「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
冬のピクニック・・・・・・菅平頌


晴れ渡った大松ゲレンデトップよりかなりスティープなコースへシュート
滑ってるのは下の子

 年一度、菅平に通い始めてもう9シーズンになる。

 会社のエラい方の知己を得て、んでもって何だか気に入られて可愛がられたオカゲか、毎年冬になるとお誘いの声が掛かって、同僚たちと長野のお宅に泊めていただいて滑りに行くのだ。思えば参加する同僚の顔ぶれはすっかり変わったけど、おれだけは図々しくも皆勤賞。今年はお言葉に甘えついでで、ついには家族全員同伴である。おれってあつかましいよなぁ〜・・・・・・・。
 何で菅平か?っちゅうと、そのご子息がそこでインストラクターをやってるのだ。なもんで、そのスクールの宿舎で休憩させてもらえるわ、レッスンがヒマなときはいっしょに滑って教えてもらえるわ(これがまた実に上手!)・・・・・・とホント貧しいサラリーマンにとっては至れり尽くせりのありがたいことなのである。あっちに足向けては眠れまっしぇん。

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 別に提灯記事を書いてくれと頼まれたワケぢゃないけれど、今日はこの馴染み深くなったこの菅平高原について書いてみよう。

 四阿山の寄生峰である根子岳の麓に広がるここは、いかにも信州の高原らしい穏やかな起伏の連続する地形のあちこちに、小さなゲレンデが点在している。ぶっちゃけ、現代のデタッチャブルの高速ゴンドラで大きな標高差をビョビョ〜ンッと山巓に上がって、一気に3,000〜4,000mのコースをダイナミックに下るのが当たり前となったスキー場と比べると、その素性はいささか不利ではある。
 具体的に言うと、いちばん長いトコでもコースは2,000mほどしかなく、ほとんどのコースは500m〜1,000m、リフトも昔ながらのノロノロ登って行くタイプが多い。デタッチャブルも要所要所にはあるが、クワッドではなくトリプルが大半。昔も今もスキー場にカップルはやたらと多いのが相場なので、ほとんど二人乗りとしてしか機能しない。
 オマケに高原ゆえ、スノボだと止まってしまいかねない緩斜面だらけで、滑り応えのあるコースが非常に少ない。このため、小中学校のスキー修学旅行等には絶大な人気を誇っている。ホワイトアウトでもしない限りは危険度が低いのだ。ちょっとトホホっちゃトホホだな。
 さらにはこの辺り、信州随一といってもいいくらい、冬場の晴天率が高い。そのため古くには高野豆腐や寒天製造が発達したワケだが、晴天率が高いってコトはつまり、あまり雪が降らないということに他ならない。そのため膝まで埋まるようなバフバフのパウダーは、まず期待できない。

 最初に欠点ばかりを列挙したが、その分、信じられないくらい広い。下の図を見たら分かるようにスキー場は大きく3つのエリアからできているが、それぞれがさらに2〜8つほどの細かいゲレンデに分かれている。リフト数は実に24本。数はやたら多い。
 パインビークは完全に独立しているので移動にはクルマが必要になるけれど、太郎とダボスは国道を挟んでつながっているので、短いリフトで登って向こう側に下り、を何度か繰り返すことであちこち行けるのが楽しい。ケッコー疲れるんだけどね。


広さは驚異的でっせ〜!ちょっと行くと「峰の原」ってーのもあります。

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 そう、目を三角にして休憩もそこそこにバキバキ滑りまくるようなゲレンデぢゃないのだ。

 ま、そうしたい人はそうしたらいい。先日行ったときも「イチ・ニ、イチ・ニ」の掛け声も勇ましく、隊列組んで滑ってる体育会の合宿系グループがいた。マジメに練習してるのに失礼を承知で言うならば、ハタから見てアホみたいでかなり笑えた。
 でも、気の向くままにあちこちウロウロしながら、たまにドフラットなトコでツボ足になりながら板を外して歩いたり、突然スティープに落ち込む斜面で(・・・・・・たって大した距離はないんだけど)ちょっと本気になってみたり、ってーのがここのいっちゃん正しい愉しみ方のように思える・・・・・・っちゅうか、ここに通ってそういうスノボの愉しみ方をおれは改めて知った。

 なーんて、エラそーに書いたけど、おれだって初めて訪問した時は、同じゲレンデで、まるでワッカを回るハムスターのように、短いリフトをグルグルグルグル登っては滑りを繰り返していた。まぁ、上達するには同じコースで毎回テーマを持って、改良点を考えながら滑るのが近道ではあるのだが、やはり変化には乏しい。いわば基礎トレのようなモノなので、ある程度のレベルまで行くと退屈になってくるのが人情だろう。
 ・・・・・・で、茶目っ気を出し始めるのだけれど、上下に長いけど幅の狭いスキー場ではどのコースを選んでも似たり寄ったりの風景だし、安比のようにデカくても、きれいな紡錘形の山から放射状に広がるコースでは、風景こそ違え一体自分がどこ滑ってるのか分からないくらいにコースに違いがない。

 その点、ここ菅平は1つ1つのコースそのものはそれほど面白くないのだけれど、河岸をどんどん変えていくことで一日飽きずに楽しめる。余りのコースの平らさにウンザリしても、次のリフト乗り場はすぐ目の前だ。アヒルの集団のように並んで滑る小学生の集団も、巧く避けてればそれほどウザいもんでもない。リフト待ちに群れてたらたまらないけど。
 長〜ぇコースのゲレンデトップでバテたりしたら、一杯の熱いコーヒーをゲットするだけでも一苦労だが、ここなら疲れてもゲレンデ下はすぐだからそんな心配も全くなし。

 本格的な登山とピクニックが、同じように山に親しみながらまったく違う性質のものであるように、ハードコアな滑りとこのようなやや弛緩した滑りは根本的に異なる・・・・・・つまり菅平の楽しみとは「冬のピクニック」だと言える。
 今度行くときはトランギアのアルコールバーナーでも持ってって、もし穏やかに晴れたなら、山頂でチーズフォンデュでもこしらえようかと思ってる。そんなスノボがあったっていいでしょ。

 加えて巨大資本による寡占化が進んでないのも、おれ的にはここの好ましいポイントだ。昔ながらの小さなスキー宿や土産物屋、食堂が道路沿いに並んでいるのは画一化されてなくていいし、それらがあまりケバケバしい看板を掲げず節度を保っていることも上品な印象だ。近代スキーの父、シュナイダーに「東洋のダボス」と讃えられた矜持が今なお根付いているのかも知れない。

 そぉいや、昔上司だった人がここにケッコー広い別荘地持ってたよな〜。売ってもらおうかな?ホントお子ちゃまばかりに独占させといちゃもったいないよ、菅平。リフト代も安いし。

 ・・・・・・ん!?最後は結局それかよ!?(笑)。


今回のメンバー。真ん中の赤いのが師匠。右端は昨年の関越行にも登場したT夫妻。

2006.03.01

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