「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
おっいっらっわぁ〜ドォ〜ラマァ〜♪

 ・・・・・・たったっけぇ〜ぬぅ〜ドォ〜ラマァ〜♪っと(笑)

 タイコが大好きだ!好きだけどしかし、まったく叩けない。手足がバラバラに動いて、なおかつリズムをキープできるなんてとてもおれには信じられない世界だ。
 でも、タイコは分かる。ウマいヘタも分かるし、センスの良し悪しも分かるつもりだ。好みもかなりうるさい。大体、ギタリストのはしくれのくせに曲を考えるのは大体いつも、ベースやリズムパターンからだった。

 バンドの要は以前も書いたが、1にタイコ、2にベース、3・4がなくて、5にリズム隊のコンビネーションである。オマエはノイズマニアぢゃろーがぁ!?とツッコミ入れられそうだが、完全即興・猛烈轟音の非常階段にしたって、20何年の研鑽の結果、おそろしくリズミックなテンション(無論8とか16とか言えるもんぢゃないけど)が全体を貫いてるからカッコいいのだ。
 ことほど左様にリズムは大事である。

 おれには昔、奇妙な悪癖があった。口ドラムを絶えずブツブツ言うのである。周囲のヤツにはいいメーワクだ。言い訳させてもらうとこれは一応作曲のツモリだった。思いつくままトカチャカツクチャカストトンパンパンとか言いながら、気に入ったのを忘れないようにしてスコアに起こしてたのである。一番被害をこうむってたのは、いっしょに飲むことが多かったMだろう。今さらながら謝りたい。
 とはいえ、この不思議な修練の甲斐あってか、バンドやってた時の曲作りでリズムパターンに苦労したことは一度もないけどね。

 今日はそんな、叩けないくせに妙にこだわっている「ドラム」について色々書いてみよう。完全に個人のシュミの与太話なので、端折って読んでくださいな。

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 まず、ドラムセット。

 ブランドや胴の材質なんてどぉでもいいのだけど、とにかく、アコースティックがよろしい。バスドラ(BD)・タム(TT)・フロアタム(FT)が各1ケのシンプルな3点セットで、バスドラの口径が小さめのが見た目も含めて好みだ。何かジャズ用みたいに、ドラマーの膝頭がバスドラの上に見えるくらい小さいヤツね。
 バスドラの直径には2インチ刻みで18インチから26インチまで5種類あって、ハードロックやヘビメタでは24〜26、フツーのロックは22〜24あたりが一般的なのだけれど、おれは昔から一貫して小径の18〜20あたりの音の方が締まりがあるような気がして好きだった。


3点セットの例(写真はグレッチのカタログより)。水平セッティングがもうカッコ良すぎ!!


もひとつシュミぢゃないセットの例(ヤマハさんごめんなさい!)

 バスドラが18〜20インチなら、タムは12インチが標準なのだろうが、これは一回り大きく13インチ、フロアも14インチではなく16インチ。ま、でも、さほど大事な要素ではない。タイコはキック(バスドラ)とスネアとハイハットで聴かせるものだからだ。
 なもんで、スネアは大事だ。これもまぁ材質に木やら鉄やら真鍮やら色々あって微妙に音色は異なるのだけど、さほど気にならない。強いて言うならブラス(真鍮)製で周囲が雪平ナベのようにデコボコに叩かれたヤツが、乾いてヌケがいい割にダークな響きで好きかな、とも思うがどっちゃでもいい。

 材で何より大事なのはヘッドだろう。タイコの皮のことである。白いのにするか透明のにするかでも全然音が違う。透明のほうが「ドン」とか「ボン」って低い音がする。レモのピンストライプのように2枚重ねで間にオイルを挟んだのがいいな。スネアは乾いた音が身上なので白いのに限るけど。
 さらにチューニングもあるぞ。バスドラは普通でミュートをかます。タムとフロアは低めでノーミュート。スネアはカンカンに高め、かつ、スナッピーもザラザラと暴れないよう、締め上げた上に両端をガムテープで押さえてさらにミュートもシッカリかます。これでおれ好みのセットの出来上がり。
 ちなみにスネアをこのようにすると、ごまかしが効かなくなってものすごくロールがやりにくくなるので、ドラマーには非常に不評だった(笑)。

 あ、シンバル忘れてた!!シンバルはタイコ本体よりもむつかしい。音色は千差万別で無限ともいえる組み合わせがあるのだ。最低要るのは2ヶ1になったハイハットだろう。ライドはどうでもいいけどクラッシュは要るし、アクセントのチャイナやスプラッシュもあった方がいいな。タイコの数は少なくてもいいけど、こっちは多いほうがカッコいいのだ。
 なにより大事なのはハイハットのセッティングで、クローズでキチンと閉まってることだろう。叩いて「チチチ♪」とか「ツツツ♪」と短く鳴ってないと我慢ならない。

 何分大きいもので目立つから、見た目だって大事。これにも変なこだわりがあって、昔ながらのアバロンのようなセルロイド貼りが好き。木目とかヘアラインのメタリックとか、どこがいいのかサッパリ分からない。

 さて、こーゆータイコのシュミは、上の比較画像見れば分かるとおり、やはり地味っちゃー地味なので、あまり周囲にはウケがよろしくなかった。特に80年代初頭、「バンドやろーぜ!」的な高校生の頃は、「おれ、こぉゆぅのが好きなんやけどな〜」と話しても、ほぼ必ず「オマエ、おかしいんちゃう!?メッチャ趣味悪いで〜!今時そんなんチャーリーワッツくらいやで!」と一言の下に片付けられては、孤独と悲哀を味わっていたのである。
 ・・・・・・それが、である。最近のドラムメーカーのカタログ見ると、けっこうあるんですよ!3点セットが!小さ目が!セルロイドが!ことにセルロイドのカラーバリエーションなんて各社年々増え続けている。

 おれは何だか、マッドサイエンティスト扱いされながら自説の正しさが証明された科学者のような気持で、感涙にむせんでいる・・・・・・ってそこまで言うと言いすぎだなぁ(笑)。

        
セルロイドのカラーリングの例(TAMAのカタログより)。昔は見向きもされなかったのに・・・・・・

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 タイコが揃えば次は叩かなくっちゃ。

 「前ノリ」、「後ノリ」ってコトバがある。ちょっと上目で、正上位でチンコが挿入しやすいのが「上ツキ」、バックで入れやすいのが・・・・・・とシモネタかましてる場合ではないな。拍(ビート)のホンの僅か前で叩くのが前、逆が後で、後ノリは「タメが効いてる」などと言われてホメそやされるが、バスドラの裏打ち以外、おれはあまりいいとは思わない。特にスネアの後ノリなんて、おれには「餅をついてるよう」にしか思えないけどな。ダサダサ。ジャストビートでいいんだよ。正確無比。だからおれは、リズムボックスの抑揚に乏しい無表情なビートも決して嫌いではない。

 上にも書いたとおり、「タイコはキック(バスドラ)とスネアとハイハットで聴かせるもの」なので、これはまぁ多彩なほどいいと思う。1曲の中で使いすぎるとダサいけどね。オープン/クローズ、リムショット、通常とは逆のスネア頭打ちやハイハット/スネアのロール。敢えてシンプルな4泊踏みのバスドラ・・・・・・言い出すときりがない。
 要は、「核になるパターン」が大事なのだ。そのために使うのであれば、別にタムだってフロアだってどんどん使っちゃえばいいのだ。

 この辺がサッパリ分かってなくて、何の曲をやっても8ビート・刻みはハイハット・2拍4拍のスネア、しかできない人がいる。・・・・・・んでもって、この手の人に限って、とってつけたようなオカズ(フィルイン)ばっかり入れたがる。ストトントトントドコドンビッシャン♪みたいな(笑)。うう・・・・・・イケてないじぇ〜。
 あのさぁ〜、オカズなんて無理には要らないんよ。たまにちょっとロール入れて、小節のアタマでクラッシュ叩いてくれりゃジューブンなんだってばさ。

 この手の「イケてないオカズ」の好例を一つ挙げておこう。それは何といっても「クリムゾンキングの宮殿」だろう(笑)。特にアルバムの最後、タイトルチューンが圧巻。これでもか!?っちゅーくらい毎度パターンを変えたしょーもないフィルインが連発される。このセンスの悪さには実にもう感心させられる。

 しかしもっと最悪なもの、それは何といっても「ドラムソロ」だろう。縁の下の力持ちで目立たないのを憐れんでか、長丁場のライブで必ず1曲は披露されたりするが、あれほどくだらないものはない。テクニックの展覧会にもならない。手数が多いことは威張れることでもなんでもないのに。それもまた長いんだ〜、これが。ジャズのせいぜい数十秒のコンパクトなドラムソロならまだいいよ。何分も何分も、アホかぁ!?って気になるな。
 今でもああゆうのってやってるんだろうか??

 そんなマヌケなドラムソロの好演も一つ挙げておこう。偉大なる「餅つきドラマー」ボンゾことJ・ボーナムに敬意を表して「モビィディック」だな、やっぱし(笑)。ツェッペリンってハッキシ言ってタイコのノリは良くないよ。だってさぁ〜、曲自体はもっと疾走感のカタマリであるべき「アキレス最後の戦い」とかだって、あんなていたらくだもん(笑)。

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 さて、聴き手の側に徹してるのなら、こうして評論家でいられて実に気楽だったのだが、そうとも言えなくなって来た。先年、家にタイコがやってきたのである。最後にその辺のくだりを書いて本稿の締めくくりとしたい。

 コトの起こりは会社での同僚とのナニゲな会話だった。

 ------タイコはま、やっぱし憧れやねぇ〜。
 ------僕の家にタイコありますよ。どっかからもらったもんで誰も叩かないんだけど、なぜだか昔からあるんですよ。
 ------マジ!?
 ------いいもんか悪いもんかも分からないんですよ。ジャマなんで差し上げましょうか?
 ------おお!もらうもらう!

 そうして「月の桂にごり酒」1升と引き換えでもらったのは、ヤマハの古いセットだった。ま、上級ラインではない。なおかつスタンド・シンバル類に欠品あり。おそらくは元のオーナーが使えるものは抜いたのだろう・・・・・・端的に言うと、ガラクタに近い。
 でも何と、普及品では滅多に見ない20インチの小径バスドラ(通常は22インチが多い)。これは何よりうれしい。タムも12と13がついてるので、12は捨てればいい。唯一、フロアが14なのだけがシュミと異なるだけ。さらにタム類のヘッドには、件のレモのピンストが張られてあって、かなりいい音がする・・・・・・つまり、おれはいきなり永年の理想にほぼ近いセットを入手したのである。
 カラーがヘアラインのメタリックレッドなのは諦めよう。ゼータク言っちゃいけない。

 まともなセットにするには、欠けている部品を補ったり、錆の出たリムを替えたり、もう少しはマシなシンバルを揃えたりと、かなりの出費が必要になるので、未だにバラバラのまま物置に積んであるが、そのうち整備して空地で思う存分叩きまくることを夢見ている。あるいは叩ける者を探して、バンドやってもいい。
 ちなみに「空地」というのは他でもない。悲しいことに拙宅は、室内で叩けば近所迷惑で追い出されかねないような、典型的ウサギ小屋なのだ。トホホ。

 こうしておれはいい歳こいてようやく、不完全なセットではあるがドラムのオーナーにはなった。他人から見ればオンボロのガラクタに過ぎないが、家にタイコがある、というのは悪い気分ではない。それに所有した以上、少しは上手に使えるように、すなわち叩けるようになりたい。そしてなりたいと思ったら、その瞬間からその人間は「**家」「**ist」「**er」「**cian」なのだ。

 ならば、そう、今やおれは本当に「叩けぬドラマー」なのである。

2005.05.05

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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