「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
再結成しても彼等なら許す!!・・・・・・ほぶらきん


アルケミーから出たとってもお得なCD、必聴!!

 お正月なんでおめでたいバンドを取り上げよう。それにしてもしかし、取り上げるのん、アンバランスレコード系が多いなぁ〜(笑)

 記憶の前後関係がアヤフヤだけど、70年代後半から80年代初頭にかけて、YMOが巻き起こしたテクノブームに続いて、日本にもパンクやらオルタナティヴのムーブメントが海を渡ってやって来たのだった。舶来モンですわ(笑)。・・・・・・で、「東京ロッカーズ」なんて呼ばれる一群の集団が現れりもした。実は70年代初頭から活動してた「リザード」やら「フリクション」「EDPS」「Sケン」ちょっと毛色は違うが「グンジョーガクレヨン」「吉野大作&プロスティテュート」なんて辺りがよく取り上げられてたような気がする。

 しかし、おれはコイツ等が妙にスカしてる気がして、どうしても好きになれなかった。音は確かにソリッドだったけど、何ていうか、結局はこれまでのロックのイデオムを出てないって印象が強かった。

 「パンクやオルタナ、ってよぉはメチャクチャするコトちゃいまんのん?」

 おれは未だにそう思ってるのだが、その点で関西系は実にメチャクチャだった。何といってもこのシリーズの第一回に取り上げた「非常階段」が最右翼だったが、いきなり東京行って「ヘイヘイヘイヘイ♪モモヨはただのぉ〜オンナ好きぃ〜♪」と漫談ぶちかまして東京ロッカーズにケンカ売った町田も相当おもろかったし、あまり有名にはなれなかったけど「100曲入り60分カセット」「200曲入り90分カセット」なんてバカバカしい作品を売ってた「ディーオーバン」なんかもかなり笑える。そぉいや、くだらないを通り越して単にしょうもなかった「のいずんずり」は、とあるライブでボーカルがグニャグニャ客席に乱入してきて、それにムカついたおれは酔った勢いでぶん殴った記憶があるな(笑)。

 先日、その辺が気になってネットを色々漁ってたら、何とモモヨはめでたく宅検通って不動産屋やってるそうな。そおいや、「タコ」で一世を風靡した山崎春美は今や運送屋の社長、っちゅー噂はホンマやろか???桑名正博かぁ?(笑)

 ・・・・・・で、本邦随一の奇天烈バンド「ほぶらきん」である。

 滋賀県出身の彼等は、78年、京都大学進学とともにその音楽活動を開始し、数枚のシングルやソノシート等を出して83年頃に解散している。つまり所詮は学生バンドっちゃぁ学生バンドではあった。
 しかし、活動停止からはや四半世紀近くになるが、彼等の作り出した唯一無二のケッタイな音楽は孤高の存在とも言えるだろう・・・・・・っちゅーか、フツーこんなん思いついても誰も実行に移さへん、って(笑)。
 名前はずいぶん以前から知っていたが、初めて聴いたのは、大学の2回生の頃だったと思う、O山という年上でロリコンのオッサンがテープをどこからか入手して聞かせてくれたのだ。今思えば「キングホブラ」「インドの虎刈り」「ホームラン」の寄せ集めだったように思うが、はっきりとは覚えていない。さらにそれからしばらくして、バンドのボーカルだったS年が最後の作品となった「ゴースンの一生」を入手してそれを録音してもらったりもした。

 彼等の音に触れたことのない人にその音楽を説明する時、おれは次のように話し、しかる後にCDを貸してあげることにしている。

 ------小学生に酒呑ましてやな、音楽室の楽器パクってきて持たせて、知ってる限りの童謡とかアニメのテーマソングを怒鳴らせたような音楽や。

 返すときにみなは呆れたように言う。

 ------ホンマにそうですね!!

 ホンマにそうなのだ。例えば1stの一曲目「わたしはライオン」の歌詞。

 ♪わたしわぁ〜ライオン〜
 ♪人を食う〜ライオン〜
 ♪わったしぃ〜はひぃ〜とをく〜ぅライオン

 何やねんこれ!?って思うよね?フツーやっぱし。
 これがヘニャヘニャのモノシンセのピンクノイズをバックに大真面目に歌われる、とゆーか怒鳴られる。ヘニャヘニャのシンセをバックに不愉快なことを絶叫する、という芸風では「ホワイトハウス/カムオルグ」のW・ベネットなんかも有名だけど、「ほぶらきん」は思わせぶりな暗ささえない。とにかくノー天気。テクニックは絶無といってかまわないだろう。
 ともあれこんな調子で、大抵は一曲一分。全ての過去のスタジオ音源をまとめこんだCDには実に51曲も収録されている。通しで聴くと実に疲れる。一度聴いたら忘れられない、とCDのライナーにあるが、こんなアホみたいな曲、確かに他にはありえない。ものすごく耳に残る。

 ・・・・・・ラジカセを置いて、メンバーの弟の小学生に怒鳴らせたものを録音したと思われる「ピコリーノ」
 小太鼓とリコーダーをバックに「しばしも休まず槌打つ鍛冶屋〜!」とひたすら怒鳴り続ける「村のかじや」
 酔っ払って思いつきで歌ったとしか思えない「金勝は信楽守る山」・・・・・・

 ・・・・・・ほとんど瞬間芸の世界だな、こりゃ。しかしそのうちネタが尽きたのか、曲の一般公募までやったそうな(笑)。この手のアングラバンドにしては珍しくファンクラブも当時は存在した模様だが、活動実態は今となっては不明である。

 ・・・・・・・・・・・・

 そうこうするうちに、大学卒業を迎えた彼等は最後の力を振り絞って、前述「ゴースンの一生」を発表する。赤と緑の2枚組・20cm33回転ソノシートという低予算な超大作(笑)。内容は、「怪傑ライオン丸」に題材をとった、悪役ゴースンの一生を歌物語で構成する・・・・・・といえば聞こえは良いが、コンセプトがありそうで実は全くない、サッパリ意味不明の怪作である。 
 曲もおもろいが、とにかく曲間の芝居のセリフが爆笑モノの面白さ!「スネークマンショー」や「ゲイシャガールズ」ごときで爆笑してるアナタ!甘いぜ!!ちょっとセリフを紹介してみよう。

 ------タァ〜ツゴンサイ殿!貴方は白垣雄斉と名乗っておいでだが、それは世間をたばかる偽りの名!実の名は黒垣雄斉!そしてその正体は怪人タツドロドォ〜。そうでござろう〜。
 ------なっ!なぁ〜にを証拠にライオン殿ッッ!?
 ------証拠はホレ、ここに。お師匠様の残された果心覚書に出てござる。
 ------グ〜ニュニュニュニュ〜!!正体と見破られたとあっては仕方ない・・・・・・

 これを声色使い分けて一人でやってる(笑)。ね?バカバカしいっしょ!?この後延々とまだ続いて、さらに輪をかけてバカバカしい曲が始まるのだけれども、これくらいで充分だろう。
 とにかく約40分間ず〜っとこの状態(笑)。それまでの作品とは異なり、曲の多くはオルガンの弾き語り(怒鳴り)で、ほとんど一人でラジカセか何かの一発録りで制作されたのではなかろうかと思うが、恐ろしく無意味にテンションは高く、ジャケットワーク(ったって小学生の落書きみたいなんだけどね、笑)も含めた全体のまとまりも非常に良い。演奏技術も格段に進歩している。音質は最悪だけど、さすがコンセプトアルバムだけのことはある(笑)。

 おれはこの中に収められた「水中まつり」という曲が大好きだ。相変わらず怒鳴ってるだけのボーカルは限りなくバカバカしいのに、なぜか限りなく美しく切ない。

 ♪さぁ来る来る♪来る来る
 ♪死ぬまで踊るよ
 ♪さぁ来る来る♪来る来る
 ♪花開く

 吉野大作のアルバムで「死ぬまで踊り続けて」ってタイトルのがあったけど、あれぢゃ踊れません。死ねません。でもこの曲なら本当に死ぬまで踊れるやろなぁ、と思っている。

 ・・・・・・・・・・・・

 技術や知識がなくても音楽は作れる・・・・・・それだけなら凡百のパンクバンドが教えてくれる。
 技術や知識がなくても思わせぶりなコンセプトを振り掛ければアートなハッタリ音楽は作れる・・・・・それだけなら凡百のオルタナバンドが教えてくれる。
 しかし、何もなくても、アイデアと創意工夫があれば真にユニークで楽しい音楽は作れる・・・・・そのことを教えてくれるのは「ほぶらきん」だけだろう。

 日本のロックの極北は、案外実は「ほぶらきん」なのではないだろうか?北は寒くてちょっと彼等の芸風とは異なるので、正しく言えば「南の果て」かもしれないが・・・・・・

 残念ながらおれが大学生になった頃、彼等はすでにほとんど活動を停止していた。もともとさほど多くのライブを行っていたわけでもなく、だからおれは彼等のライブを体験していない。ずいぶん後になって知り合いになったD君というのが、最末期のライブを偶然観たと聞いてとてもうらやましかったが、その時の演目はこの「ゴースンの一生」の通し演奏だったという。
 断言する。もし再結成しても、彼等ならおれは許す。そしてライブをやるというのなら、会社を休んででも泊りがけででも絶対におれは観に行く。

 ちなみに数年前まで初期メンバー・黄之瀬氏による公式サイト(笑)が存在したが、今は閉鎖されてしまった。復活を期待したい。その中の近況によると、今でもメンバー同士は仲良く、マージャン旅行なんぞしたりしてるようである。


附記

 余談だが、京都大学っちゅーところは、西部講堂のオーラのせいか、意外にミュージシャンを生み出してる大学で、この「ほぶらきん」だけでなく、古くはトランペッターの近藤等則、「非常階段/インキャパシタンツ」のT・美川、死んぢゃったが「ローザルクセンブルグ」〜「ボ・ガンボス」の「どんと」ことクドミ、先日25周年記念ライブを敢行して健在ぶりを見せた「ヴァンパイア」、等々、一クセも二クセもある連中を輩出している。

2005.01.06

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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