりまずおれ、技量が欠けてるし(笑)。

 ・・・・・アンプにこだわらんのんなら、ワザワザ自分で買わんでもええやないか!?ライブハウス備え付けのを使えよ!って意見もあるだろうが、やはりマイアンプは必要だった。なぜなら、世の中そんな至れり尽くせりのハコばっかぢゃないからだ。行ってみたらアンプが壊れてた、あるいは機材が何もなかったってコトもままある。
 んなワケで、安心できるトコに行くときは、こんなクソ重たいもの持ち込むことはなかったっす。そこにある機材でまったく問題なく間に合ってました〜・・・・・・っちゅーか、上等のだとツマミが多すぎて混乱することの方が多かったな(笑)。

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 有名な話がある。ブルースの巨匠・BBキングが初来日した時、カレは愛用のセミアコ「ルシール」しか持って来なかったらしい。その他の機材は全部日本で調達。
 そうしてあてがわれたのが、悪名高いヤマハの「F100」ってモデルだった(ヤマハさん、ごめんなさい!そぉいやドラムのコトでも悪い例に引いちゃったな・・・・・・)。ま、大昔、レンタルやスタジオの定番といえばヤマハのこのFかローランドのJCって決まってたもんだ。


これが伝説のF100。ホントはクリーンで丈夫でいいアンプですよ。

 スタッフは、アンプ直でブチュッとシールド突っ込むBB本人のあまりの無頓着さにアセッたという。これでマトモな音が出せるんかい!?みたいな。

 全ては杞憂だった。BBは何事もなく「自分の音」を出し、それまでの数々の名演と何ら変わらぬ熱演を繰り広げたのだった。その後日本のブルースギタリストの間では、アンプの能書きたれず黙って「F100」にシールド突っ込むことがはやった・・・・・・のなら、中島敦の「名人伝」そのままだが、実際のその後がどうだったかは知らない。しかしそぉいやぁ、日本を代表する名ブルースギタリスト・内田勘太郎は「F100」愛用してなかったっけ?

 多少「大御所」の名前にアテられてたから、演奏がよく聴こえたのかもしれないが、それでもこの話はなかなかシニカルで好きだ。

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 個人的にはアンプにこだわらんけど、でも、そぉゆうモノにこだわる人は決して否定しない。微妙な差異を追い求めるその執念が「音楽」の奥底を掴み取るコトだってあるからだ。

 もう一つこんなエピソード。

 アンプの話ぢゃなくて申し訳ないが、不世出の天才ギタリスト・ジミヘンがレコーディングしてたときのことだ。ローディーの用意したファズ「ビッグマフ」が、どうにもイメージ通りの音が出なくて、交換を命じたのだそうだ。当時は電子部品の品質が今ほど安定してなかったので、実際、品質には相当のバラつきがあった。


これっす!

 パシリのアンちゃんは別のを買いに行ったか、借りてきたか、とにかく用意して渡したが、返事は「×」。「これぢゃおいらのブードゥーチャイルの音が出ないぜ、ベイビー!」と言ったかどうかは定かでないが、とにかく「×」。
 次のビッグマフが用意された。これまたNG。3台目、4台目・・・・・・いい加減ぼんはイヤ気がさしてきて、最初にダメって言われたのをコッソリ手渡したのだった。

 結果は「○」(笑)。「OK!これでおいらもブリブリにパープルヘイズが弾けるぜ!」と言ったかどうかはこれまた不明。

 ・・・・・・ジミヘンの耳がいい加減、って風にこの話を読んではいけない。これほど創作ってーのは主観的でワガママで、定量化・定性化できないモンなのだ。ま、おれとしては批判的だが、ワープロでマトモな文章が書けるかぁ!?とのたまう作家も、結果さえ出したらOKOK♪。
 だから、アンプにこだわりたい人は徹底的にこだわればよいと思う。首をひねりながらあーでもないこーでもないと、ツマミもひねり、機種をとっかえひっかえした先に、あるいは音楽の神は降臨するかもしれない。マジで。

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 そんなおれが今欲しいアンプ、と訊かれても、「特にないです。」としか言えない。ちょっと前までは、いつか家の一室をスタジオに改装したら、面白くもおかしくもなんともないJC120や不朽の定番ツインリヴァーブを置こうかとも思ってたが、デカくてジャマだし、その気は失せた。

 やっぱLINE6でもPA卓に突っ込んでモニターで鳴らすのがラクかなぁ〜・・・・・・・でも、それだと何だかテクノやDTMっぽくてロックの雰囲気出ないしなぁ・・・・・・ま、あるモンで鳴らすのがいっちゃん実はクールなんかも。

ファニーキャットはhttp://www.geocities.jp/thelorrets/kumi.personal.html、ビッグマフはhttp://www.itogakki.co.jp/以外は各社HPより。

2005.09.25

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