「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
「凍る男」はそんなにダメか!?


あまりにも有名なランタンロゴ

 何のかんの言って、アウトドアグッズに関してこんな感じのヒエラルキーがみなさんの中にあるのではないだろうか?

ロゴス・キャプテンスタッグ < コールマン < ユニフレーム ≦ スノーピーク ≦ モンベル < テントならMOSS

 なかなか痛いところを衝いているでしょ?ブランドなんてカンケーねぇよっ!って言う人もそりゃ多いだろうが、ネットをウロウロしててしかし、「ワタシはLOGOSで全部固めてます!」なんてページ、見つけたことないもんな(笑)。でもコールマンは結構多い。多いんだけど、批判する人も非常に多い。

 さて、今回はそんな、めっちゃくちゃメジャーなくせに、どこかB級の誉れ高い「凍る男」、ことコールマンについてである。

 もし、あなたがアウトドアライフ1〜2年目で、緑とアイボリーのブランドカラーや、赤地に白抜きのロゴに、何の疑いもなく憧れを抱いているのであればこのページは読む必要ない。ましてやもし、日産のタイアップ限定車の1BOXに大枚を払ったのなら、なおさら読まないほうがいい。

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 いわゆる「本格的なアウトドアマニア」から、コールマンは非常に評判が悪い。おれだってそうだった。今を去ること20数年前、所属していた自転車部ではこう言われてたことを思い出す。

 ------あのなぁ、バーナーはホエーブスがええぞ。赤ガスでも詰まらんし。コールマンは赤ガスなんか使うたらすぐに壊れる。

 ホエーブス!既に無くなって久しいオーストリアの銘品だ。おれもあの赤い缶に入った、通称「大ブス」を愛用していた。デカいし、やかましいし、燃費は悪いし、メタでの予熱はいるし、と慣れは必要だったけど、とにかく頑丈で壊れなかった。旅の途上のガソリンスタンドで買った普通のガソリンでも全く平気。信頼性はきわめて高かった。
 コールマンも何台かあったのだが、結局は誰も使わないまま、部室の棚で埃をかぶっていた。まだ、色が明るい緑で2レバーの頃だ。パクっておけば良かった。今ならどちらも間違いなく、ネットオークションで高く売れるだろう(笑)。

 アンチコールマン派の主張は、おおむね以下の3点にまとめられる。

    1.作りがヤワで、堅牢性に欠ける。
    2.図体がデカく大味である。
    3.売らんかな、の態度や販売戦略が気に喰わない。

 ホントのトコはどうなんだろう?

 「作りがヤワ」というのは半分正しい気がする。そもそも製品思想が違うところにあるのだ。「壊れずに永く使う」よりはむしろ「壊れたらチャッチャと部品を交換する」「ダメならすぐ新品に交換する」ってな考えで作られている気がする。例えばガソリンの気化部品であるジェネレーターや#21マントル、ランタンのホヤ、あるいは頻繁に繰り返されるモデルチェンジがそうだ。
 アンレデッドモデルだって、ホンマに赤ガスブチ込んで、次に白ガス入れたら一発で壊れる。ヤワである。ホエーブスでは絶対そんなことはなかった。・・・・・・赤ガスしか入れなかったけど(笑)。

 「図体がデカくて大味」、これも事実だ。多少なりとも小型化に気を遣ったピーク1〜エクスポーネントシリーズはまだしも、通常のラインはテント・火器・クーラー・・・・・・・いずれもバカみたいに大きくて重い。あろうことか、カタログではそれをイバってたりする。ウソではない。2003年のカタログにはこんな表現がある。

 ------一目でコールマンとわかるダイナミックなデザイン。

 これって「大味で細部の詰めが考慮されてない」ことを告白してるに等しい(笑)。いずれも、出発点が徒歩で運ぶアルパインではなく、輸送車等で運ぶ軍用品がルーツだからだと思う。「思想の差」とはそこだ。
 おれもガソリンツーバーナーやワンマントルランタンを持ってるが、どれも実に巨大で重い。オマケにツーバーナーなんて買った最初からちょっと歪んでた。ウニッ!と少し自分でたわませてタンクの引っ掛かり具合を調整して、やっと快適に使えるようになったのである。

 「売らんかな、の態度」も事実。だからこそキャンプ場は緑とアイボリーのツートンカラーでギッシリなのだろう。だってさぁ、この性能でこの値段でしょ!?戦略的ですよ。
 かつては結構いい値段してたんをバンバン値下げして量販店に卸したのも、毎年毎年、ちょっとづつ手を入れて改良かどうかは分からんけどモデルチェンジを行うのも、パンピーの欲望を喚起するには充分だろう。
 敵対的M&Aでブランドをどんどん傘下に収めるのも、アメリカ企業ならしかたない。カスケードデザインやREIだって同じだ。

 ともあれかくして日本は空前のキャンプブームを迎えた。

 しかし、大衆化の罪として、アホなヤンキーまでが客層として流れ込んできて色々メーワクをかける、というのがどんなムーブメントにも必ずある。玄倉川の事故なんてまさにその好例だ。ホントに死んだのはいささか気の毒だが、ありゃ死んで当然のことをしたから死んだのだ。
 彼等は大抵おれと大差ない低所得であるからして、何らかのムーブメントが大衆化してコストが下がると、ワラワラと湧いて来るものなのである(笑)。そして彼らが好む「ホームセンター」や「ディスカウントショップ」で、いっちゃん上級ブランドはコールマンなのだから、そりゃもう飛びつくわな。

 ある種のペダントリーをグッズに求める人間・・・・・・ヲタと呼んでもいいだろう・・・・・・には、このことは耐えられない。したがってコールマンは「凍る男」と揶揄されるような、シロウト受けだけのブランドになって今に到っている。

 未だにキャンプ場に行くと何から何まで全部コールマン、っちゅー「勝手にエンドース契約」ファミリーは結構見かけるし、それ見て「おっ!全部コールマンやん!エエなぁ!」って人がいるのも事実。ま、最近はその役割はスノーピークが担ってるかな(笑)。その内ボロクソ書いてやろう。

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 実は、おれはコールマンがさほど嫌いではない。むしろ、それなりにプラス評価もしている。緑とアイボリーのツートンカラーだって、客観的に見れば落ち着いたいい色使いだと思う。

 少なくとも、3m×3mのクロスポールのテントは、その後の各社のファミリーテントの基準を変えたし、ガソリンランタンはファミリーキャンプの夜を明るくし、ツーバーナーはカレーやトン汁以外に料理のレパートリーを広げた。いずれもお手軽な価格で、だ。
 こうしてキャンプの大衆化を推進した点で、大したもんである。そして、大衆化は必ず功罪半ばするものなのだ。でも、上で既に述べたとおり、大衆化の罪は大衆自身の問題なのだ。
 思えば、ヨメにそそのかされて、おれはが再び(実は不承不承)キャンプを始めたときも、このブランドがなければ、とても予算枠内でこの程度の機能を買い揃えることはできなかったので、あまり悪くは書けんです、はい。

 要は使い方やTPOの問題だろう。フツーのファミリーキャンプに使うなら、全然問題ないどころか、かなり性能はマージンを持っているのだから。コンパクト性が欲しけりゃ他のを買えばいいのだ。

 たとえば、おれが持ってる3m四方のテントは「スタンダードドームW」というもので、何にも余分な機能のついてないものだが、とにかく立てやすい。いつぞやとなりのサイトに「勝手にスノーピークとエンドース契約」ファミリーが来て、おれ達が大体の設営が終わった頃、彼等はまだテントが張り上がるところだった。耐水性も問題ない。群馬の山奥で、時間50mmを越す滝のような豪雨に遭遇した時も雨漏りは全くなかった。これで購入価格はわずか24,800円。これ、恐るべきコストパフォーマンスでっせ。
 よく耐風性が悪いと言われるが、きちんとガイロープを張れば、まぁまぁ耐えてくれるし、それ以上の台風みたいな天気になったら、とっとと旅館に逃げればよいのだ。北アルプスの稜線にテント張ってるワケぢゃないんだからさ。
 それに、ものすごい強風の中では、なんぼテントが耐えたって、泊まる人間の気持の方が我慢できひん、って。

 そんなこんなで「凍る男」、上手く使えばけっこういい。大衆ブランドとしてこれからも頑張ってつかぁさい。

2005.04.09

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