マウンパがあればジューブン |

ロバート・デ・ニーロが映画「ディア・ハンター」で着て、マウンパは一躍有名になりました。
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マウンパっちゅうても最近はちょっと通じにくいかも知れない。「マウンテンパーカ」の略だ。もっと略して「マンパ」って呼ばれることもある。
ぢゃぁマウンテンパーカとは何どいや!?っちゅうと、要はフードの付いた大き目でちょっと厚手の生地の冬用アウタージャケットのことを指す。たまに「パーカー」っちゅうて伸ばす人がいるけれど、綴りの”Parka”から分かるように「パーカ」がどっちかっちゅうと正しい。
実際はフードさえついてりゃエエっちゅうモンでもなくて、本来的には決まった形がある。一つは裏地付きであること、また、フロントの合わせがチャックとボタンで二重になってること。マチのある大きなポケットが上下左右に4つ付いており、それぞれにリッドがあること、下の二つのポケットは手を入れられるように横にスリットがあって二重ポケットになってること、襟元や袖口、裾がドローコード等で調整できるようになってること等が挙げられるだろう。今はあちこちのブランドから出てるし、以前はアノラックとかウィンドブレーカーとか呼んでたものまでマウンテンパーカーに一括りにされてる気もするが、それでもまぁどれも上記の特徴のいくつかは備えてる。
元祖は7~80年代に一世を風靡したアメリカのアウトドアブランド・シエラデザインズの出したモノだ。1968年っちゅうからもう半世紀以上前になる。俗に「シエラのロクヨン」と言われるのがコイツだ。
ロクヨンとはコットン60%・ナイロン40%の生地のコトらしい。その後、ゴアテックス・シンサレート・エントラント等々の優れた撥水・耐水生地が生まれて忘れ去られた感があるけど、当時は高機能素材として持て囃されてたのである。コットンが水を含むと膨張する性質を利用してある程度は耐水性ありまっせ、ってな程度の可愛い性能ではあるが・・・・・・。今はむしろ長く使用して洗濯を繰り返したり太陽に当たりすぎたりして、色落ちやナイロンの劣化とかで生まれる風合いの方に人気があるのは、生地としては甚だ不本意かも知れない。
ちなみにこのオリジナルには、背中のあたりに大きなポケットがある。マップケースとか言われるが、そんなトコに地図入れちゃシワシワになってしまう。実はこれ、古新聞を突っ込んで防寒性をアップさせるためのモノらしい。なんとも素朴な時代だったワケやね。
余談を3つほど。
シエラはいわば元祖モンベルみたいな総合アウトドアメーカーだったんだけど、日本では最近はあまり元気がない。今の代理店は正直ただのアパレル商社で、マウンパも本場USA製造を謳い文句にはしてるものの、実態はそこのオリジナル企画製品として生き残ってるだけに過ぎないみたいである。
たしかに海外サイトもあるにはあるんだけど、良く見てみるとこれカナダのサイトで、そこにマウンパは一切出て来ないし、本家アメリカサイトも見付からない。恐らく今はもう身売りされて消滅しちゃってるんだろう。往年のストレッチプレリュードに代表される美しいフレームワークのテントとか、是非とも復活させてほしいモンである。
も一つ小ネタ。何とユニクロのロクヨン、っちゅうのが存在する。ウソかマコトか上記の生地を使用したマウンパが僅か6,000円ほどで買えてしまう。実はおれも値段に釣られて一つ買って持ってるが、どうもしかしヤッパシ八ッ橋そこは所詮ユニクロ、細かいところでイケてない。まず、生地がホンマにロクヨンか?って言いたくなるほどツルテカでドカジャンみたいだったり、表地も裏地も妙に地味すぎたり(本来は山で使うことを想定して派手目の色遣いだった)、袖口のベルクロやボタンがチャチだったりで、まぁお値段それなりな作りですわ。ただ、普段着としては全然OKだろう。
3つ目は最も驚くべき話だ。映画「ディア・ハンター」でオレンジ色のをロバート・デ・ニーロが着てたことで日本では一気に知名度の高まったマウンパなんだけど、何と!劇中で彼が着てたのは実はシエラのロクヨンではなかったりする。ネット上には「ディア・ハンター=シエラ」みたいに書いてあるのが多いけど、ありゃぁ「ホルバー(HOLUBAR)」ってブランドのモノだったのだ。さらにはこれ、ダウンの中綿入りだったりもするんで、アウターシェルのみな本来のマウンパとは実はちょっとばかし違ってたりもする。ついでに言うと生地にしたって60/40ではなく、綿とアクリルの混紡糸で織ったフツーのモノだったそうな。
デ・ニーロのシブさに憧れて、ミーハーで大枚はたいてシエラ買った人はこれ知ったら泣くやろうね(笑)。
・・・・・・いつものコトでマクラが長くなりすぎた。いや、表題でもう今回の話は終わってるようなモンですし、許してくださいな。
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気付いたら、オフの日は秋の終わりくらいから春までマウンパばっかし着てる。着るコトにかけてはとんと無頓着なおれではあるけれど、それでもダウンだのヤッケだのジャンパーだのと他にも色々冬用のアウタージャケットは持ってる。ただ、どれも結局おれ的には帯に短し襷に長しで、スッカリ着なくなってしまったのだ。
ちょっと肌寒いくらいなら厚手のコットンシャツの上にマウンパのみ、もちょっと寒いと一枚フリース挟む、もっと寒いと薄いダウン挟むみたいな感じで着てる。ポケットが多いのもありがたい。クルマの鍵やスマホ、煙草、財布なんかを突っ込んでもまだ余る。ポケットが大きくて深いから小さな50mm単焦点やストロボくらいなら余裕で入ってしまう。
今持ってるのはコロンビアのアウトレットで10年くらい前と昨年くらいに買ったので2着、あと上記ユニクロが1着だ。本家シエラは持ってない。いつだったか買おうと決心して実物見て、値段と中身があまりにも釣り合ってないように思ったのだ。あれに5万近い値段はとても出せませんわ。ユニクロは近所にタバコ買いに行くときくらいしか着ない。遠出する時はコロンビアのどっちかを着て行く。これが「インターチェンジ」とかゆう面白い仕組みになってて、インナーとアウターをジッパーでくっ付けたり切り離したりできるのである。それぞれ単体でも着れる。インナーにもフリースやらダウンやらがあって、それらをテキトーに組み合わせるだけで大体間に合ってしまうのだ。
実用一点張りで無骨なデザインなので、ぶっちゃけカッコいいか?と問われたら返答に苦しむ。紺一色とかだと何だかまるで交通整理で赤い誘導棒持ってる警備員のオヤジみたいにも見える(笑)。ただとにかく便利であることは間違いない。
思えば、元祖スノーボードウェアであるセッションズのライダージャケットにしたって、マウンパのデザインはほぼそのままに生地を変え、裾を伸ばしゲーターを付けて改良したような代物だった。もっと古くはみんなマウンパ着て滑ってたんだろう。リュック背負って山登りにも使えるし、マリンでも使おうと思えば使えなくはないし、タウンやストリートでもそれなりに収まってしまう。ジーンズでもチノパンでもカーゴパンツでも合わせられる。基本はRVに似合うんだろうけど、セダンでもスポーツカーでも合わなくはない。若者が着てもおっさんが着てもジジィが着ても特に違和感がない。最近は派手なのも増えて来たが、昔ながらのオーソドックスなんだとあんまし自己主張のないデザインと色遣いだから悪目立ちすることもなく、いろんなシチュエーションにスーッと紛れ込めてしまう。丈もコートほどは長すぎずジャンパーほどは短すぎず、良くも悪くも中途半端なせいで意外に融通無碍でデキるヤツなのだ。
そんなんだから、あまりもう着そうにない他のアウターは処分しようと思ってる今日この頃だったりする。ホンマこれでジューブンですわ。一張羅上等っすよ。
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今はリーマンであるから、この季節だとスーツ着て、さらに上から短めのコートを着込んで通勤してる。コートにはベスト状の薄いインナーが付いてるだけなので、腕の部分なんかはとても寒い。ちっとも機能的でないなぁ~、って毎朝外に出る度に思う。
背中を丸めて駅までの道を歩きながら、会社辞めたらどんな生活送るんだろうなぁ~、ってあれこれ夢想する。何もせずにボーッとしてることは多分ないだろう。家の周囲なんかを修繕・整備してたり、草刈りや枝打ちしてたり、港や市場に買い出しに出掛けたり、小さな菜園や鶏舎を世話してたり、什器類を選んでたり、色んな契約・折衝・説明等で人に会いに行ったり・・・・・・なんや!忙しさは今と変わらんやんか(笑)。
・・・・・・ともあれそんなことしてる時、冬なら間違いなくマウンパ着てるんだろう、ってのは間違いなかろう。 |
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2019.01.11 |
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