「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
キャンドル・エレジー・・・・・・フォレストヒル・ランタンに捧ぐ


何が優れてる、って光源を遮るのが細い針金だけなのと、ひじょうにコンパクトなトコ。

 「フォレストヒル・ランタン」はハイマウント商会が取り扱うキャンドルランタンの商品名だ。以前に「ローテクの誘惑」ってなタイトルでまとめたことがあるが、優れたデザインといい、高い実用性といい、数あるキャンドルランタンの中でおれはコイツが一番のお気に入りだ・・・・・・った、とちょっと過去形で書かねばならなくなってしまった。

 残念なコトに実は、最近になって製造中止、ディスコンになってしまったのである。何でも台湾にあった製造元自体が廃業しちゃって、供給がどうにもならなくなったみたいだ。台湾って国土の広さのわりに高い山が多いこともあってか、実は登山やアウトドア熱がとても盛んみたいで、地元メーカーとかも多かったりする。どこかパテント買い取って再発してくれたらエエのに。

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 まぁおらぁ真鍮の無垢ヴァージョンと鍍金ヴァージョンの両方持ってるし、ホヤの予備もあったりする。そんなんで今更買い足す気もないから良いんだけど、買いそびれて喉から手が出るほど欲しい人は世の中にケッコーいるみたいで、値段吊り上げてオクに流す不心得者が続出してたりするのが今年に入ってからの状況だ。元々1,500~600円ほどで買えたのが1万円とかアータ、もぉ完全に足許見過ぎ。ちょっとアタマおかしいよね。そのうち今は亡きノーザンライトのオイルランタンみたいな法外な値段に高騰しちゃうかもしれない。

 とは申せ、昔ながらのペナペナのアルミで出来たチロルランタンや、高級路線だとUCOの専用蝋燭を使うタイプなんかは今でもフツーに市中に出回ってるんで、多分安心だろうとは思う・・・・・・思うけど、それでもキャンドルランタンの将来には一抹の不安が残る。今挙げたUCOにしたってLEDランタンのアイテムがずいぶん増えたりしてるし、バカバカしくもゴージャスな蝋燭を3本も使う「キャンドリア」は、最近供給が減ってるような気がしてる。

 そう、猫も杓子も今やみ~んなLEDにシフトしてるのだ。LEDに押されてガスランタンがヤバくなって来てることについて書いたことがあるけど、その波はついに、こんなチンケでささやかで趣味性の強い領域にまで及びつつあるってコトなんだろう。

 たしかにLEDは優れてる。コンパクトで嵩張らず、長寿命で、低電力消費なのにとても明るく、発熱しないから火傷や火事の心配も少なく、スイッチ入れるだけなんで扱いだってカンタンだ。それはよぉ~く分かる。おれもヘッドランプについてはかなり以前からLED製を愛用してる。まさか今時カンテラっちゅうワケにも行くまい。
 ・・・・・・でも、やっぱし冷たい。どれだけ揺らめくような効果を付けようとも、暖色のフィルター付けようとも、LEDの光は刺すようでちっとも暖かみがない。根本的に燃えて光を放つ灯りの暖かさには何物にも替えがたい魅力があるとおれは思う。

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 アウトドアの世界だけにとどまらず気付けば世の中、いつの間にかLEDだらけになってしまった。クルマのヘッドライトも今や主流は完全にLEDに移ってしまい、昔ながらの黄色いハロゲン球とか見ると古臭ぇなぁ~、って思うようになった。あぁ、そぉいやHID、ディスチャージド・ナンチャラってどぉなったんやろね?一時の徒花、っちゅうヤツっすかねぇ?あれはあれでムチャクチャに明るくて悪くはなかったんだけどな。
 そんなクルマの流れを制御する信号機にしたってLED化がどんどん進んでる。何でも余りにも発熱しないモンだから雪国ではそれが却って災いして、付着した雪が全然溶けず信号が見えなくなる、なんてコトさえ起きてるらしい。

 ノスタルジー丸出しでキャンドルランタンから始めといてお恥ずかしい限りだけど、カメラの補助光の世界でもLEDが段々と増えて来ており、おれは専らそれを愛用してたりする。イクラのようにツブツブとLED球が160個とか240個とか並んでて、それだけ並べてもどしたって発光量では瞬間芸のストロボには負けてるけど、光を当てながら露出とかを図れるので間違いが少ない。補助光としてはかなり弱いのは事実だ。しかし今時のカメラはISO上げれば何とかなるんで、さほど問題はない。
 昔は庶民に手が届くモノといえば、使い捨てのマグネシウムバルブだった。扇子みたいになった反射板をパラボラアンテナみたく丸く開いた真ん中に、青紫色の中にラメを散りばめたような球を挿し、それを光らせるのである。小さくボッ!ってな音がして閃光が走る。明るさは今のバッテリーのストロボなんかよりも明るかった気がする。光った後の球はものすごく熱く、柔らかくなってグニャグニャしてたっけ。

 明るいっちゃぁ、アメリカン・コップ御用達の「マグライト」、なんちゅうのも昔は要は豆球使ってた。細かいことは知らないけど、小さく、明るくするための工夫のされた特殊な電球で、電池さえ新しければそれなりに明るかった・・・・・・が、やっぱしそこは所詮電球なワケで、たまに切れることがある。そうなると、電池を交換する裏蓋にハマッてる予備球に交換しなくちゃいけない。ところがこれがまた小さくて面倒なんだわ。オマケに電線部分が異常に細い針金で、挿すのにエラく苦労したことがある。
 そんなマグライトも今はLED化されたものが大半になってしまってるし、それに大体、大枚叩いてマグライト買わなくても、千円も出せばひじょうに小さくて明るいだけでなく、防水までされた懐中電灯が、ホームセンターでもフツーに買えてしまう時代になってしまった。思えばおれもキーホルダーに随分長い間、一番小さいタイプのマグライト付けてたけど、いつの間にか外しちゃったな。

 そう、LED普及による恩恵はたしかに蒙ってて、文句言ってちゃダメなのである。自転車なんかがまさにそうだ。昔のダイナモで発電する豆球ヘッドライトの暗かったこと!頼りなくて、もぉ怖いったらありゃしない。オマケに上り坂でホィールの回転が落ちれば発電量も落ちて、ただでさえ暗いのがさらに暗くなる。行燈ほどにも光らないんだからハナシになんない。大体、ダイナモの転がり抵抗はかなりのモンで、上り坂だとしんどくてたまらない。そんなんだから長距離を走るキャンピングとか快速が命のスポルティフといったチャリには、ヘッドライトと並んで懐中電灯が取り付けられてたモンだ。上りに差し掛かるとダイナモをオフにしてこっちを点灯するのである・・・・・・ん!?スポルティフは懐中電灯だけだったっけかな?。
 テールライトもあるにはあったけど、さらにチャチもチャチ、殆ど役に立たないんで、大抵はリフレクターだけで済ませてた。そんな時代に狂い咲きのように現れた、まるで子供騙しなフラッシャーはスゴかったなぁ~・・・・・・。
 それが今はどうだ。それこそ竹輪くらいのサイズでメチャクチャに明るいLEDヘッドライトがナンボでもある。テールライトなんてちょっとした小銭入れくらいの大きさで、バシバシと点滅さえしてくれて遠目にも良く見える。ホント、自転車はLEDのおかげでひじょうに安全になった。

 安全になったと言やぁ、仏壇に灯すローソク。お燈明、っちゅうやっちゃね。あれも最近はLEDのが主流なんだってね。そぉいや昔は仏壇や神棚の蝋燭の灯が近くの何かに燃え移って火事になる、なんてことがしょっちゅうあったモンね。
 まぁ、以前から豆球使うのもあったりしたんだけど、コンセントの線が出てたりしてイマイチ一般化してるとは言えなかった。それがLEDだと、たまに電池交換するだけで良いからってんで、かなり普及してるみたいなのだ。

 ・・・・・・でも、なんですよ。

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 様々な灯火類の最もプリミティヴな形である、「燃える炎の明るさ」を光源とすること、そしてその最も身近な存在である蝋燭までもが電気仕掛けに取って代わられようとしてるのは、やはり少しばかり哀しい。
 あぁ、今日はクリスマスだった。クリスマス・キャンドルがLEDだったら味気なくないですか?クリスマスっちゃケーキだが、お誕生日もケーキだな。そのお誕生日のケーキに立てる蝋燭がLEDだったら興覚めぢゃないですか?吹いても消えんし(笑)。

 フォレストヒル・ランタンは野宿に出掛けなくなった今、そんなに使うことはない。だけど大切に取っときたいと思う・・・・・・でも、おれのは実はオイルランプ仕様にしてあったりするんだけどね(笑)。だってさぁ~、平べったいタブキャンドルって揺れて蝋がこぼれると後始末に困るんだモン。


これがオイルランプ改造時のマストアイテム。「ムラエ」ってトコが出してます。
2019.12.25

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