「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
エンジンオイル小考

 
"IGOLのロゴの変遷とYACCO"の旧タイプロゴ。憧れました〜!

http://www.igol.com/、http://www.autofine.com/より

 ・・・・・・何が「自然の中へ」やねんな!?
 言行不一致とは正にこのことで、このところクルマネタばっかしになってるのが我ながらちとナサケないけれど、まぁ気の向くままに書くしか芸がないんで今回もクルマネタで行くことにする。

 昔からオイルはエンジンの血液だ!な〜んて言われてて、何かと神経質に拘ってる人がひじょうに多い。まぁ、消耗品で交換時期がしばしばやって来ることに加え、あれこれ試したとしてもそんなサードパーティーの外装パーツ入れたりするよりは安上がりなあたりが拘る人が自ずと増える理由だろう。つまりお財布に優しくて敷居が低いのだ。ギターで言やぁ弦とかピックみたいなモンだな。

 おれは単車時代からスクーターとKR250以外は4ストが専らだったのと何かとアテられやすい性格が災いして、ついついオイルもそれなりにあれこれ試してきた。まぁ、死ぬほど高いのは入れたことないし、かといってとことん無頓着でホムセンやGS任せでもなかった程度なんで、そんなマニアックなレベルまでは行ってない・・・・・・ま、平均的な「ちょっと乗り物好き」程度ではなかろうか。それでも30年以上(・・・・・・嗚呼、歳がバレるな、笑)あーだこーだ取っ替え引っ替えして来たあれこれを書き連ねることで、日々オイル選びに悩んでる皆さんの一助くらいにはなれるかな?って思ってる。

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 おれが単者に乗ってた頃はとにかくカストロールが大人気だった。今でもオートバックス等の安売りコーナーの定番品で並ぶ「GT」ってーのがあって、純正を卒業したみんながまず最初に憧れるオイルだった。昔から粘度は10W−30が標準だったと思う。クラスは当時はまだSDとかSEくらいではなかったかな?今はSNとかになってるけど、これによって何か品質上がるんだろうか?
 カストロではさらに上のクラスで「RS」なんてーのもあって、これはかなり高くておいそれと手が出せなかった。買うと真ん丸のRSって描かれたステッカーがオマケで付いて来る。これを単車のカウルの横とかに張るのは一種のステータスだった。もちろんパチモンのステッカーもドレスアップコーナーの棚なんかに置かれてんだけど、微妙にオリジナルと違うそれを貼ってるのはすぐにバレ、嘲りの対象になるのだった。それでもやはりフツーに入手できる粘度は10W−30くらいだった気がする。20W−50なんてもぉ学生の分際では贅沢品で、そんな普通に売ってなかったと思う。記憶違いならゴメン。

 おれはカワサキマニア、それもGPより耐久マシンが大好きだったんで、カワサキフランスの耐久レーサーのスポンサーだったIGOLやYACCOのオイルに憧れたモンだけど、今でも滅多に取り扱いの無いのが当時はさらに入手困難、どこ探しても売ってない。仕方なく当時はまだ沢山店のあった二輪のオートバックスみたいな南海部品の店頭であーでもないこーでもないと思案を巡らせるばかりだった。

 知ってる人なら御存じだろうが、単車の方が高回転で馬力を絞り出す関係で、自動車よりもオイルには注意を払わねばならないし、様々な劣化は如実に表れる。どれだけ効果があるのかいささか?だったけど、空冷エンジンには水冷ラジエータをうんと小さくしたようなオイルクーラをオプションで付けてる人も多かった。おれも何となく良さげな気がしたもんで空冷GPz時代はオプションのオイルクーラを付けてた・・・・・・ま、御守みたいなモンやね。
 ・・・・・・で、純正も含め上記GTXやRS等々、いろいろ試してみた結果は残念ながら、「どこもあんまし変わらないなぁ〜」ってコトだった。そう、大枚はたいてRSも入れはしてみたんだけど、そんなに大きな差は感じられなかったのが正直なところだ。ああ、一つだけ明らかにハズレだと感じたのがある。最近トンと見掛けなくなってしまった「ペンツ」ことペンゾイルだ。なーんかガラガラうるさくなって、最初おれは粘度を間違えて入れたのかと思ったほどだ。

 ところがある日、もうニンジャに乗り換えてた頃だと思うが、常連だった店の店主、通称「シャチョー」があるオイルを勧めて来たのだ。

 ------おい!オマエ、モチュールて知っとるやろ!?
 ------名前だけは知ってるけど・・・・・・ヨシムラ(スズキ系の名チューナー)が使ってるヤツやんね?
 ------おぅ!それぢゃ!それ!一回試してみぃひんか!?ムチャクチャにエエど!こないだ安う入ったんや!

 品番で言うと何だったのかはすっかり忘れてしまった。赤いプラボトルに黒白のチェッカーフラッグみたいなラベルだった以外何も覚えてない。とは申せモチュールはどれも同じようなデザインなので、そんな程度では今となっては手掛かりにもならない。
 ともあれ、いつもながらのシャチョーの押しの強さに圧倒されて半ば強制的にモチュールに交換させられたのだった。安くする代わりにセルフサービスで、店の前で自分でドレンボルト外して古いの抜いて交換した。ちなみにニンジャは当時の水冷バイクとしてはけっこうオイル量が多目で、安くしてくれたとはいえそれなりに結構支払った記憶がある。

 シャチョーの言葉に嘘はなかった。態度や話し方は乱暴だけど、この人の勧める物で結局ハズれだったことは一つも無い。それはそれはもう見違えるような変わりっぷりだった。オイルだけでここまでガラッとエンジンの吹け上がりや静粛性(カワサキのバイクはメカニカルノイズが他社よりデカいのだ)が劇的に変わるものか!?っちゅうくらいにガラッと変わったのである。それからというもの、高いけれどニンジャにはズーッとモチュールで押し通した。燃費の改善は・・・・・・あんまし良く分からなかったな。だってエンジン調子良くなると嬉しくなってますます回すようになるしね(笑)。

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 クルマに乗り換えたあたりからは怒涛の金欠生活が続く日々だったんで、そんな高級オイルがどぉこぉと言っておられる身分で無くなってしまった。それでもなけなしの金でオイルのブランドはいろいろ試してはいた。しかし、クルマでは単車ほど大きな差は感じられないし、結局は量販店の量り売りが一番安くて性能が優れてるようにさえ感じていた。
 ちなみにダメだったのはいくつか挙げられる。まずアジップ。結構高いクセにホンマにフェラーリの純正指定か?って言いたくなるようなオイルだった。BPもダメ。ある程度どっちも高いの安いの試してみたんだけど、どうにもならん、っちゅうのがおれの率直な感想だ。実は当時最も気に入ってたのは、イエローハットのマグナとかナントカゆうPBオイルの一番高いの。これはオートバックスのPBと似たような値段であるにもかかわらず、入れた感じはこっちが断然勝ってるようにおれには思えたのだが、残念なことにそのうち見掛けなくなってしまった。

 4WD時代は何だかんだで殆どオートバックスのPBばっかしだったように思う。そんなにブン回すワケでもなし、ディーゼルではたしか10W−30、ガソリンはほぼ一貫して5W−30にしてた。クラスは随分進歩してSG〜SJとかだったっけ。よぉ分からんです、ハイ。
 その分、添加剤をあれこれ試してたのがこの時期だ・・・・・・って、恥の記録なのであまり多くは書きたくない。一言、PTFE(テフロンコート剤)っちゅうあれ、あれはマヤカシだ。めっちゃ高いの入れて、レシピ通り300km走って定着させて・・・・・・って何も変わらんやんか(笑)。極圧状態での潤滑が実際にあるのは昔ながらのモリブデンだけ、っちゅう意見におれは賛成だ。そうそう、ウィンズのホホバオイルがどーたらこーたらっちゅうのも試したけど、能書きほどには何も体感できなかったな。
 とにかく言えることは、そもそもそんなケミカル系添加剤入れなくても通常使用には何ら差支えないってコトだろう。人間だってそうでしょ?ユンケルとかリポDとかアリナミン飲んでそんな劇的、かつ長期的に効きます?ってコトだ。

 今も乗ってるバカッ速のクルマに乗り換えた頃からちょっとお財布にも余裕が出来たこともあって、再びエンジンオイルをあれこれ試すことが増えた。粘度としては5W−40で夏も冬も押し通してる。もう添加材には手を出してない(笑)。
 ダメだと思ったのは往年の憧れの的だったカストロール。今は「EDGE」とかゆうカッコいい名前になったアレ、ぶっちゃけフケが悪くなる・・・・・・だから粘度はそこそこシッカリしてるんだろうが、その割に静粛性に難があるヘンなオイルだと思う。定評のあるモービル「F1」はなるほどたしかに良いが、いささか寿命が短か過ぎるような気がする。感覚的には2千キロくらいから違和感が出て来る。絶対5千キロではダレまくりなのではなかろうか。だからお金に余裕があって3千キロ交換くらいでやってる人には良いかもしれない。
 逆にかなり好印象だったのは、アメリカンオイルの老舗であるガルフだ。特に高くもない「ARROW GT」っちゅうのを試しに入れてみたら、随分静粛性が高まったのに燃費の劣化や吹け上がりは特に悪くならなかった。さらには5千キロ乗ってもあまり劣化が感じられないように思えた。惜しいことにあまり売ってないのが難点だが、興味持たれた方は一度入れてみてください。おれは好きです、これ。
 他にもいろんなブランド試して入れたけど、特に印象にも残らなかったんでどれも大同小異だったんだろう。

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 ・・・・・・って、ホントの深い知識を持ったオイルマニアから見たら失笑・噴飯ものの主観丸出しのあれこれを書き連ねたが、実はそもそもエンジンオイルなんて、真夏の炎天下を何時間もぶっ続けで全開走行するといった極限状態での連続使用が無いんなら、効能や性能差については誤差の範疇若しくはプラシーボが大半だと今では思ってる。

 大体、オイルの粘度が上がればトレードオフでフケは悪くなるし燃費も落ちる。よくターボ車に乗ってる人が15W−50とかスゴく硬いの入れてるけど、上記のような使用環境でないのならまったく宝の持ち腐れだ。エンジンの始動性は落ちるし回らなくなるし燃費は落ちるし、ロクなコトが無い。フツーに乗るんならメーカー指定のグレードと標準的な5W−30の粘度で全くOKだろう。実は純正が一番、な〜んて意見さえあったりもするんだし。

 昨今はエコカーがブームになって何より燃費が最優先される趨勢で、以前だと想像もできなかった0W−20なんてぇムチャクチャに軟らかいのまで普及してきてる。これまで夏場の粘度が高いほど良いオイルなんて言われてたのがコペルニクス的大転換だ。下はともかく上がたったの20!そんなんで日本の過酷な夏の気候に耐えられるのか?アナクロなおれには俄かに信じがたいけど、特に故障した話も聞かないトコからすりゃぁ、それなりにちゃんと走るんだろう。2リッターで200psとギンギンのNAスポーツカーである86/BRZにしたってこの粘度指定らしい。恐らくは工作精度が向上したことに加え、最も発熱するシリンダヘッドやピストン廻りの冷却技術とかが各社向上して、昔ほど温度上昇に伴う油膜切れを心配する必要が無くなったのかも知れない。

 思えば今は絶滅した2サイクルなんて、エンジンオイルは文字通りの消耗品だった。ガソリンにちょびっと混ぜて吸気の度にエンジンの中に行き渡らせるのである。原理的にはひたすらCRCをスプレーでケチケチ吹き付けるようなモンだ。大体千キロで1リッター缶を1本消費するくらいだったから、エンジン1回転に噴霧されて燃えずに摺動部にへばり付くオイルなんてごく微量だ。
 それでもエンジンは潤滑されてチャンと走ってた。そりゃまぁ峠道とかであまりに回し過ぎると焼き付いたりもしたし、エンジン自体の寿命も4ストほど長くはなかったけど、さほど日常生活に支障はなかったのである。GP500の末期なんて500ccで200馬力近いパワーを絞り出しもしてた。市販車よりもかなりオイルは濃い目に配合してたとはいえ、基本は同じくピストンが往復する毎にスプレー吹き付けな仕組みで、だ。それでもチャンとどころか300km以上のトップエンドのスピードでレッドゾーン一杯まで回しながらギンギンに走ってたのだ。つまり、エンジンなんてそうそう簡単には壊れないのである。

 そこまで考えると、純正はどぉこぉとか、鉱物油よりは化学合成だぜとか、PAOだエステルだとか、0W−20がシャバシャバだからどぉこぉだ・・・・・・な〜んてゴタク並べるのもだんだんアホらしく思えて来た。

 これからはメーカー推奨でエンジンに合ういっちゃんフツーの純正を、サービスパックかなんかで割安に小まめに換えるようにして行こうと思ってる。

 
物凄くいいと評判のTOTALとREPSOL。お値段も物凄くいい(笑)。

https://im9.cz/、http://repsolthailand.com/より

2015.09.23

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