「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
山で死ぬということ・・・・・・あるいは中高年登山ブームへの警鐘として


ツエルトと固形燃料。登山で死にたくなけりゃ、こぉゆうものを必ず持っておこうね。

http://store.yahoo.co.jp/aandfshop/より
 全体的にずいぶん暖かくはなってきたが、それでも三寒四温とはよく言ったもので・・・・・・どころか、日替わりで天気がコロコロ変わる今日この頃だ。それも昨今の異常気象のせいだろうか、極端に変わるのが厄介で、台風並みの風速30m/sを超す大風がゴーゴー吹きすさんだりする。平地でこんなんでは、山は凄まじい状況だろう。

 ・・・・・・そして、遭難者が出る。

 山で死なない最良にして唯一の方法は一つしかない。言うまでもなく、「山に行かない」ことだ。冗談で言ってるのではない。アライテントのキャッチコピーに「ヒマラヤでもウラヤマでも」ってあるけど(このセンスって、何かダサさとレトロさと誠実さが交じってていいなぁ〜)、まさにそれで、山であればどこだって平地よりは高い死の危険性と隣り合わせにある・・・・・・広告を全く正しく読んでないな(笑)。
 ともあれおれはそう思ってる。

 それでも人は山を目指す。それも中高齢者の登山ブームとやらで。今や山はオッサン・オバハン・ジジィ・ババァの社交場と化した様相を呈している。この一文を書く気になったキッカケとなったこの数ヶ月での冬山遭難でも、亡くなられたのは全員40代以上・・・・・・どころか不惑は数えるほどでほとんど50代・60代の方ばっかし!!最近皆さんホンマ元気やわ。

 ここで、遭難された登山者の方々の技量や経験、モラルその他について批判がましいことを云々しようって気は毛頭ないことをお断り申し上げておく。
 山は本質的に危険なのだから、そこに行けばある程度の確率で人は死ぬ。これだけ登山人口が膨れ上がると、その数も顕在化するだけなのだ。マトモな登山もやらない外野のおれに、オーソドックスな論理でもって批判する資格はそもそもない。

 今回はもうちょっと冷徹な話だ。ある意味アンチヒューマンでもある。山で死ぬことの社会的な影響や、経済的な意味、って客観的に言って意外にあるんぢゃないのかな、とTVのニュースを見ながらおれは思ったのだ。だから読んで不愉快になられる方がいらっしゃるかも知れないことをあらかじめ申し上げておきたい。

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 山で遭難するとまずどんなことがあるかというと、まずは捜索隊や救助隊、っちゅーものが組織されて山に入る。救助隊は限られたエキスパートにのみ勤まる仕事だが、捜索隊は地元の青年団や消防団に属する一般人も数多く動員される。多いときは3ケタにも登る人数なのだが、これらは無論、タダではない。彼らには相当額の日当やら弁当代がはずまれ、この費用請求は遭難者の家族に寄せられることになる。無論、ヘリがチャーターされてもその費用は請求される。

 ずいぶん古い話だが、ヨメの郷里に近いスキー場で雪崩が起きて数名のスノーボーダーがそれに呑み込まれたことがある。規模的にはそれほどでもなかったにもかかわらず捜索は意外に難航し、数十名の若い衆が横一列に並んでアバランチゾンデ代わりの竹の棒をブスブス雪面に刺してはゆっくり一歩づつ亀のように進み、で丸一日かかってようやく全員を探し当てた。もちろん全員、D.o.A.っちゅー状態。
 この捜索隊の中にヨメの兄弟も加わっていて、上記の捜索の日当の話も聞いたのだが、けっこうな値段であった。

 大体において遭難者は都市部からやってきた人だ。つまり、こうして遭難騒ぎが起きることで相当な額の金がその地方に「落とされる」ことになる・・・・・・これは都市部から地方部に金が移動することに他ならないワケで、経済格差が開く一方のそれらの懸隔を埋める効果がある、と言えるのではないか?

 登山っちゅうレジャーは、たしかに道具や行き帰りの交通費、あるいは山小屋のジュース代が法外に高いとか、金の掛かる要素もあるけれど、概して金のかからない遊びではある。とりわけ地元への経済効果が極端に少ない。「入山特別地方税」なんてーのを設けるのも一興だろうが、それほど大した課金はできないだろうし、どうせグジャグジャ増税反対だの何だのとモメるに決まってる。
 それに較べると、遭難って「人命が懸かってる」って錦の御旗があるだけに、ドンブリ勘定だろうがボッタクリだろうが無礼講だろうが、何だってスルーしてしまえるし、地元の一部企業だけにその金が集中せず、薄く広くばらまかれるという利点もあるし、ハコモノや道路のニコヨン仕事と違って、後に何も残らない、というのもいい。

 さらに遭難には、都市部の人口過密を緩和し、高齢者であれば、上昇する一方の国民平均年齢を押し下げ、増大する年金や老人医療・介護費の支出を抑止する効果もあるだろう。あ!年金は遺族年金に振り替えられるか?(笑)。
 それに山登りが趣味な人、ってビンボー人には少ないよね?平たく言うとある程度以上の所得水準の人の趣味、ってトコがある・・・・・・ってことは・・・・・・遭難は富の偏在・階級格差さえも是正する、っちゅうこっちゃ。

 ・・・・・・問題はそれらの効果が極めて些少である、ということだろうけれども。

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 だから、だ。

 団塊世代の年寄り達よ、優雅に年金暮らしで海外旅行もいいけれど、もっとこぞってジャンジャン山に行け!そしてジャンジャン遭難しろ!それも高度な積雪期の冬山や3,000m級の稜線上、岩壁の途中ではなく、捜索隊が大挙して入りやすい無雪期のティンバーライン以下でやってくれ。そう、「自己責任」の意味さえ理解せず(案外こぉゆう人が会社では、それなりの立場で「自己責任」なんてのたもうてたりしてね、笑)、携行して当然のエマジェンシーグッズも非常食もロクにもたず、マトモな技量も判断力も体力も備わらないまま甘い態度で臨んで、呆れられるようなレベルでやってくれ。だったら捜索隊も大挙して入りやすいぞ。

 それがまわりまわって、色々な社会問題の緩和につながるはずだ。

 あ、老婆心ながら、あらかじめ保険にはシッカリ入って、遭難した場合は中途半端に生還しないように。保険金もロクに出ないと、残された家族はヘタすると破産しちゃうからね〜。
 さらにも一つ付け加えると、ジャンジャン行くのはいいけど、花やら木やら引っこ抜いたり、所詮アマチュアの分際でカメラアングル求めて貴重な植生の中にズカズカ入ってったりするんぢゃないぞ。ましてや階段がないとか手すりがないとか、安全管理がなってないとか勘違いしたことヌカすんぢゃないぞ(笑)。実際こぉゆうバカがいるらしいから、笑ってもいられないか・・・・・・。

 ・・・・・・イヤミすぎましたね、今日は。あ、ホンマに死んだらあきませんよ、山で。ではでは。

2006.04.17

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