「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
山で死「ね」ということ・・・・・・山で死ぬということ(3)


御在所岳。ロープウェーもドライブウェーもあるけど実は断崖絶壁だらけのかなり険しい山で、実は遭難が多い。

http://4travel.jp/より

 過去にも何度か引用したことがあるフレーズだけど、おれはアライテントの「ヒマラヤでもウラヤマでも」ってキャッチコピーが大好きだ。駄洒落みたいなんだけど、実はとても含蓄のある言葉に思えるのである・・・・・・山の危険はどこにだってある、っちゅう点で。

 1971年のマナスル北西稜ルート登山隊のメンバーだった世界的に著名な登山家・小原和晴氏は2006年、何と東京都内、奥多摩にある本仁田山ってトコで落雷によって呆気なく亡くなった。標高僅か1,200mほどで、フツーに日帰りハイキングで行けるような山でだ。
 ちょっと名前が思い出せないのだけど、そのさらに前にはやはり奥多摩だったか秩父だったか、関東近縁のそんなに高くもない山で滑落死した登山家ってのもいたように思う。もちろん、いずれのケースも老境を迎え現役引退してからのことだったとは申せ、百戦錬磨の経験に裏打ちされた危険予測能力なんかは一般人より遥かに高かったろうに、それでも死ぬ時は死ぬのである。

 やっぱし山は危険が危ない。だから可能な限りの下準備をして、注意深く慎重な行動をして、それでも何かあったら素直に反省し、迷惑を掛けたなら謙虚に侘び、命が助かったならばただもう感謝することが肝要だと思う。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 それがもぉウンザリするくらいに愚劣なケースがつい最近あった。

 未だに残り火が燃え盛ってるんで御存じの方も多いと思うが、岐阜在住の39歳のオバハンが、単独で出掛けてった御在所岳で遭難して救助要請までしたくせに、助けてくれた警察の口の聞き方がなってなかったっちゅうて自分のブログで長文の批判(・・・・・・っちゅうか罵詈雑言)を滔々と書き連ねたのである。ボリュームにして3,000字超っちゅうから原稿約8枚、紛うことなきアホである。読んでみけど、まぁ本人がとんでもねぇ勘違いババァってコトだけは良く分かった(笑)。

 プロフィールに自分の氏名を堂々と載せてるブログでやらかしたくらいだから、オバハンとしてはとっても自分に自信があって、「義は我にあり」ってな気持ちで書いたのは間違いなかろう。それどころか逆に意見に同調してくれるような人が沢山現れて、「勇気ある発言だ!」あるいは「公務員のあり方に一石を投じた!」などとヨイショしてくれて、「拍手!」とか「いいね!」をポチッとしまくりで、立ち上げる予定だったらしいネットビジネスにもプラスに作用するだろうなんて目論んでたのかも知れない・・・・・・あくまで想像だけど。

 しかし、当然ながら結果は真逆だった。そのあまりに身勝手極まりない、自己中で自分のことは棚上げした態度と理屈のひどさにメジャーなヤフーニュース等までもが取り上げたモンだからさぁ大変、アッと言う間に近年稀に見る大炎上ぶりで、遭難話だけでなく、ハウジングパークでもらったドーナツは油が身体に悪そうでレゲエにくれてやろうとしたんだけど見当たらないんで仕方なくゴミ箱に捨てたとか、友人の親身の助言は要するに自分に対する嫉妬だからクソバイスと見做すとか、我が子に大人用のカレー食わせたとか、あれやこれや過去の鬼畜な文章までがほじくり返されただけでなく、珍しい苗字だったもんだから家族関係から実家から経歴から何から綺麗サッパリ晒し上げられ袋叩きにされた。
 その結果、大上段な上から目線で、本人曰く「批判覚悟で書いた」はずのブログは言うに及ばずインスタ、ツイッターまでがわずか二日ほどで陥落した。閉鎖、ってヤツだ。本人の望み通りになったのは取り敢えず全国区で有名になれたことくらいだろう。南無南無。

 いくらヒドいオバハンだからってみんな寄って集ってヤリ過ぎだとは思う。今頃、家にはワケの分からない手紙や電話、出前、ネット通販の商品等が届いてるのではなかろうか、とも危惧してしまうけど、まぁそれくらいに腹立たしいオバハンなのも一方で事実だ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 遭難しちゃったこと自体はまぁ百歩譲って結果論なんでとやかくは言うまい。居眠り運転で事故りたいと思う人がいないように、山で遭難したいと思ってる人もいないだろうから。

 たしかに年端もいかぬ子を放り出してロクにコースの下調べもせず、地図も何も持たず手ぶら同然で、実は意外なまでに険しい御在所岳に出掛けてって、下りは難しいから通常は登りルートに使われることの多い道を下山路に選んで、岩場のルートを示すペンキにも何も気づかず、あろうことか立入禁止のロープを越えて下ってしまって行き詰まった・・・・・・うわわわ、そら遭難して当然や!っちゅうねん(笑)。
 充分これだけでもツッコミ所満載、あまりにも香ばしすぎるとおれは思う。だからこそより一層、警官からどれだけボロクソに言われたって甘んじて神妙に聞かねばならんし、どれだけ悔しくったってブログなんかでベラベラ意趣返しなんてせずにひたすら沈黙を守るべきだとも思うのだが、この自我の肥大しまくったオバハンにはどうやらそぉゆう思考回路は一切備わってなかったみたいである。
 何とまぁ「続きの事情聴取のために署までご同行願います」って言われて、「そんな遅くなったら旅館の晩御飯が~!」とか文句言ったっちゅうんだからもぉホンマに処置なし。筋金入りのアタマの悪いエゴイストっちゅうか、ホントに畏れ入る。こんなんでも母親やってるっちゅうんだからゾッとする。絶対モンスターなんとかになりそうだ。断じてこうした手合いとはお近付きになりたくないって思ってしまうタイプやね、ホンマ。

 どんなに低劣で悪質な人格でも夢を持つことは自由とは申せ、ちなみにこの旦那も子供もいるオバハンの夢は「一人で世界旅行」らしい。ウププププ。国内の低山でさえこの体たらくなんだから、外国行ったらどんな素っ頓狂な迷惑を掛けるか知れたものではない。国の恥だ、国辱モノだ。衷心から止しとけ、黙って子育てに励んどけと言いたい。

 さらに信じられないことに、ごく少数ながらこのオバハンの意見に同調する書き込みもあったのにはとても驚いた。警察の態度が横柄ってアータ、そりゃこんな状況ぢゃケーサツでなくたってボコボコに言って当然だと思うんだけど、そんなことも分からないのがケッコーいるんですよ。どこまで日本って目出たいんだろう。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・って、ここまではネット上に出てる情報に自分の感想を若干加味しただけの内容だが、いろんなサイトを見てるうちに、こぉいった単に身勝手で周囲のいろんな事情や状況を忖度・勘案する能力に欠けてるだけなのを、何か自分の意見があって主張のある性格なんだと履き違えて自惚れたような連中が、案外実は今のアウトドアとか登山ブームを支えてる層の広くを占めてるのかも知れないな、って気がして、段々と不安になってきたのだった。

 実はおれ、昔から山登りは決して嫌いでなかったりする。低山ばっかしだけど、高校の終わりくらいまでは近畿周辺を月イチで5~6人で登りに行ってたくらいだ。さらに基本アウトドア系なら大体何でも好きなのは今さら言うまでもないだろうし、最近はちょっとづつ努力してた甲斐あってか、滝汗系デブであることにはあまり変化がないものの、少々歩いても息が上がらなくなって来もした。それで気を良くして、涼しくなったら山登りに行くのもまたやってみようかな~、なんて考えてたトコだったのである。道具は何だかんだでソロの野宿用が殆ど転用できるワケだしね。

 でも、今回の事件のオバハンだけでなく、昨今の登山ブーム見てると、山には何ともはやおれの嫌いなカテゴリーの連中の濃度が高いように思えて来たのだ。
 やれエコだ、ナチュラルだ、ロハスだ、断捨離だ、丁寧な暮らしだ、シンプルライフだ、サードウェーヴだ、カフェだ、無添加/無農薬だ、自然食品だ、トランス脂肪酸フリーだ、天然由来成分/素材だ、ヨガだ、漢方だ、反核/反原発だ、反自民/反権力/無党派だ・・・・・・ドイツもコイツも、ガチ左翼の主張から口当たりが良くて都合のいいトコだけを適当に脈絡なくツマミ食いして換骨奪胎したような、「プチ左翼」とか「カジュアル左翼」でも呼べば良いのだろうか、テメェの優雅な生活がコテコテで矛盾だらけの資本主義の中にあってこそ成り立ってんだって肝心のコトを忘れた、ノー天気なクセに主義主張ばかり強くて癇に障る連中だ。
 このオバハンにしたって大体そんな辺りに棲息してるクチであることは、いろんな発言からも見え隠れする。

 そんなんがウジャウジャいるところに行ってどないすんねん!?街中ならまだ多くの人の波に紛れもするだろうけど、山だと登山道にそんなんと、あとは百名山自慢しか能がないようなジジババが列なしとるワケだ。ウガガガ、ヌククク、想像するだけで不愉快になるぞ、こりゃぁ。
 ・・・・・・って、そこまで神経症的に考えることもなかろうが、久しぶりに山に行ってみようかな?ってな淡い気持が何となく醒めてしまったのは事実だ。

 そりゃぁおれも大概残酷で鬼畜でイヤな部分を沢山持ってるし、もちろん手前味噌だしエゴイストだ。基本自虐ネタが多いとは申せ、自己愛だって無くはない。だからそんなエラそうに言えた義理でないことはよぉ~く分かってるツモリだ。
 しかし、ともあれそれでも、だ。今回の岐阜のオバハンの遭難騒ぎとその後の非常識極まりない発言を読んで、暗澹たる気持ちになると共に、ご家族には本当に、本人にはちょとだけ申し訳ないんだけれど、このオバハン、いっそ御在所岳で死んでくれてた方が世のため人のために良かったのではなかったか、といささかにせよ思ってしまったのがぶっちゃけ正直なところだ。

2017.09.05

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved