夜道に提灯・・・・・・ヘッドランプの話 |

これが「ピン球」とか「ダルマ」の愛称で呼ばれるソービッツの電球。おれもこんな感じでチョウチンアンコウみたいにしてた。
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https://analog-club.blogspot.com/より
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・・・・・・って最近は「ランプ」ぢゃなく「ライト」って呼ぶんだね。何となくランプだと仄暗く、ライトだとピカピカ光ってる気がするな。でもオールドスクールなおれにゃぁ自転車の前照灯はランプのイメージだったりする。今日はそんなお話。
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何だかんだで色んな雑事が次々と新たに発生して、遅々として進んでなかったチャリのレストアにも終わりが見えて来た。そうなるとむくむくとアタマを持ち上げて来る厄介なヤツ・・・・・・・そう、物欲ですな。ホンマおれって進歩がありまへんわ。
しかし、やはりしばらく放ってた事でどしたって更新が可及的速やかに必要なモノだってある。例えば腐り切ってたタイヤ・・・・・・はもう注文しちゃったけど、ヘルメットなんかにしたって見た目は大丈夫そうでも耐用年数はとっくに過ぎてるワケで、買い直す必要があるだろう。アホなおれでも頭ぶつけて余計アホになるのはイヤだ。サドルも表皮の劣化が感じられる。しばらく乗ってみてこれも検討しなくちゃならない・・・・・・ぬくく、セライタリアの高いヤツだったんだけどな。サイコンは電池換えたら動いたし、それにこれからはスマホで代用するから良いか・・・・・・あっっ!スマホホルダーが要るやんけ!ってな具合。
そうして細かいトコをチェックしてくうちに、ヘッドランプが気になり始めた。何せこれまで暮らしてた首都圏近郊とは異なり、此の地は田舎ゆえに夜道がとにかく暗い。市街地の目抜き通りにしたって夜になるとかなり暗い。家もまぁそこそこ住宅街にあるんだけど、街灯なんてこれまでとは比較にならないほど少ないし、深い側溝があったりもする。やはり夜道には提灯、それもやっぱしもっと明るい方が宜しかろう。
これまで使ってたのは随分と古いキャットアイのLEDだ。単3電池を4本使うのと2本のと2つあって、当然ながら4本の方が明るいんだけど、現行品と比較したらどんなんだろう?と思って改めてネット調べて、そして愕然とした。
・・・・・・もぉ太陽と月くらい明るさが違うのだ。まさに日進月歩・・・・・・って意味が違うか。
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半世紀近く前、初めて乗った本格的な自転車と言えるブリヂストンのユーラシアには、ミドルクラスとはいえいっちょ前に砲弾型ランプが泥除けに付いてた。リアがリフレクターではなくテールランプで、チャンと光るようになってるのも高級感あった。しかし当然ながら発電はタイヤサイドに当たってゴロゴロ回るクッソ重たいダイナモだし、電球もフツーに文房具屋で買えそうな豆球である。だからフツーにチンタラ走ってたら暗いし、ガーッと走ってスピード出たらそこそこ明るくはなるもののすぐに切れるっちゅう難儀な代物だった。
それでも本格っぽいランドナーに乗れた嬉しさで、電気が点くだけで嬉しかった・・・・・・ぶっちゃけそれまで乗ってた5段変速のミニサイクルの方が2灯で明るかったんだけどさ。
その次のビゴーレ、通称「金満号」は張り込んで、当時でも既に廃版となって久しいソービッツ(・・・・・・今はもうメーカー自体消滅しちゃったねぇ)の、通称「ピン球」とか「ダルマ」って呼ばれるレトロな真ん丸のを苦労してあちこち探して入手して取り付けた。高いランドナーにはこれは一種のお約束とか所作みたいに言われてた時代だ。本当はステーに付く裏の取付穴が丸いのが欲しかったんだけど、とにかく既に当時でも超レアなパーツで、ダイナモ一体型のデッドストックからランプ部分だけ取り外して取り付けた記憶がある。長四角い穴になってて雨が入りそうだったっけ。
まぁしかしコイツ、見た目はたしかにレトロでキュートとは申せ、性能はショボいコトこの上なく、絵にもハナシもならないほど暗かったな~。明るさってのは眼自体が暗さに慣れるってのもあるからナカナカ表現がむつかしいが、感覚的には上りだと「前輪の1m前くらいをボンヤリ照らす」ってな感じだろう。キャンドルランタン並みなんだもん。これぢゃ行燈やで、ホンマ。見た目そのままで中身を最新型にアップデートしたのが出たりせんかな?
ダイナモに関して言うと、タイヤサイドにゴロゴロ当たるタイプがほぼ一択状態で、とにかく重い。現在でもいっちゃん安いママチャリとかに付いてるアレですわ。中身は基本モーターと一緒で、電気通せば軸が回るし、軸を回せば逆に発電するのだ。
実はこのタイプ他にも欠点があって、オープンサイドっちゅうてタイヤの横のウォール部分にゴムが付いてなくてケーシングが剥き出しのだとスゴくそこを痛めてしまう。ところが当時のスポーツ自転車のタイヤは基本的にオープンサイドとか黒よりは強度の落ちる飴ゴムだったりする。だからダイナモの軸のローラーに黒いゴム被せたりなんかするんだけど、それだとさらに重くなったり、回転数が落ちるからちょと暗くなったりで、一長一短っちゅうか要は余り使い勝手が良くなかった。
おれは何かスゴい特殊な、タイヤの接地面に軸が平行に当たるダイナモにした記憶がある。値段がメチャクチャ高い代わりに、これは殆ど重さを感じないスグレ物だった・・・・・・が、世の中そうは上手く行かない。取り付ける場所が泥除けのあるチャリだとほぼほぼBBの後ろ辺りしかないのだ。ココ、場所的には目立たなくて良いとは申せ、最も泥やら水しぶきを浴びる場所でもあって、メンテナンスが大変だった。それにON/OFFの切り替えも簡単には出来ない。どうだったっけかな?たしか変速レバーを流用してシートチューブに付けてやってたっけ?
ともあれだから本格的な旅に出るにはもう一つ、懐中電灯が必須アイテムだった。当時のチャリのカタログ等を見れば分かるが、サイドバッグを沢山付けたようなのにはランプの反対側に懐中電灯が付いてたりする。これはどぉゆうことか?っちゅうと、上り坂とかだとスピード落ちてランプは暗くなるわ、ダイナモは重くて邪魔だわ、ってコトでダイナモをOFFにしてランプ消して、代わりに懐中電灯点けるのだ。
これがまた大層な代物で、祭りの大太鼓のバチくらいあって単1電池を4本直列で入れる。つまり6Vだからそれなりには明るかったような気がする。少なくとも家の壁に掛かってた電池2本のよりは明るかった・・・・・・が、電池がすぐに消耗する。今のようにアルカリだとかニッケルだとかリチウムだとか気の利いたのはまだ無かった時代だ。現代でも電器屋のコーナーの最下段で激安で投げ売りされてるマンガン電池っちゅうヤツだった。
そんなんだったから快速が求められるロードやスポルティフにはダイナモ付けないのが普通で、懐中電灯のみ、或いは白いリフレクタ付けて対向車からの視認性を上げてお茶を濁したりしてたと思う。もちろんこうしたのにはランドナーに使う太いのではなく、細身の懐中電灯があった。
まぁ要するに、夜道を走るにはいささか心許ない道具しかなかったのだ。
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灯火類はこの数十年で素晴らしく進化したものの一つだと思う。主にそれは光源がLEDになったコト、その効率的な反射と集光がコンピュータで自在に設計できるようになったコト、そして給電がリチウム電池の登場で劇的に小型・大容量化されたコトの3点が概ね挙げられるだろう。そうそう、ペツルの「ティッカ」買った時も同じようなこと思ったっけ。
自動車の世界でもライト周りのデザインの自由度が増して、最近のトヨタやマツダみたいに薄目を開けたような面構えがやたらと増えた。眼をカッと見開いた仁王から半眼微笑の大仏みたいになって来てるワケやね。あぁ、ミツビシもデリカのテコ入れ以降そんなカンジかな。「ダイナミックシールド」とかメーカーは称してるけど、おれには何だか肥満児の小学生みたいで好きになれない。そんな流れで逆に昔ながらのシンプルな丸とか四角が新鮮に見えてしまうくらいドイツもコイツも細目ばっかし。ともあれこれもLEDの普及や内部の反射板やレンズカットの進化の賜物だ。
チャリのヘッドランプの世界も見てみると、ダイナモなんてママチャリに専らハブ式が採用されてる程度で、他のスポーツ車の分野ではほぼ絶滅し、乾電池式さえも風前の灯火だったりで、大半が充電式のリチウムになってしまった。ただ余談だけど、ハブ式のダイナモはひじょうなスグレ物ではないかと個人的には思ってる。ペダル踏んでてもスゴく軽いし、発電も安定してるし、とにかく車輪回ってりゃエエんで電池も電源も無くなった時にはとても心強い。もっとランドナーやグラベルロードみたいな丈夫で頑丈が求められる旅の道具のチャリには積極的に採用されて良いんぢゃなかろうか。
明るさはもう凄まじいったらありゃしませんですばってん!大体きょう日、使う明るさの単位が違うのね。昔ながらのカンデラではなくて聞き慣れないルーメン、ってのでスペックは表記されるようになった。何が何だか良く分からないんで調べたけど、要するに光源そのものの明るさの総量がルーメンで、カンデラってのはある一定の照射角の中での明るさを示すらしい・・・・・・で、今のチャリのヘッドライト、もぉアホみたいに明るい。マックス800ルーメンとかナンボでもある。60Wの白熱灯とほぼ一緒っちゅうんだから全然OKやんか。黒船に遭遇した江戸の町民のようにビックリしてネットをウロウロしてるうちに簡易計算するサイトを見付けたんで試してみたら、自転車のヘッドライトに基本的に用いられる照射角25度だとこれ、5400カンデラ弱って結果が出た。おれの今の手持ちを調べたら、電池4本のが1,800カンデラ、2本のはショボくて400カンデラ・・・・・・ハハ、もぉ全然勝負にならないや。大体、古い製品だからルーメン表示ないし。
恐ろしいのではVOLT6000ってキャットアイのヤツ。型番の数字がルーメンを表すんで6000ルーメン!お値段も恐ろしいコトに11万円也!もぉバカバカしいほどに明るい。注意書きに「公道での使用は対向車を幻惑するんで禁止」なんて書いてあったりする。同じ簡易計算に突っ込んだら何とまぁ40000カンデラ以上!こんなんマジでほぼ兇器やんけ。
オマケに目覚ましい性能向上の一方で値段はそんなに高くなってない。ルーメン単価(・・・・・・そんなんあるんか!?)で考えたらむしろ安くなってるし、怪しい中華製だとLEDの後ろの部分の発熱の処理だとかバッテリーが破裂したり燃えたりするリスクはあるものの、さらに安かったりもする。こんなトコでも価格破壊は進んでたのだ。
・・・・・・・夜道に提灯はどしたって欠かせないし、程度モンとはいえそらヤッパシ明るい方が宜しかろう。そんなんでワケでおれは、ヘッドライトも思い切って新調することにしたのだった・・・・・・って結局、物欲のハナシでございました。お粗末様、チャンチャン♪ |

これが脅威のCATEYE””VOLT6000”。ヒートシンクが物々しい。さらに別体のバッテリーユニットが巨大。
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https://www.cyclowired.jp/より
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2023.10.13 |
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