「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
呑舟の魚


グレコのブローラー。これのブロンドでメイプルネックが欲しいんだよぉ〜!

http://www.geocities.jp/studiogreco1/より

 釣りそこねた魚は舟を呑み込むほど大きく見える・・・・・・手に入れそこねたものは良く見えることの喩え、つまり、コマしそこねた女はいつだって美人だ、っちゅーこってすな(笑)。
 人間が欲から逃れられないものである以上、これは必ず付いて回るのだが、今日は楽器編を書いてみよう。女性編は多すぎてもう書ききれまっしぇん・・・・・・トホホ。

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 これにはダントツの1位がある。それは珍品中の珍品、「ダンエレクトロのロングホーンギターのWネック」!!

 ダンエレクトロとはJ・ペイジやJ・ブルースの使用で有名なビザーレギターの元祖のような存在である。ボディーはメゾナイトといってハードボードに使われるチップを固めた板でできており、中は空っぽ。よく言えばセミアコースティックなんだろうが、どぉ考えても手抜きで作ったような構造だ。数年前に共和商会から再発になってかなり普及したけれど、やはり構造は安っぽかった。このブランドのすごいところは、メチャクチャチープなくせに弾いてみるとけっこう独特の味のある音がするところで、ピッチなんかも意外に正確だったりする。

 さて、今を去ること20年前、まだ学生だったおれは大阪は難波のロックインでそれを発見した。12弦&6弦のWネック。価格はわずか39,800円。本当にダンエレクトロだったのかどうかも今になっては分からない。コピーモンかもしれないが、カラーはここ特有のオレンジっぽい外回りとアイボリーのサンバースト。フレット数はやたらと多くて、ハイポジションはまるでマンドリンのように狭い間隔で打たれていた。全体のフォルムは温泉マークに似ていたな(笑)。
 さっそく試し弾き。とにかく軽い。Wネックのクセにレスポール1本分くらいしかなかった。そりゃそうだ、中身ガランドウなんだもん(笑)。アンプにつなぐ。お!ちゃんと鳴るやん♪ってカンジ(笑)。基本的にペコペコの音なのだが、エフェクターかますとそれなりに鳴ってくれる。
 当時はバンドやってた頃なので、ステージで目立つギターがあっても良かろうと、財布を見ると金がない。

 −−−−あの〜、これ取り置きできますか?
 −−−−それやったら手付金が要りますねぇ。
 −−−−いくらくらいですか?
 −−−−んん〜・・・・・・1万円からお願いしてるんですけど・・・・・・

 その時財布には2,000円くらいしかなかった。おれは泣く泣くその場は諦め・・・・・・そして翌日行ったら売れてしまって、それっきり。ネット上で画像さえも見かけない。

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これがかなりおれの見たものに近い。
弾いてるのは今や昔日の面影が全くないJ・ペイジはん


 続いての2位は「グレコのブローラー」。ジューシーフルーツのイリアが弾いてた、ショートスケール24フレットでちょとリッケンっぽいギター。名作「GO」シリーズの派生モノで、変わった形のトレモロが付いてた記憶がある。いくつかカラーヴァリエーションがあったのだが、おれが欲しいのは、シースルーのブロンドでホワイトシカモアのトラ目が透けて見え、メイプル指板にパーロイドのポジションのヤツ。
 確か梅田ナカイ楽器で見つけたのだが、この時も金なくてアウト。

 ただ、今になって思えばショートスケールはいまいちおれには合わないので、持ってても宝の持ち腐れになるだけかもしれない。たまにヤフオクとかで当時の定価そのままで(法外ぢゃなぁ・・・・・・)出品されてたりするが、たいていはブラウンサンバーストにローズネックなのでもひとつ食指が動かない。
 「StudioGreco」(http://www.geocities.jp/studiogreco1/)というHPには、80年前後の最も脂が乗り切っていた時期のグレコの製品群が圧倒的なボリュームで掲載されている。しかし、ここでさえもおれの探すカラーピッタシのものは出ていない(上のカタログはブロンドではなくナチュラル)。

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 さて3位。「フェルナンデスのバーチカルトゥイン」・・・・・・知らんやろうなぁ〜。前回のP−Modelのジャケットに写ってるのがそれで、ジャズマスターをムスタングにしたようなショートスケールモデル。それってジャガーちゃいまんのん!?ってツッコミ入れられそうだが、もっと大胆な形で、色はイエローとかブルーとかチープなソリッドカラーだった。定価は70,000円だったと思う。テクノの後に続いてやってきたニューウェーブブームを狙って売り出された雰囲気があった。
 トレモロはムスタングに似たナイフエッジ式で、スプリングも同様の2本だったが、ストラトのようにボディー裏にキャビティがあったような気がする。

 何がコイツの特徴といって、それは何よりピックアップだろう。P−90やジャズマスみたいなでっかいのが2ケ付いていて、コイルを直列につないだ、ってーのがウリ(だからバーチカル、ね)。初めからフェイズアウトしたようなジャキジャキの音色はものすごい個性的だった。
 出た当初は比較的あちこちで見かけたのだけど、その内買えるからいいや、と思ってる内に消滅、ソレっきり。ずいぶんネットを漁っているのだが、画像さえも見つからない。誰か、くれとは言わない、画像だけでもも一度見てみたい。お願いします。

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 4位に来るのは「フレッシャーの#4001ベースのコピー」。急にチープになったなぁ(笑)。

 ま、安物ではある。当時の定価は38,000円、指板の材質が変わってて、「カリン」が使われていた。クダらないことに関する記憶力にはわりと自信あるのでたぶん間違いない。中学生だったおれはてっきり本物のリッケンバッカーが同じつくりなのだと思っていたが、後年に到ってリッケンもフツーにローズであることを知った。他のコピー品はフツーにローズが使われていたので、何でこれだけがカリンなんて妙な素材を使ってたのかは不明である。他はちゃんとメイプルボディ・ステレオアウト等もコピーされており、値段の割りに呆れるほど音は良かった・・・・・・っちゅーか、当時のおれには良く思えただけかも知れない。

 でも、子供心にもこんなネックの仕込みでデタッチャブルではすぐ曲がりそうやな、と思わせた怪作。家の近所のダイエーのレコード屋の隅に黒いモデルが売られてあったのだが、その内売れたのか返品されたのか、店頭から消えてなくなり、それっきり見かけることはなかった。

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 5位、ちょっとシブいよ。「キャメルのマローダーのコピー」(笑)。キャメルはアーガスの前身となったこれまた共和商会系のブランドで、国産ギターにレプリカブームが訪れる前に、本格的なレプリカ色を全面に打ち出していた。でも中身は実はハリボテだったり、とちょとバッタモンの香りを漂わせてもいた。
 カタログでは各モデルの紹介の下にその使用で有名なアーティストの似顔絵が添えられていたように思う。テレキャスならR・ブキャナン、プレベならR・ウォータースってなカンジで、ちょっとシブめの人がチョイスされていたのだが、コイツにはKISSのP・スタンレー。

 でもさぁ、彼はこれをステージでの破壊専用に使ってたんぢゃなかったっけ?(笑)

 本家ギブソン・マローダー自体がそのようなカワイソーな位置にあったのである。たしかにギブソンらしくない。メープルのデタッチャブルネックに、ボディーを広く覆う白いピックガード。リアのシングルコイル・・・・・・形こそレスポールだが、全体としてはモロにフェンダーを意識したものだったのだ。思えば、当時のギブソンにはR&Dとか血迷った失敗作が多かった(※下図参照)。

 ともあれそんなんのコピー(笑)。こりゃもうどうしたってアカンわ(笑)。

 でも、おれは軽くてちょとパンクっぽいチープな雰囲気のコイツが欲しかった。キャメル、っちゅーブランド自体もすぐ消えた。富田林のナントカ楽器の店頭にあったけど、高校生のおれはまずは自分のアリアプロを弾きこなすのに必死だった・・・・・・。

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 最後はふたたびグレコ。型番は「EG−1800」だったかな。ミントコレクションと名づけられた、いわゆる「ドンズバ」のレスポールのコピーだ。その最上級が定価18万円也のコイツだった。今時、本家ギブソンでも入手がむつかしそうな見事なトラ目のメイプルトップはじめ、寸法から材質まで完璧にコピーされた、素晴らしい出来栄えのギターである。

 現在ボツボツと更新している温泉の北海道編だが、その時のことである。最終日の小樽でおれは町を散策してて、レコード屋兼楽器屋の片隅に吊られたギターの中から発見した。もちろん中古だったが、売価は49,800円。状態はA−くらいで目立つ傷もなし。うわお♪
 吊り下げられてたチェリーサンバーストのそれをお願いして下ろしてもらい、おれは念入りに細部を調べた・・・・・・が、よく分からない(笑)。ネックの仕込みや塗装の仕上げはたしかにスゴかった。無論ヘッドストックも表面薄板張り。ラッカークラックが入り始めているトコからすると、1800はフカシでも1000以上の上級モデルであることは間違いない。無論、鳴りもものすごく良かった。

 ・・・・・・上の5本とは異なり、おれは最終的にこれを買「わ」なかった。
 何で諦めたのかは色々ある。たしかに路銀も底を付きかけてたし、持って帰ろうにも車の中はすでに荷物で一杯になっていた。しかし、それより何よりおれは一風変わったギター、ちょっとヒネリの入ったギターが好きなので(ストラトはヒネりやすくていいなぁ〜、笑)、結局のところエレキの究極の標準形のようなコイツはどうも合わない気がしたのだ。

 いやもうこれってまさに女性といっしょ。才色兼備でも個性がないのはダメなのである。香水だって、いい匂いばっかりぢゃ単に「いい香り」に過ぎないらしい。ちょっと悪臭を混ぜないと真の香水とならないそうな。

 ・・・・・・ってなカンジで自分でチャチャ入れて今回はおしまい。道具ネタは気楽でエエな〜、っと♪(笑)


これは本物のマローダー。画像さえもネット上ではあまり見つからない不人気ぶり。


今回は画像が乏しいのでギブソンの変態ギター群を参考に挙げておきます。これはCorvus2


R&D


Victory・・・・・・これがギブソンかぁぁぁぁっ!

附記:

 本稿は、友人の掲示板に以前アップした内容を元に、今回大幅に加筆・修正を行ったものである。

2005.05.23

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