「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
タテかヨコか!?丸か四角か?それが問題だ・・・・・・コッフェル小考


ストーヴと一体化したシステムとしてものすごく完成度の高いTRANGIA"STORM COOKER"。

 Googleのトップページの方が自由なカスタマイズが効いて自分流にしやすいことは分かってんだけど、やはり永年慣れ親しんでて何となく落ち着く気がするもんだから家でも会社でもトップページはYahooにしてる。

 最近そのコーナーの一つであるヤフーショッピングにやたらクッカー、っちゅうのが出て来る。そう、アウトドアグッズのアレ。もぉ随分寒くなってきて一般的なキャンプシーズンは終わりだろうにどうしたことだろう?
 最近はこのように「クッカー」と呼ぶようだが、昔は「コッフェル」とドイツ語読みするのが一般的だった。おれもこっちの方がピンと来る。登山やスキーに関する言葉がスイスのドイツ語圏から輸入された名残だったんだろう。ザイルとかアイゼンとかピッケル、ツエルト、ストック、ハーケン、リュックサック、ヤッケ・・・・・・みんなドイツ語だ。リングワンデリングなんておっかない言葉もあるけれど。
 そんなんだからオールドタイマーなおれにしたら山用の鍋釜はコッフェルと呼んだ方が何となくシックリ来るのである。

 ・・・・・・で、該当ページを開いてみるとそれはそれは沢山出て来る。昔はこのテの鍋釜っちゃエバニューとかモチヅキくらいだったんだけど、今は新潟の食器屋系であるスノーピークやロゴス、キャプテンスタッグ、ユニフレームはもちろんのこと、トンと調理器具系に無関心だったモンベルなんかもいつの間にか参入してるし、外国のブランドも数多く売られてる。まっことベンリな世の中になったモンだ。

 思えば随分野宿行から御無沙汰ししまってる。最後は北海道にいる時だったんで、もぉ3年も前のコトだ。クロゼットに仕舞ったテント、腐っちゃってるかも知れないな。

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 そんな久しぶりのアウトドアネタでいきなりあまりムリして力んでも仕方ないんで、今日は軽くコッフェルについて思うことをあれこれ書いてみたい。

 まずはおれのコッフェルのセットについてから始めることにしよう。あまり極端に絞り込んだ構成は趣味ではない・・・・・・どころか、野宿でもそれなりにいろいろ食べることは愉しみたいと思ってるんで、かなりテンコ盛りの構成になってる。
 メインはスノーピークのトレックコンボっちゅう、1400mlと900mlのタテ型の深い鍋に500mlと250mlのフライパン兼皿がセットになったものだ。そこにチタンマグカップとソロセット「焚」という830mlと330mlの細い鍋とカップを入れて、実にリッチな7点セットとしてる。但し素材はマグカップ以外はアルミだ。チタンはたしかに軽くなるとはいえ、値段は高いし火の通りがイマイチ好きになれないのである。焼けると何とも言えないブルーに染まって綺麗なんだけどね。
 さらにここに100均で買った小さな金笊2枚、トランギアと純正のお椀型五徳、自作のハリガネ五徳、さらにはハロマークデザインの「アリゾナストーヴ」の復刻版であるODボックスの「アルコーリックストーヴ」っちゅう単なる金属板を十字に組み合わせるだけの五徳・・・・・・とナゼか五徳ばっかし三種類、そしてアルコールストーブには不可欠とも言える風防は自分でレンジパネルから切り出して作ったクルクル丸めるのを突っ込んである。

 これらを全部合わせるとかなりの重量がある。チャンと正確に計ったことはないけど1.5kgくらいあるのではなかろうか。でもまぁ、ソロ用としてはかなり贅沢な構成にはなってるし、その気になればかなり沢山の品数を拵えることもできる。一長一短だ。
 ただ、いくつもの欠点がある。タテ型にしたもんだからミョーに深くて直径が小さくて、バランスが悪く、食べにくく、洗いにくい。特に「焚」の鍋なんて500mlの缶ビールを一回り大きくしたような形で異様に使いにくい。さらには立ち上る炎(アルコールストーヴってユラユラした火が高く上がるのだ)が鍋に付いた取っ手を焼いて熱くしてしまう。それに風防で囲んでるもんだから尚更一層熱くなる。
 つまり、アルコールストーヴとの親和性がも一つ宜しくないのである。

 思うに、タテ型コッフェルってシングルタイプのガスストーヴで使うことを前提に作られてるのではないかと思う。バーナーの径が小さく、そして短くて強い炎が底面だけをゴーゴーと炙るだけだから取っ手もそれほど熱くならず、ちょっとタオルか何かで覆えばフツーに掴めてしまう・・・・・・っちゅうかバランスの悪さは取っ手を持ちながら火に掛けることで抑えることを想定してるようにも思う。

 賢明な読者の皆さんはもぉお分かりだろう。コッフェルをタテ/ヨコどちらにするかは、火器によって決まると言っても過言ではない。アルコールストーヴの場合、どちらかと言うと底面が広くて丸い方が扱いやすいように思う。トランギアには有名な「ストームクッカー」っちゅうて組み立て式の即席竈みたいなパーツを中心に鍋やらフライパン、ヤカンを組み合わせたセットがあるんだけど、これについてる鍋は見事に底が丸くなってる。実に理に適ってるように思う。
 も一つコイツが理に適ってるなぁ〜って感心するのは、どうせ熱くなるんだからとばかりに鍋やフライパンに取っ手が無いってコトだ。とても潔い。ティファールと同じような仕組みのハンドルが別にあって必要な時だけ挟んで持ち上げるのだ。ちなみにストームクッカーをうんと小型で極限までミニマムにしたミニってセットも同じようにハンドルが別になってる。ただ、こっちのハンドルは毛抜きみたいな形したひじょうにペラペラでチャチな代物だ。
 とは申せトランギアにはメスティンって有名な平べったい飯盒があるんだけど、これには逆に妙にバカでかいハンドルが付いてたりする。この辺についてのメーカーの見識は良く分からない。

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 四角いコッフェルは最近では減ったように思う。どぉゆうワケかこの四角いタイプは蓋のツマミが黒い樹脂(かつてはベークライトだったかも)って相場が決まってて「チロルコッフェル」なんて呼ばれてる。愚考するに大昔、アルピニストの超定番ストーヴにオプティマス8R、通称「弁当箱」という水色い缶の四角いのがあって、それを合理的にパッキングするって観点から生まれたんぢゃないかと勝手に想像してたりする。
 この8R、ガソリンだから重いしプレヒートが要るし、そのクセ火力はそれほど大したことないっちゅう大変な代物だったんだが、ナカナカ愛すべきフォルムと独特の合理性があってその内買ってやろうって思ってた名品だ。残念なことに随分前に製造中止になってしまった。角型は今はもう巨大な「HIKER」っちゅうのんしか残っておらず、市場ではとんでもない価格で中古品が取り引きされてる。そんなこんなでコッフェルが四角くある必要が無くなってしまったのではないか、ってコトだ。
 ただ、四角いコッフェルは意外に食べやすい。これは大いなる長所だと思う。それに角っこはある程度丸くなってるのでそんなに洗いにくいコトもない。またザックに入れた時に余分な隙間ができにくい。

 ここまで書いてハタと気付いた。四角いコッフェルは四角いコンロの上に載せれば熱も均等に当たって宜しかろう。その伝で行けば、例えばユニフレームのネイチャーストーヴみたいに火口が四角いのや、エスビットの恐ろしくシンプルな固形燃料ストーブ、あるいは四角いBBQ網の隅っこに置いたりするには向いてるように思う・・・・・・まぁ今のところ自分では買う気はないけど。
 そぉいや四角いタイプで深型って見たことないなぁ〜。やはり使いにくいんだろう。いっそ6角形とかとんでもない形のが出たら面白いかも知れない。「ハニカム構造でとても丈夫です!」とかいい加減な宣伝文句でさ(笑)。

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 こうして散々能書き垂れといて言うのもなんだけど、まぁ結局のところ、コッフェルに家庭用の鍋釜並みのシッカリした性能や万能性を求めることはそもそも不可能である。軽く小さくすれば使いにくいし、タップリした容量と厚みを求めれば重くデカくなって持ち運びが大変だ。矛盾のカタマリと言える。チマチマ、セコセコしたママゴト+αくらいが本来的に関の山だし、それだからこそ楽しい、っちゅうのもある。
 だから何選んだって構わないっちゅうのがおれの結論だ。一つ買えばよほど激しく腐食させたりしない限りは相当長いこと使えるから、吟味に吟味を重ねチョイスしても面白いだろう。逆にそもそもスタック出来る作りでされほど嵩張るものでもないし、他の道具に較べれば値段もそれなりだから、用途に合わせていくつも買って悦に入るのもこれまた一興だろう。

 間もなく厳寒の季節を迎える。だからこそ静かで落ち着ける。実は防寒対策さえしっかりしておれば冬の方がムダに汗をかかなくて好都合な面もある。クルマも新しくしたことだし、また山に出掛けてみようかな?


小型ガソリンストーヴの傑作OPTIMUS"8R"。

2015.12.05

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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