「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
こんなんでジューブンちゃう?


トヨタ・ヴィッツ


ホンダ・フィット

 クルマを修理に出したらありがたいことに代車を貸してくれた。自宅までちゃんと届けてくれて、もう至れり尽くせりのサービスぶりだ。

 やってきたのはトヨタのヴィッツ。ちょっと前まで盛り上がりまくってたリッターカーの大ヒット作ですな。先月、ライバル車であるホンダのフィットに乗ったばっかりなので、おのずと比較もできてそれなりに楽しめた。そうして思った雑感を今日は書いてみよう。

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 いきなり結論から書いてしまうと、どちらもものすごくいデキ。すさまじい完成度と合理性の極限。そりゃ若干の差はあるけれど、つまらない僅かな差異に過ぎない。若干ホンダの方が全体的にいい感じがしたけど、それは今回やってきたヴィッツが初代モデルだったからで、今の2代目は間違いなくフィットのさらに上行ってるんだろう・・・・・・ホンの僅かだけ。

 これってもうオリンピックの競技の得点差みたいなもんだ。9.8と9.9みたいな。そりゃー、頂点の部分で選手はみんな技を競うけれど、それぞれ地元に帰りゃ〜超プロフェッショナルでコーチとかセンセなワケでしょ。で、僅差で負けたらもっと練習してリベンジする、と。
 よくVWがドイツの固そうなイメージをかさにきて「合理性」や「経済性」を売り物にするけれど、全然この2台の足元にも及ばない。修行も工夫も足りない。ベンツのAも最近似たようなノーガキ垂れてるな。ともあれ父親がVW乗ってるから良く分かる。
 外見からは想像もつかないくらい広々した室内、グラッシーなコクピットからの視界、意外にカチッと決まるドライビングポジション、あちこちに仕掛けられた収納スペースやカップホルダー、意外なほどに元気のいいエンジンと驚異的な燃費・・・・・・百数十万でこんな完成度の高いクルマをリリースできる日本のメーカーはすごい。
 もちろん欠点もある。何より内装の質感のなさ、ドアを含めた可動部分の開閉音の安っぽさ、極限まで省略されたスイッチ類、何よりバタバタしてしなやかさに欠ける足回り。たしかに高級感はゼロだわ。

 とは申せ、ホント秀逸なアイデア満載でっせ。リアシートの畳み方とか、合理的なメーターやツマミ類の配置。恐らくは主な購買層であろう主婦の行動を配慮しまくった、スーパーの買い物袋掛けだとか、助手席の荷物の滑り止めとか、乗り降りのしやすさ、とか。
 こんな時代に消費者の欲望を喚起し続けなくちゃならないメーカーはホント大変だろうな、と思う。

 ずーっと昔、同じような状況でカローラ借りて乗ったときも同じコト思ったのだが、クルマってこんなんでジューブンちゃうか、って気がする。やれファントゥドライブだ、アンダーだ、リニアだ、ターボラグだ、収束性だ、走破性だ、ステイタスだ、といろいろ「性能」や「味」は語られるけど、そんなモンはまったくクルマの本質ではないし、それを的確に理解できているヤツも意外に少なく、イメージだけが先行して語られてるだけなのだ。

 そう、実はおれたちのほとんどはこんなんでジューブンなのだ。

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 それにしてもガソリンが減らない。ヴィッツは近所を走り回っただけでまだガソリン入れてないんで良く分からないが、メーターはまだ一メモリも動いていないし、フィットは先日の下北でGS寄ったらリッター18km走ってた。
 昔乗ってたカワサキのGPz900Rより全然燃費いい(笑)。ま、あっちゃ二輪とはいえ115馬力もあって、一時は世界最速のスポーツバイクだったけどね。

 ま、これって従来のクルマに比べるとずいぶんエコロジカルなんだろう、と思う。しかしエコカーだかなんだか、これ乗って主婦が歩いても10分20分のスーパーに買い物に行くことが、そもそもまったくエコロジカルではない。
 「できることから始めよう、エコライフ」とかゆうてアテられるんなら、まずエアコン止めて団扇にしろ。クルマに乗らず歩け。歩くとチャーシュー状態の太ももが股ずれする、っちゅーんならチャリにしとけ。トーフ買うならボウル持ってトーフ屋に行け、サカナ買うなら笹でも敷いた竹カゴでも持って魚屋に行け、って思うぞ。
 ラクしてクルマで買い物行って、運動不足を空調の効いたフィットネスクラブでルームランナーかなんかで解消して、なーにがエコライフなもんか、って。
 都合のいい、自分に泥のかぶらない部分だけで自然主義者になって、添加物だの有機栽培だの遺伝子組み換えだのヌかすな、って。

 主婦ばっかやり玉に挙げても仕方ないが、クルマが主婦層をターゲットにしたもんだったんでついついそっちの方で書いちゃいました。スンマヘン。

 おれたちがエコロジーを本気で実践したいのなら、まず自家用車なんてやめるべきなのだ。人一人を運ぶ燃料消費量からすると、自家用車は一般交通機関に比べて格段に落ちる。たとえクルマをスーパーカブに変えたってダメだ。
 よくオフロード系のモータージャーナリストみたいな人が自然保護を訴えてるのを見たり聞いたりすると、いい気なモンだ、と思う。その身勝手さは、さんざん世界各地で狩猟ぢゃなんぢゃといろいろな種を絶滅させといて、今頃になって自然保護を声高に叫ぶ欧米人のそれに近くてカンに障る。現代の自然環境破壊の道具は、元をたどればみんな欧米人たちがこしらえ、愉しみ尽くしてきたもんやないか。

 エコロジーなんて欺瞞だ。ホンマにやるんなら、ユナボマー(※)のような徹底した反物質文明的態度でなくちゃムリだろう。


※ユナボマー:セオドア・J・カジンスキー。アメリカの孤独な爆弾テロリスト。元は天才的な数学者で、弱冠25才で大学の助教授まで勤めたのが、生来の厭人癖とコミュニケーション能力の欠如が昂じて山の中のオンボロ小屋で隠遁生活を始めた挙句、大学と航空会社を狙って爆弾を送り続けた。ま、暮らしぶりは実際、反物質文明で慎ましかったけど、テロ活動そのものは世間に認められなかった私怨を反文明の文脈にこじつけてただけ、って気がするな(笑)。

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 話を元に戻そう。

 まぁ、いささか安っぽい点以外、とてもよくできたクルマではあるが、でも欲しいかと言われると考え込んでしまう。ありきたりだし、遊び心がないしね。マジメと合理性と倹約はいかんせんツマラン。何がエコぢゃい!おのれの煮えたドタマにガソリンぶちまけたろかぁ!?よぉ燃えるど、コラ!みたいな(笑)。
 腕時計に金つかった伝で、クルマでもここはイッパツ無用の用に金を遣てこましたろか?

 手っ取り早いのは外車だろう。ベンツとかBMWではオメガやロレックス買うのと変わらない。VWやボルボやプジョーはこっちで珍しいだけで、あっちではゴキブリみたいなもんだ。かといってポルシェやフェラーリでは高速道路以外ではマトモに使えないが。ロメオとかのイタリア車にでもするか?すぐ壊れるぞ〜。その辺のニッチでレクサス、ってか?ダッセェ〜!(笑)。
 珍車やヴィンテージ、っちゅーテもある。ミニ、特に先代なんてーのはその最も手っ取り早い選択肢だろう。ロシアのラダニーバやシトロエンの2馬力、50年代の羽根生えたようなアメ車なんてーのもあるな。

 ・・・・・・などとくだらないことをあれこれ思いめぐらしているうちに気づいた。そもそもそんな風にノーガキ垂れてクルマにこだわってるって、今の時代かなりダサいコトなんぢゃないのん?。そーいや、統計的にそうゆう結果が出てる話を聞いたことがある。新車を買い支えてた20代男性の購買意欲が年々低下してるのだそうだ。今時クルマに目を輝かせる若者は、ぶっちゃけヤンキーくらいと断言してもいいくらいなんですわ。
 理由はカンタン、他に魅力的なアメニティが世の中にくさるほどあるからだ。

 エンジン回して手と足バタバタさせて道を走り回ることに歓びが感じられる、ってことが理解できない人が確実に増えている、そのことを非難する気持はない。むしろこれまでの・・・・・・特に団塊世代がそうであったように、みんな右にならえで、趣味と羨望と夢と希望の一切合財をクルマに託すようなあり方のほうがよっぽどヘンだ。

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 忘れてた。おれの中でクルマのプライオリティは低かったのだった。

 修理が済んで戻ってくれば、当面今のクルマに乗り続けるだろうし、すぐに買い替えどうこうはない。けれど、ともあれ次買うときは、「あまり考えず」に、すなわちエコロジーも見栄もどっちも考えずに買うことにしよう。何だかそれがいっちゃんクールだわ。


オマケでニッサン・マーチ。派生車のキューブはちょっと欲しい。


マツダ・デミオ・・・・・・これがリッターカーリバイバルの先駆けでしたな。

画像は各社、また販社HPより

2005.10.30

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