「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
出せなきゃ諦めも付くだろう


遅い4WDっちゃおらぁ初代テラノを想い出します。
でも角張ったスタイリングとか何だかとても好きだったな〜。


http://www.carsensor.net/より
 これもまた忍び寄る老いを感じさせる寂しい話なのかも知れないが、いささか思うところあって7年乗ったバカッ速の今のクルマからフツーのに乗り換えることにした。

 急に立ち始めた秋風にセンチメンタルな気分になった、ってワケでは決してない(笑)。実は昨年くらいから少しづつ「そろそろ潮時かな〜?」って思うことが増えたのだ。さらにその間、いろんなことがおれの身の回りに起きてあれこれとガラにもなく命について考えさせられたのも、そんな気分を後押しした。実は車検の切れるちょっと前、春過ぎにはネットでアタリを付けては新古車狙いで中古屋巡りなんかもしてた。その時はイマイチ、「コレだ〜っ!」ってのに出会えないままそのままになってたんだけど、たまたま先日、ちょっとした修理でクルマ屋に行ったら話が弾んで何となくそのまま新車に買い替えることになってしまったのである。新車購入なんてホント随分久しぶりだ。一世一代のホンダの珍妙なスケベ車「S−MX」買って以来だから20年ぶりくらいになるのかな?

 次に買うのは遅い。馬力はぶっちゃけ今の半分近くになってしまう。ただまぁ遅いたってジムニーみたいに100キロ出すのも青息吐息とか、クロカンブーム時代のディーゼルみたく坂道は黒煙吐くばかりでちょっとも登ってかんとかそんなことは決してないだろう。試乗してみた感じでは今までより若干加速がモサモサする程度かなぁ〜?ってな印象である。街乗りくらいでは特に不自由は感じなさそうだ。どうだろ?感覚的には一昔前の1500〜800あたりの平凡なセダンの走行性能くらいだろうか。かつて乗ってた激重のディーゼルのクロカン4WDなんかよりはそりゃもう断然速い。だってあれ、2トン半近い車重に125馬力しかなかったモンな。あれよりは馬力もあるし軽い。それと多分、最近の国産車の主流であるCVTとエンジンの美味しい回転域との電子制御が巧みなんだと思う。

 大体、そんなに沢山人や荷物を積むことも最早ないのである。遠出するったってヨメと二人、重たいものと言えばせいぜいカメラ道具一式くらいなんだから。むしろ帰路の方がよほど土産で重くなってるのが今の旅のパターンだ(笑)。
 家族で何泊もキャンプに行ってた頃は既にガソリン車に乗り換えて馬力は200馬力にまで上がってたが、アウトドアグッズも満載だったんで、体重等も含めたクルマの総重量は恐らく3トン近くになってたと思う。だって、テントにスクリーンルーム、テーブルにスタンドに椅子が4脚、ガソリンツーバーナーにランタンやらキャンドル沢山、シュラフ4つ、マットも4つ、マトリョーシュカみたいに食器まで綺麗に組み込んだ大型コッフェル、巨大なクーラーボックス、炭のBBQコンロ・・・・・・よくもあんなに積めたもんだ。トラックみたいにルームミラーなんて全く役に立ってなかった。

 履いてたタイヤにしても今はスッカリ見かけなくなったBFグッドリッチのオールテレーンっちゅういかつい激重で、ザーッてロードノイズも凄まじく、とにかく動きは鈍重だった。高速では目一杯助走付けても150キロ出せれば御の字だった記憶がある。大体Qクラスのタイヤでは160キロが物理限界で、それ越えるとトレッドが千切れたり真円を保てなくなってバーストしたりとそもそも使えないのだ。
 さすがのおれも試さなかったけど、もっといかついマッドテレーンなんてのもあった。泥濘地用である。さらにうるさいわ重いわドライではグリップせんわと大変だったけど、90年代半ばくらいはこんなの履かせて、ランプを満艦飾に付けた、東南アジアのタクシーも驚くようなのがゴロゴロ走ってた・・・・・・話が脱線しちゃったね。

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 今のクルマに対して大きな不満があったワケではない。逆である。あまりにカンタンかつ快適にとんでもないスピードが出せてしまうことに、少しく恐怖を感じるようになって来てたのだ。ホント、ちょっとペダルを踏み込めばジェット機の離陸時の加速みたいに上体がバックレストに押し付けられ、僅か数秒でメーター振り切ってリミッターが掛かってしまう。自分で性能を御してる感じがちっともしない。
 そらまぁ単車時代は200キロ巡航とか、メーター読みで250何キロとか、もっと非現実的な速度域ではあったとは申せ、まだ自分で操ってる感じがあった。残念ながら運転たって全身ではなく手と足をバタバタさせるだけで、オマケに各種電子デバイスで制御されまくった今のクルマでその感覚を得ようとする方がムリがある。

 そんなんアクセル踏まなきゃエエやんか、ってツッコまれるのは百も承知の上だ。それが出来ないから買い換えるのだ。大体に於いて、スピード基地外は大酒飲みとよく似ている。大酒飲みがあったらあっただけ飲まないと気が済まないように、スピード基地外はそのクルマの目一杯まで出さないと気が済まない。そして、大酒飲みはカラダ壊して飲めなくなるまで飲酒癖を止めないように、スピード基地外は大事故を起こすまで、いや、起こしても飛ばすことを止めない。自制心のタガがどこか外れてるのである。

 もちろん、昨今の新型車の劇的な燃費向上がちょっとばかし気になって来た、っちゅうのもある。カタログデータとはいえレシプロでも軽だとリッター30キロ超えとか、もぉ笑っちゃうような空恐ろしいレベルになってる。4代目プリウスなんてリッター40キロらしい。こんなクルマばかり増えちゃそらガソリンスタンドだってツブれるわな。全盛期の半分近くにまで店舗が減ったっちゅうのも無理なかろう。まるでもう学生の頃に乗ってたスクーターみたいな燃費だ。
 たしかに前のガソリンジャブジャブなクロカン4WDの燃費からすれば今のは街乗りでは3倍、遠乗りで2倍以上に伸びたし、それが今のに乗り換えた大きな理由でもあった。とはいえ、現代の平均からすればさほど良いワケではない・・・・・・どころか今やちょと悪い部類に属するだろう。
 経済性やら世間体を気にしなければ実のところ、クルマははガソリンブチ撒けて走るようなのが乗ってていっちゃん楽しい。ファントゥドライブの敵はエコだと思ってるから、省燃費なんてまぁ二の次だな。言い訳でした、スンマセン。

 衝突安全回避装置なんちゅうのもこの数年で各社どえらい進歩を遂げてる超ハイテクデバイスだと思う。カメラやらミリ波、赤外線等を用いて前方の障害物を認識して勝手にブレーキ踏んでくれたり、車線ハミ出したらピコピコ教えてくれたり、前の車にぶつからずにピッタリ付いてってくれたり、信号でボーッと止まってたら「早よ行け!」って促してくれたり、後方から来るクルマの動きまで見てくれてたり・・・・・・とホント至れり尽くせりで、夢の完全自動運転一歩手前までテクノロジーが向上してきてるのが良く分かる。
 余談だけど、このテの仕組みを積んだクルマはそのままではシャコタンとかリフトアップが出来ないらしい。車種ごとの地上からカメラやレーダーまでの高さをキチンと織り込んで、誤作動が起きないようにプログラムチューニングしてあるんもんだから、迂闊に車高を変えると正しく動作しなくなるのである。その調整はかなりシビアで精緻なモノらしい。
 実装され出して30年以上にもなるエアバッグにしたって、かつてはハンドルの中にのみ仕込まれてたのがだんだん増えて、助手席は言うに及ばず、ドアの横や天井、さらには歩行者向けにボンネットの下とかとどんどん増えて来てるのも何となく頼もしい。ボディそのものもコンピュータ解析の進歩や高張力鋼板、スポット溶接技術、新素材の進歩等で、軽量化しつつもさらに安全になってるのは今さら言うまでもないことだろう。

 ・・・・・・でもまぁ、それらもまた畢竟言い訳じみた付け足しだろう。ただもうおれは速く走ってしまうクルマと、年々上がり続ける自分のアベレージスピードが怖くなって来たのである。たしかに高速での巡航速度等は元々そんなに遅い方ではなかったけど、今やちょっと人様に言えないレベルにまでなっちゃってる。御殿場から新東名に入って浜松いなさの終点まで**分・・・・・・これ以上は言えまっしぇん!!(笑)。それも危険回避できるだけのドラテクあるならともかく、ただもうトバすだけの直線番長。ちっともイケてないよね!?こんなん。
 一般道もまぁお上品とは言えない運転でガンガンにトバしちゃってる。あまりに加速が凄いもんだから、対向車が向こうから来るのが見えてても反対車線に出て一気に前のを三台くらい追い抜き掛けたりもする。これで官憲のお世話にでもなれば少しは懲りて大人しくなるんだろうが、何故かちっとも捕まらないのだ。

 ・・・・・・マズい。ヤバい。このままだとやらかしてしまいそうだ。いくらおれでも命は惜しい。家族の命はもっと惜しい。

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 そんなこんなで次は遅い車だ。10年までは分からないけど、これまでのパターンだと少なくとも7〜8年は乗るだろう。スピードが出なくても、それなりにまぁやっぱしトバすんだろうが、そもそもトップエンドが遅いんだから今までよりは可愛いモンだし、ビュンビュン追い抜かしてくヤツがいたってスピード出せなきゃ諦めも付くだろう。

 世はハイブリッドやPHEVといったモーターくっ付いたんやらダウンサイジングターボ等の過給機付きの小型エンジンが真っ盛りだけど、敢えて補器を持たない自然吸気で内燃機関だけのにした。おそらく次に買い替える時、そういったエンジンは過去の遺物になってそうな気がするからだ。

 昔ながらのクルマに乗れる最後の機会と思って、そして、旅のスタイルもまた見直して行こう。


小型ガソリンストーヴの傑作OPTIMUS"8R"。

http://www.goo-net.com/より
2015.11.17

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