「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
究極のソロ用テント






EUREKA!(ヨーレイカ)「BPドーム」。右が一回り大きい4人用。今は幻のモデル。寒がりにはいいと思う。

 テントを張り終えると何だかやっとホッと安心した気分になる。

 キャンプ場ならともかく、山の中で空地を見つけて適当に泊まる「野宿」においてはテントは非常に重要なものだ。ペラペラの布地は色々なものからわが身を守ってくれる気がする。
 のっけから脱線で申し訳ないけど、キャンプ場やテン場にテント張って泊まるのを「野宿」と思っておられる方も多いが、おれ的にはそんなん野宿のうちに入らない。軟弱なことゆうててどないすんねん、と思う。本来宿泊場所でないところに泊まる行為こそが「野宿」なのだ。
 ともあれそんな時、テントはいい。ツェルトに包まるだけでこの安心感はなかなか得られにくい。風もなく天気が良ければタープの下でも良いかも知れないが、それでも虫が寄ってきたりするし、夜露もすごいので、やはり日本においてはテントの方が何かと都合がいい。

 今日はそんなテントについて自分の意見をちょっと書いてみよう・・・・・・っちゅーても、基礎的なことは書かない。そんなもん、カタログ集めるかメーカーのウェブサイト丹念に読むかすれば分かることだ。そんな丸写し的なことしたって時間と資源の無駄だろう。

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 まずはおれが使ってるテントについて。

 家族用にはコールマンのフロアサイズが3m×3mの最もフツーのやつを使ってるのは、以前書いたとおり。大分ボロくなってきたんで今年あたりは買い替えたいなと思ってるが、子供たちも大きくなってあまり付いて来なくなるだろうし、広さ重視もそろそろ見直す時期かも知れない。
 
 で、ソロ用としては2つを使い分けている。

 一つはこれも以前取り上げたモンベルの「モノフレームシェルター・ダイヤ」。おさらいすると、コイツは床が幅150cm、長さが最長部分で245cm、と3人用テントの広さがありながら重さはわずか1,410gしかないのが最大の長所。だが、自立できず、立てるにはペグダウンが必須なこと、また、フロアとウォールが別体式(※)なので隙間があって寒いといささかツラいし、大雨の際の防水性にも不安があるし、耐風性もちょっと不安。まぁ、古典的三角ツェルトよりは広くて機能的で便利、ってあたりがセグメントだろうか。趣味性の強い一品だ。

    ※:2005年より一体式に変更された。

 もう一つはヨーレイカの「BPドーム」というモノだ。これまで何度か旅行のギャラリーに登場させているので、分かる人には分かるだろう。ちなみにどっちも神保町のサカイヤでバーゲンの時に格安で買ったモノ。これはフロア面積は大体上と同じくらいだが、フレームがインナーのクロスポールに加えて、フライに同じ長さのが1本あること、またフライがフルマッドガード仕様になっていること、その気になれば16ヶ所のペグが打てること、等からかなり山岳用テントの性格が強い構造になっている。しかし、密閉性が強いところに、ほとんど役に立たない昔ながらの煙突型の空気抜きが2個あるだけなので、夏は通気性がイマイチで暑いのと、重さが3,500gとかなり重く、畳んでもかさばるのが欠点だ。

 そんな訳でだいたい、徒歩を伴う場合には前者、クルマの場合には後者、で使い分けているが、どちらも一長一短、必ずしも満足しているワケではない。

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 ソロ用テントについて考えるならば、おおむね、山岳用、それを超軽量にしたもの、ちょっと余裕を持たせたツーリング用に大別される。一般的なところではアライの「エアライズ」「トレックライズ」、プロモンテ(旧ダンロップ)の「V」や「VL」、「R」、モンベルの名作「ムーンライト」や「ステラリッジ」、スノーピークの「ランドブリーズ」の小さめのライン、小川の「アーデイン」や「ステーシー」「Z-1」、コールマンは毎年のようにモデルチェンジがあって何とも言えないけれど数種類あるし、ユニフレームや個人的に大好きなヨーレイカからも色々出てる。

 しかし、どれも帯に短しタスキに流し、である。共通する欠点を書いてみよう。

 軽量テントについては何より生地が薄すぎる。特にフロア。40dnなんてティッシュのように薄っぺらい。地面に接する部分だから当然小石や枝が当たるし、その上で人が横になるのだから、生地がグリグリとこすられて切れたり穴が開いたりする可能性は最も高い。どだいソロで泊まるときって暗くなりかけた中、大急ぎで張ることが多いから、いちいちテントの下の小石や枝を丁寧に取るなんてやってられないのが実情だろう。なもんでグランドシートを別途買って下に敷いたりすることになるが、これでは本末転倒もいいトコで、何のための軽量化か分からない。
 大体ソロ用に限らず小型テントはフロアが70dn以下であることが多い。山岳用も軽量化が進んでるので本質的な差は感じられない。けれど、ある程度ラフな使用にも耐えうる厚さとなると、210dnとは言わないが、150dnくらいは欲しいのに、この条件を満たしているものは極端に少ない。

 さらには異常な狭さ。一人用で幅80cmなんて、もうほとんど「棺桶」である。「トレックライズ0」とか「ヨーレイカライト1」とかがこれ、「VL21」や足元が絞り込まれた「ムーンライト1」「Z1」もこの傾向強し。寝返りもマトモに打てないし、大体荷物はどぉすんねん?フライとインナーの間に置け、ってかい?雨なったら荷物ベチャベチャでっせ。靴も荷物もテント内に入れてしまうおれにとっては100cmでも狭い。120cmは最低ラインだろう。
 かといって、ある程度フロアの広さがあるタイプでは、「ツーリング用」などと称して妙に前室がややこしくなってくるのが普通だ。どうやらここを調理スペースにしたり、自転車を入れたり、犬寝かしたりに使え、っちゅうことだろう。最近はこのタイプに各社力を入れてて、ヴァリエーションが数年で急に増えたのは一体どぉゆう理由によるものだろう?高齢化か?

 1本棒やピヴィの系統はスタイリッシュだが自立しないことと、耐風性に難があること(※)、また、極端な軽量化のためかインナーがフルメッシュになってることが多く、寒いとちょっと厳しかったり、逆に出入り口のメッシュまでが省かれて、閉め切ると蒸れる、等の問題が多い。寒いのはシュラフを工夫すればいいけど、自立しないのは設営場所が石だらけだったり、舗装されてた時はもう手の打ちようがなくなる。だから使うに割り切りがかなり必要だ。

 ※ インディアンのティピーに似たタイプは、ペグダウンさえ確実なら異常に耐風性が高いと言われている。

 オマケにこれらのテントは多くの場合、収納袋が悪い冗談のように小さい。朝はサッサと撤収して出発したいのに、袋がキチキチ一杯では、押し込むだけで一苦労だ。

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 こうしてあ〜でもないこ〜でもないと思案を巡らすのが、ヲタクの愉しみっちゃぁ愉しみであるのは事実だが、それでももうちょっとおれのニーズに合ったテントってできないものだろうか。自動車主体だけどたまには徒歩旅行にも使える程度の重さで、タフでシンプルなヤツ。

 理想は何よりまず立てやすいこと、自立すること、だ。だからベーシックな2本のクロスポールタイプがよろしい。スリーヴタイプはテンションが掛かってピンとしてきれいだが、フックの吊り下げ型の立てやすさにも捨てがたい味がある。シングルウォールは軽くなっていいけど、結局は結露の問題をクリアできないので、ダブルウォールの方が賢明だろう。
 次に横幅は120cmくらいあれば中に荷物を入れてもちょうどくらい。150cmはやや広いな。フロアは耐久性重視しつつ重過ぎない150dnで、逆にウォールやフライは30dnのリップストップの極薄。フロアで重量食う分、ガイロープやペグ類も極限まで軽くする、フレームもスカンジウムかなんかで軽量化。高さは100cmくらい欲しい。それ以下だと腹ばいにしかなれない。入口が短辺側か長辺側かもよく問題になるけれど、強いて言うなら出入りは長辺側の方がラク、って程度なのでどっちでもいい。ただ、通気だけはシッカリ確保しといて欲しい。この点で地味ながら「ヨーレイカライト」は驚異的に軽いクセに、天井に開閉式のメッシュを確保してるので、ちょっと気になる存在だ。
 デカいけど所詮タープほどには使えない中途半端な前室なんて不要。フライとインナーの間に2〜30cm隙間があればそれで十分。灯を消したランタンとか酒の空瓶はここに置かないとどうにも不安なものだしね。
 収納袋はちょっと大きめにしたい。この点でアメリカ系のシエラやMSRのテントは評価できる。

 こうして考えると、「エアライズ2」「トレックライズ2」や「VL−22」、「ステラリッジ2」、また「ヨーレイカライト2」あたりをベースにフロア材質を厚手にしたものがかなり、「V−3」が一回り小さくなって、フライやインナーをあと一段薄手にして出してくれればほぼ理想に近い。フロアに150dnを初めから使用してるのは、メーカー多しといえどこれくらいぢゃないかな?プロモンテって、ガイロープにテクノーラを標準でつけたり、ペグが何とマグネシウム製だったり、と、ものすごく細かく配慮して質実剛健かつ良心的に作ってる印象があって、値段張るだけのことはある。デザインはダサいけどね。
 とはいえこれらのメーカーは大手だから、そうカンタンにこしらえてはくれんだろう。あ、エスパースとかなら工房っぽいし、作ってくれるかな?でも、理想に近ければ近いほど何だか野宿の楽しさがスポイルされていくような気もするし・・・・・・なーんて。

 こうして暖かくなるとともにおれの思案は果てしなく続くのである。
 


目下理想に最も近いPuromonte(プロモンテ)「V−3」。カラーリングは昔ながらですけど・・・・・・
2006.03.25

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