「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
MONO好きなヤツ

 
モノフレームシェルター旧モデル

 すっかり「モノフレームシェルター」にハマってしまった。

 「モノフレームシェルター」とは、一般的なクロスポールのテントでもなく、古典的三角テントでもなく、ツェルトでもないとゆう、まことに中途半端な、モンベルの怪作シェルターの名前である。1本のフレームのテンションで屋根の稜線を作り、裾をペグダウンすることで立ちあがる。似たようなものはノースフェース等からも出ていたが、今はどうなったのだろう。
 昨年、神保町の「サカイヤ」を覗くと、モデルチェンジ(※1)に伴い旧品が半額で売られており、ちょうどトレッキングに持っていける軽量テントが欲しかったこともあって買った。1〜2名用の「ダイヤ」と2〜3名用の「ヘキサ」があって、買ったのは後者の方だ。

 特徴は、床面積からするとムチャクチャに軽いことで、大きいほうでも総重量1.4kgしかない。フライ(外張り)とインナーが備わったWウォールと呼ばれるタイプでこれは驚異的だ。軽いことではアライ(ライペン)のトレックライズやダンロップ(現プロモンテ)のVLなどが超軽量テントの代名詞だが、それらの同クラスより500gくらいさらに軽い。
 軽さを追求するならいっそ、とガイロープをタコ糸のようなケブラーに、ペグをニッピンの1本10gしかないスティックペグに、とそれぞれ交換したので、実際はさらに軽くなっていると思うが・・・・・・50gや100gの差なんて、ま、どぉでもいいことではあるな(笑)。


左から時計回りに、細引き、ペグ、ガイロープ
 さてさて、買ってはみたものの、それから様々なヤボ用が立て込んだこともあり、そのまま押入れで眠ったままになっていた。ギャラリーの方を見ている方なら分かるだろうが、デビューは1年後、今年の8月の終わりにまでズレこんでしまったのである。その後の青森行でも2泊ほど使用した。

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 確かに軽いし、畳むと小さい。500mlのペットボトル2本に菜箸の束をくっつけたくらいしかない。寝袋は同じモンベルのバロウバッグ#4っちゅーのを使ってるのだが、重さはほぼ同じで大きさは半分以下。

 でも、だ。自立せんから、下が固くてペグが刺さらないところには立てられない。だから、雨の晩に公園の東屋の下に張ろうにも張れないし、駅寝にもむつかしい。また、ペグ打つにはハンマーが欲しいところだが、それまで持参していては却って重量が増す。手ごろな石を探すが、案外これが見つからないものだし、それにフロアシートが40dnかなんかでペラペラなので、ゴロタ石の多いところではアッとゆう間に穴が開いてしまうだろう(※2)。

 立てるのも手間だ。フレームではなくあくまで布の張力で形が出来上がるので、全体のバランスを考えながらペグダウンしなくてはならない。一人だと15分くらいかかり、ナカナカ形がきれいに出ないのでイラつく。
 オマケにおれのは旧モデルなので、フロアシートは別体式だ。これをインナーの隈のクリップに止めるのがこれまためんどくさい。

 生地がまたスゴい。インナーはバリスティックエアライトっちゅー、極薄で布よりはむしろ「膜」のような素材だ。カタログにもそう書いてあるから自慢なんだろう。でも、ほとんどコンドームみたいやぞ(笑)。
 ところがこいつが難物で、「直射日光禁止」なのである。外で使うものなのに(笑)。ナイロンって素材は本来、そのままだと紫外線劣化するのが欠点で、通常はUVカットのコーティングをしてある。しかし、こいつは軽量化最優先のために、それが弱いのだ。
 だからフライでキッチリ覆ってやらなくちゃならないのだが、あれれ!?片方の端を覆いかぶすと、もう一方の端からインナーがハミ出してるではないか。

 かくしてようやく立ち上がるが、珍妙な仕様はさらに続く。

 まず、狭い。床面積そのものは意外に広く、一人なら荷物や靴を置いてもまだまだ余裕あるのだが、元々三角屋根で居住空間が基本的に狭いことに加え、漏水防止のため、インナーがフライとの干渉を避けてたるませてあるので、頭上のスペースが極端に狭い。寝ると目の前に布があってものすごい圧迫感。それでも細引きを通すループが付いてるのは山屋の意地か、ご愛嬌か?


ね?狭いっしょ?

 さらには出入り口にも、空気抜きの穴にもメッシュがついてない。よしんばあっても意味がない。前述の通り、フロアシートはインナーと別なので、床と壁の間にスカスカに隙間があるのだ。中にいて地面も見える。だからバンバン虫が入ってくる(笑)。
 顔に虫よけスプレーでもするか、養蜂業者のようなネットをかぶらないと、寝てるうちに蚊に刺されまくる。寝相が悪けりゃ足が外にはみ出すことだってあるだろう。
 虫だけではない。夜中、タバコ吸いに出て戻ってくるとテントの裾あたりで何やらうごめいている。何ぢゃあ!?と見ると、ヘッドランプの光に浮かび上がったのは、夜の冷え込みに隠れ場所を探してアタマを突っ込もうとしている蝦蟇だった・・・・・・まぁ、こんなんだからその分通気性はいいけどね。

 ・・・・・・一体何のためにモンベルはこんな摩訶不思議なものを製品化したのだろう?

 軽さと耐風性では「ステラリッジ」があるし、居住性と通気性では名作「ムーンライト」があるし、ちょっと以前までは、それにさらにタフさを加えた「キーバ」なんてーのもあった。エマージェンシーならば、ツェルトなんて実に4種類、さらには1本の棒で立つスナフキンのテントのようなのも2種類出されてる。これらでほとんどあらゆるニーズはカバーされてる。
 つまり、論理的に機能面で考えれば考えるほど、このモノフレームシェルターのセグメントはワケが分からない。万能選手を目指したら、アヤヤヤ、全部がハンチクな出来になっちゃいました〜、って印象なのだ。

 それかあらぬか、このモノフレームシェルター、実にマイナーな存在で、ネット上で探してみても、オンラインショッピングの広告ばかり目立って、ユーザーの声が非常に少ない。先日、見かけないのがあるなぁ、と思って開いて見たら自分の過去のコンテンツだった(笑)。

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 なるほどこうして列挙すると、実際もう欠点だらけである。なのに、っちゅーか、だからこそ、っちゅーか、おれはハマってしまったのだ。何だかこれで一夜を過ごすことが妙に楽しい。

 自ら望んで味わう「不便」って、度を越さなければ楽しいものなのだ。そして、その「度」の微妙なあわいをコイツの中途半端さは巧に突いている。

 論理的に機能面で説明がつかないけれど楽しいモノのことを形容して、「趣味性が強い」あるいは「いいオモチャ」という。おそらくこれ作った人の狙いは、実は案外その辺だったのではないか?とさえ思えてくる。本格的な山行には使えないけれど、持ってるだけで冒険気分が味わえて、ザックの邪魔にならず、それでいて、まぁ実際に使えばそこそこ使える・・・・・・いいオモチャだわ。

 これをキッカケに、おれは多分今後、さらにプリミティヴなモノポールテントやツェルト、「おろく袋」と称されるピヴィザック・・・・・・最終的には小さなタープ一枚の下、みたいな世界・・・・・・つまりはガキの頃の「基地ゴッコ」の世界、に向かって行きそうな気がしている。
 若いニーチャンならともかく、エエ歳こいたオッサンがそのようなナリで寝てるのはかなり異様ではあろうけど・・・・・・(笑)。


※1
 2004年モデルからは以下のような仕様変更がなされ、ずいぶんテントらしくはなった。でも通気性は落ちただろうなぁ〜。
    @ フライシートの耐水性強化(1,000mm⇒1,500mm)
    A 外装色の変更(紺⇒黄緑)
    B インナーとフロアシートの一体化
    C フロアシートの耐水性強化(1,500mm⇒2,000mm)
※2
 あまりにたよりないので、今はバカ安で投げ売りされてたシエラデザインズのフロアシートを下に敷いている。  

 
これが現行モデル

http://www.montbell.com/より

2005.09.10

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