「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
メジャーブランド必ずしも名品ならず・・・・・・尾上製作所


少し加工すればもっと燃焼効率は上げられると思います。

http://shop.onoess.co.jp/より
 おれも昔から愛用してて10年ほど前にギャラリーページで取り上げたことがあるんだけど、ホントにコイツは素晴らしい。当時は今みたいにサイトにアクセス規制を掛けてなかったから、ひょっとしておれの拙い記事で興味を持たれて買われた方も何人かはおられたかも知れない。ちなみに今持ってるのは2台目で、要はそれくらいコイツは気に入ってるてコトだ。しょうもないアメリカ辺りのガレージブランドのコンロやストーヴに大枚はたくんなら、まずこれを買え!って言いたいくらいに良く出来ている。
 amazonのインプレでも2015末現在300近い驚異的な書き込み数を誇り、その殆どが五つ星だ。1つ星とか2つ星の人って一体全体何をどう評価してるんだろう?

 ・・・・・・それが姫路にある尾上製作所ってトコが出してる「フォールディングBBQコンロ F−2527」ってヤツだ。分かってる人には「オノエ」だけでも通じる。それくらいにこれは知る人ぞ知る名品なのである。

 尾上製作所、っちゅうのはまぁ昔ながらのブリキ屋さんみたいで、ブリキで出来た塵取りやらバケツ、盥、如雨露なんかを作ってたメーカーだ。しかしながら、昨今そぉいった製品はプラスチック素材に取って代わられ先細りになってたんだろう。それで耐熱性の高さを活かして、アウトドア用品に進出したんだと思う。しかしながらアウトドアグッズのブランドとしては殆ど認知されてない。
 ぶっちゃけ、この驚異の折り畳みコンロ以外のラインナップはあまりパッとしない。他のブランドからも出てるような耐熱塗装の四角い箱に4本の脚が生えたような至極フツーのBBQコンロばかりだ。突然変異的にこの製品だけが他に類を見ないユニークな構造で、コンパクトな仕舞寸法と焼き網面の広さ、地面やテーブル天板との間の遮熱性、素手での可搬性といった要素を高いレベルで満たしているのである。
 もしあなたがアウトドア好きを標榜しながらこの製品を体験したことがないのなら、本当に勿体ないことだと思う。是非とも購入すべきだ。なに、そんなに値段も張らない。昔よりは随分値上がりしたけれど(たしか最初に買った時は千ナンボだった)、それでも定価で4,000円ほど、実勢価格は3,000円でお釣りが来るくらいだから、このテの製品としては安い買物だ。

 アウトドア系についてはおれ、まだまだリハビリモードなんで、今回はお気に入りのコイツについて、他の薪炭系アイテムと比較しながら軽〜く書きトバしてみることにしよう。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・って、おれは実は焚火マニアでは決してない。「焚火のオレンジ色の炎をボーッと眺めながら日常の云々・・・・・・」とか本気でホザいてるヤツは、一度メンタルクリニックの門でも叩くべきではないかとさえ思ってる。あくまでおれは炊飯調理の道具として使うのが基本だ。だから、あまりにコンパクト過ぎても困るし、バカみたいに重くてもデカくても困る。

 例えばスノーピークに「焚火台」なるひじょうにバカげた製品がある。とにかく死ぬほど重い。鋳物で出来たロストル(中子)とか噛ますとさらに重い。畳み方はワンアクションで良く練られておりナカナカ面白いと思うが、平べったくなるだけで面積は大して小さくならず、嵩張るのが困りモノだ。オマケにムダに値付けが高い。一体全体どぉいったセグメントに売りたいのか理解に苦しんでしまう代物だ。同様のものではロゴスやキャプスタなんかにもあるが、どれも重量とコンパクトさの点で劣る。そりゃぁそもそもの製品作りが大人数での使用を想定してるから仕方ないとはいえ、もちょっと何とかならんのか!?と言いたくなる巨大さだ。
 その点でユニフレームの製品にはちょっと感心させられるのがあったりする。耐熱メッシュの網に卍に組み合わせた脚が付いただけのファイヤスタンドとか、国産ではかなり早い時期から製品化されてるネイチャーストーヴなんて軽量化やコンパクトさも十分考慮されており、良く出来てると思う。
 後者については神保町でバッタ売りされてるのを見付けて買った。説明書に従って松ぼっくりやら小枝を突っ込んで火を点けたら、トンネル効果とやらで驚くほど炎が上がる。その上から炭を突っ込めばアッちゅう間に熾る。ただし、如何せん小さいから一人焼肉が関の山なのと、空気の通りが良すぎるのか、火力が強すぎてじんわりマッタリと焼くのには向いてない。

 最近はこの小ぶりなネイチャーストーヴ系はLIGHT&FASTの流れの中で各社こぞって出してる感がある。代表的なのでは「ソロストーヴ」っちゅうので、怪しい中国製模倣品も含めると数え切れないほどの製品が存在する。構造的にはさらなる工夫が加えられ、炉の部分は二重壁になって、まず底から吸い上げた空気が木を燃やし、壁と壁の間を吸い上げられた空気が上の方で炉内に取り込まれて燃焼ガスをさらに無駄なく燃やすなんちゅう、クルマのエンジンのEGR(再燃焼装置)みたいなことをやってたりする。
 欠点はあまりに燃焼効率が良すぎるのとサイズが小さいせいで、しょっちゅう枝を継ぎ足さないとマトモに湯も沸かせないってコトだろう。これは自分の持ってるネイチャーストーヴでもそうだ。ある程度大らかに燃えてくれないと、燃料補給が忙しなくて落ち着いて調理ができないのである。

 この点で尾上製作所のはとても使いやすい。そもそもBBQコンロであるから炭を燃やすためのものなんだけど、かなり大きな薪を突っ込んでも重さに耐えるし、そこそこ空気を下から吸い込んでるのか、そりゃぁ上のようなガンガンに燃える系とは比べるべくもないとはいえ、火着きもさほど悪くない。着火剤やら小枝やらでシッカリ火が点いておればフツーに炭にも燃え移る。ターボでもかかったようにゴーゴーとは行かない分、却って使いやすいのだ。おまけに網の面が上記のものと比べると倍以上広いから、ソロだと湯を沸かしながら焼物をしたりなんて芸当も出来てしまう。サンマだって一度に4匹くらい載せられる。
 もちろんステンレスとは申せペラペラの薄板を折り曲げて作ったような代物なので、長く熱が掛かると歪みが生じて来るが、そんなんちょっと手でグイッと曲げれば何とかなるし、どだいそこまで精密に作られてもないので、咬み合わせが嵌まらなくなって難渋することもない。
 さらに感心してしまうのは、こんなチープな製品なのにアフターパーツが充実してるってコトだ。焼き網は言うに及ばず、下の反射板、ロストル、単なるレターケースの流用なはずのキャリングケースまでご丁寧にホームページには掲載されている。

 数少ない難点としては比較的軽量とはいえ1.8kgもあって徒歩の担ぎ系ではまず使えないってコトだろう。しかし、これほどの巨大な熱源を担ぐ必要はソロの山行等では考えられないだろうから気にすることはない。あと、見た目がどぉにも安っぽいって〜のもある。何せ昔ながらのブリキ製品の考え方で作られてるもんだから、何だか一斗缶やお菓子の缶を髣髴とさせるのである。まぁ、そのチープ感も含めておれは愛してるんだけど・・・・・・。

 余談ながら、炉の焦げ付きや汚れがイヤでアルミホイルで内部を覆って使うっちゅう方がおられるが、実はこれは止した方が良い。申し訳程度に空けられた空気取り込み口だけでなく、随所の隙間(実はこれも空気取り込みには多少役立ってる)がピッタリ塞がれてしまうことで、炭やら薪がより燃えにくくなってしまうからだ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 たいへん僭越ながらもし機会が得られたならば、尾上製作所に対しておれは以前からこの素晴らしいフォールディングBBQコンロについて一つ提言してみたいと思ってる・・・・・・っちゅうか、メーカー自身がこの製品の素晴らしさと世間からの評価をも一つ正しく把握してないのではないかとさえ思ってる。

 その提言はサイズと素材でシリーズ展開してみてはどうだろうか?ってコトだ。

 今のは畳むと丁度A4サイズなんだけど、A5サイズのSとかA3サイズのLなんかを出すのである。現行品でも十分4人用として使えるから、2〜8人くらいまで使える幅が広がる。あと、やはりペカペカのステンレス板なのは如何にも安っぽいし極限の軽量化にも限界があるだろうから、プレミアムとかウルトラライトとかなんとか名前付けてチタン素材のものも拵えてみてはどうだろう?思い切ってA6サイズくらいにまで小さくしたら200g前後で作れるのではなかろうか?そいでもってアメリカのアウトドアショーにでも出品するのだ。しょうもないカルデラナントカやヘキサゴンナントカより高い実用性で、互角どころか圧倒できるんぢゃないかと思う。

 そんなことを考えながら、永らく物置に仕舞いっ放しになってたコイツを引っ張り出して「激落ちくん」で磨いてみた。焼けだけはどうにもならないものの、流石ステンレス、随所に残ってた焦げやら油汚れはピカピカになった。網も多少の歪みが出てるもののまだまだ使えそうだ。見た目はチャチだがシンプルな分タフでそうカンタンに壊れないのである。

 ・・・・・・かくして数日前に宣言した通り、今年からのアウトドア路線に向け、準備万端、虎視眈々(何のこっちゃ!?笑)、いろんな道具の整備に余念のないこの正月なのでありました。 

2016.01.03

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved