「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ガスランタンは終わコンか?


歴史的珍品と言えるPRIMUS"IP-200A"・・・・・・フツーに買える時に買っときゃ良かった。

http://italog.naturum.ne.jp/より
 ガスランタンって、最近ちょっと元気がないような気がしてる。ストーヴの方は相変わらず多種多様な製品が同じメーカー内でもリリースされてる一方で、何となく灯火類については整理・縮小の方向に向かってるように見えるのだ。理由もすぐに想像がつく。圧倒的な省電力・長寿命・高輝度・静粛性・低発熱といった特長を持つLEDが台頭したことで、火傷や酸欠の危険性もマントルやホヤ破損のリスクもなく、より手軽で扱いやすい方にユーザーが流れてってるからだろう。

 古い話ばかり持ち出して申し訳ないんだけど、昔はキャンガスやプリムスといった欧州系メーカーなんて何種類ものガスランタンをリリースしてたように記憶してる。ひょっとしたら新製品と在庫のみで終売の旧製品がオーバーラップしてたりして、見掛けほどのラインナップはなかったのかも知れないが、それでも現在のようなせいぜい大中小の3サイズに絞り込まれたような寂しい品揃えの状況ではなかった。

 思えばおれも3つばかしガスランタンを所有しているが、いつのまにか殆ど使わなくなってしまっている。一人ならキャンドルランタンとヘッドランプがあれば事足りてしまうし、複数だと重くてめんどくさいとは申せ煌々と眩い光を放つガソリンランタンが結局手っ取り早い。ガスは柔らかな光でテーブルランタンとして云々、っちゅうけど、別にUCOのキャンデリアで間に合ってしまうし、味がある。

 要は何となく立ち位置が中途半端と言うか、他のモノで容易に代替可能な感じがして来て面白みが感じられず、だんだん使わなくなってしまってたのだ。

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 しかし、見方を改めればこれって他の色んなものをそこそこにカバーできる万能選手であることに今更ながら気付いた。

 なるほどメインのランタンにはちと明るさが頼りないけれど、まぁ使えなくもない。ヘッドランプほど近場をピンポイントで強烈には照らせないけれど、まぁちょっと何か本読んだり調べものしたりくらいできる明るさはある。手軽さではカートリッジを取り付けるだけだから、キャンドル並みに手っ取り早い。灯としてキャンドルや灯油ランプほどの情緒はないけれど、LEDの味気なさよりは千倍マシだ。ある程度熱源としても機能するから、寒い時は若干の暖を取ったりもできる。

 ・・・・・・な〜んだ、これはこれでエエやんか。

 そう考えると俄然、ガスランタンを擁護してやりたい気持ちになって来たのだった。

 たしかにメリットは多い。そこそこ手軽でそこそこコンパクトでそこそこ明るい・・・・・・つまり「そこそこ」ってのがガスランタンの最大のポイントだろう。言うまでもなくそれが同時に没個性な中途半端さにも繋がってるのだけど。

 一方でマントル(発光体)は確かに壊れやすい。だって熱によってガラス化してるとはいえ、所詮は「灰」なんだから。しかし、少なくともコールマン#21とかの絵にも話にもならない脆さよりは断然マシだ。事実、所有する3つのうち、購入以来マントルが壊れて交換したのは1つ、それも一度だけで、他は10年以上、あちこちクルマに揺られて連れ回されまくってたにも拘らずリッパに保ってる。何のこっちゃない、白熱灯のフィラメントよりも寿命長いくらいなのである。ホヤもガラスだからこれまた割れることがあるんだけど、余程当てたり落としたり、あるいは炎の噴出が一点に集中したりしなければまず割れない。これもおれは今まで一度しか経験したことがない。
 つまりは丈夫なのである。吹きこぼれなどでジェットニードル廻りに支障が出やすいストーヴよりも燃焼部の故障だって少ない。ファミリーテントクラスの空間と、換気に注意、あとは可燃物を近くに置かない・・・・・・ってな但し書きは必要なものの、実はテント内でも使えなくはなかったりする。それで一度も酸欠になったことはない。周囲を幕体で囲ったスクリーンタープの中で炭火でバーベキューやったりする方がよほど危険だとおれは思ってるくらいだ。

 また、ストーヴ側でちょとだけガスが残ったボンベを使い回せるのが意外に便利であったりもする。湯沸しに使うとアッとゆう間に無くなりそうな残量でも、ランタンの方はガス消費量が少ないからかなり長時間使えたりするのだ。だから、ガス機器で固めてた頃はボンベについては新品2個と使い古し1個を持って出掛けてたもんだ。新品はストーヴ、使い古しをランタンに付けて、それが無くなったらストーヴのを外してランタンに移し、ストーヴにはまた新品を取り付けるのである。こうするとかなり長時間使える。
 また、ボンベのガスってブタン、イソブタン、プロパン等がミックスされて充填されてるのだけど、どうしても缶が気化熱で冷えて行く関係で、気化しやすい成分から先に燃えてしまい、気化しにくい成分が後に残ってしまう傾向にある。こうなってしまうと、ストーヴとしてはマトモに使えないくらいに火力が落ちてヘロヘロになる。全開で使ったり、高地だったり寒かったりするとよりなりやすい。しかし、ランタンとしては若干暗くなりこそすれまずまず使えたりする(・・・・・・極端に冷えてしまうとムリだけど)から、この点でも有利だ。

 あと忘れちゃいけない、CB缶(「カセットボンベ」の略、笑)と呼ばれる筒型のガスカートリッジならものすごく入手が容易かつ安価、ってのがある。それこそ100均やコンビニ、ホームセンター、スーパー等でフツーに流通してるっちゅうのは山派はともかくツーリング派には心強い限りだろう・・・・・・まぁ、安物は性能的にそれなりのことが多いし、極限性能を言い出すと弱いけど。
 ただ、も一つ置いても吊るしてもバランスがあまり宜しくないっちゅうか、不格好なのがおれはあまり好きではない。また、家のカセットコンロと同じなのでちょっと生活感が漂うのもいささか困りモノである。しかし圧倒的に汎用性があるのは事実だろう。
 もう一方のOD缶(「アウトドア」の略やて、ベタやねぇ〜!)と呼ばれる壺型タイプの方は販路が限られてたり高かったりするもののストーヴもランタンもラインナップが多く、また、寒冷仕様といったハードな環境に耐えるガスまで揃うのと、全体的なフォルムの安定感が良いのがメリットと言える。
 永年に亘ってCB派vsOD派の論争は続いており、未だ決着は着いてない。まことにしょうむない話で、要するに好きな方を選べば良いのだと思う。それに今は「詰め替え君」なるちょっと非合法で自己責任な(笑)アダプターを使えばCBからODにガスを移すことも可能で、安上がりに済ますこともできる。ちなみに余談だが逆に移すのは破裂の危険を伴うので止めた方が良い。一般的にCB缶の方が気化温度の高いガスの混合比が高く、缶がヤワで内圧上昇に弱いらしい。

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 そもそも論で、火器は大袈裟にいうと有ると無いでは生死にも関わる絶対に必要な道具と言えるが、灯火なんて極端なことを言えば無かったら無かったで何とかなるものである。日没で暗くなる前に全てのコトを済ませ、後はとっとと寝てしまやぁ良いのだ。大昔、自転車旅行してた頃に見掛けたベテランの人なんて、大体そんな感じだった。ランタンなんて気の利いたモノは持ってなくて、懐中電灯だけで間に合わせてる人も多かったと思う。大体、ストーヴにせよランタンにせよガス式は本格的なアルピニスト向け、って感じで、容易に手の届く値段でもなかった。くたびれたホエーブスやマナスルのストーヴがあるだけで贅沢だった時代である。

 灯火類が急速に普及したのは90年前後くらいからだろうか。その頃はまだそんなにアウトドアにハマッてなかったが、悪友に何度か誘われて出掛けたキャンプ場でのガスランタンのコンパクトさや明るさには驚異と羨望を感じたものだ。それでもまだまだ控え目でキャンプ場の夜は暗かった。
 それが今やオートキャンプ場など、何が自然ぢゃ!?と悪態を吐きたくなるほどに眩い光の氾濫である。そして、いつしかガスランタンは激眩しいコールマンのガソリンランタンととにかく便利なLEDの狭間に埋もれてしまい、これまた中途半端に地味な存在になってしまっている。

 そんないささかのレトロ感(それさえも中途半端だったりするよな〜、笑)も漂わせつつあるガスランタン、今一度見直してみる価値は十二分にあると思う。


ガスランタンの傑作と言えばこれ、PRIMUS"IP-2245"。殆ど基本設計を変えずに40年くらい売られてる。
http://item.rakuten.co.jp/より
2016.02.11

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