「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
不自由の自由・・・・・・ガラ軽時代


スズキ「ハスラー」とダイハツ「ウェイク」

 ホント、最近各社からリリースされる軽自動車見てるともぉ面白すぎる。いっちゃん元気のあるカテゴリーではなかろうか。

 スズキから出た意外なまでに本格的なクロカン要素も備えた4WDの「ハスラー」にリッター37キロと驚異の燃費性能の「アルト」、ダイハツから出たバカみたいにスペースだけを追求した「ウェイク」に合金ロボみたいなオープンカーの「コペン」、スロープ付きで小さなオフロードバイクくらいなら平気で呑み込めるホンダの「N−WGN」に小さいけど異様なまでに本格スポーツに拘った「S660」・・・・・・etc、枚挙に暇がない。全部どれも面白いと言っても過言ではなかろう。

 しかしながら一方で軽自動車は携帯電話同様の「ガラパゴス」な存在であると言われる。日本の「軽自動車」っちゅう法律のレギュレーションのみに余りに特化し過ぎてしまったため、グローバル展開が困難なのである。一部発展途上国用とかに車幅や排気量等を手直しして売ってるみたいなんだけど、あまり成功してるとは言えない。
 ちなみに、軽自動車のレギュレーションは現在は「排気量660cc以下、全長×全幅×全高が3400×1480×2000mm以下」と定められてる。この規格は過去、ドンドン拡大されて来ており、いっちゃん最初は全幅の上限はなんと「1m」だった(笑)。どう工夫しても2人が横に並んで座ることは困難である。ただ、当時から全高2000mmは一貫して変わってないので、そもそもは戦後の経済復興政策の都合で荷物を満載してリヤカー代わりに使うことを想定してたんだろう。

 いろんな税制の優遇措置もあって、軽自動車は高度成長の波に乗り、その後は地方での公共交通や農林水産業の衰退と勤め人の増加等もあって、セカンドカーとして確固たる地位を築いた。最近では怪しい南米系の外人が定員満載で載ってるのも良く見るな・・・・・・(笑)。

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 いやいやいや祖谷の蔓橋に大歩危小歩危、思えば軽自動車はそもそもの嚆矢であるスバル「360」の時代からムチャクチャに面白かったのだった。あれ、元は中島飛行機で「隼」やら「疾風」作ってた会社なモンだから飛行機のキャノピーにヒントを得たモノコック構造やら、アルミとかFRP等の当時としては画期的な素材を乗用車で初めて採用してたのである。
 エンジンだって単なるパラ2の2ストではない。何と吸気方式がクランクケースリードバルブだったのだ。ピストンリードが一般的で、ロータリーディスクでさえ珍しかった時代に・・・・・・だ。思えば、先取の気風の塊のようなクルマであった。

 対抗馬として出されたた、初代のマツダ「キャロル」も忘れがたいユニークさだ。大体、スタイリングがまずスゴい。ちゃんとボンネットやトランクがくっ付いた3ボックスのセダンの形になってる。その結果として室内スペースは殺人的に狭かったが、ひじょうにスタイリッシュだった。オマケにエンジンは空冷OHVとはいえ4気筒、リア置きで熱対策はチャンとできたのか不安になるけれど、当時としては画期的な内容だった。
 コイツの前に出された「R360」も相当にカッ飛んでイカれたクルマではあった。2人乗りに1マイルシートっちゅう割り切った室内に今見ても新鮮で近未来的なクーペスタイル、アルミエンジンを搭載し、何と驚くべきことにオートマモデルまで存在したのである。

 もちろん、リッター100馬力っちゅうハイパワー競争の発端となったホンダ「N360」やスズキ「フロンテ」、あるいは小さな巨人「ジムニー」なんかも忘れがたいが、まぁあんまりチョーシに乗って列挙しても冗漫だからこれくらいにしとく。

 ともあれその歴史を紐解いてくと、各メーカーはどこも本当に軽自動車という規格の中で目一杯何か衆目の度肝を抜くような新しいコトをやらかしてやろうとしてたことが良く分かる。

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 そんなこんなで幾星霜、今や新車販売の実に4割を軽が占めてるらしい。そらそうやわな、元々値段が安い所に優遇措置のオカゲで税金安くて車庫証明要らずで、燃費が良くて、小さい分取り回しがいいのだから。
 定員一杯だと流石に重くてマトモに走らないけど、一人で街乗りするにはまぁそこそこキビキビ走ってくれる。広さも十分だ。以前、レンタカーで軽借りて2日ほど走り回って驚いた。長い登りが続くとちょっとしんどいけど、まぁフツーに走るにはさほど不便を感じなかったのだ。
 さらには何年か前に法律の改正されたモンで、高速道路の追い越し車線走ってもお咎め無しである・・・・・・って、100キロくらいまではまだともかく、それ超えると異常にトロいし加速悪くて邪魔だから、これだけは昔のように走行車線だけに制限して欲しいとつくづく思うけどな。ハッキシ言ってジャマで目障りだし、危険だ。

 問題は鉄板薄くてクラッシュしたら紙屑のようにクシャクシャになることだろうか。もちろん、この点も年々歳々コンピュータ解析等が進んだことで改良が加えられて安全性は向上してるみたいだけど、やはり基準そのものが低く設定されてるし、何せ外寸ギリギリまで車内スペースを確保した結果、クラッシャブルゾーンっちゅう、提灯みたいになって衝撃を吸収する部分が極端に少ない。なんぼエアバッグとかを備えててもこれではマズかろう。
 現にそぉゆう事故を見掛けたことが数度ある。相手のクルマ(2リッタークラスのセダンであることが多かった)はさほど壊れてないのに、軽自動車の方はそらもう全ての衝撃は私が被りました〜!と言わんばかりの見事な壊れ方をしてた。衝撃が突き抜けたのかボンネット周りだけでなくルーフからリア周りまで逝っちゃってるケースもあった。

 だから、個人的には軽自動車を飼おうとは思わない。

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 やはりおれはクルマが好きなのだろう。どぉにも漫談ネタが続くばかりでいつまで経っても本題に辿り着かない。なもんで強引に本題に移る・・・・・・ハハハ、実は本題は短いんですよ(笑)。

 結局ここまで軽自動車が面白くなったのは、一方でいろんな優遇措置があったのは事実だけど、やはり自動車としてはひじょうに厳しい排気量とサイズの制約があったればこそではなかったか?とおれは思ってる。そしてそれはある意味人間の能力の凄さと愚かさの両方を示している・・・・・・つまり、制約があればあるほど色んな新しいアイデアを思い付き、自由を与えられると案外何にもせずに大したコトをしないという。

 この点でF1の世界と軽自動車は、方向性こそ違えとても似ているのかも知れない。
 F1のレギュレーションの細かさは軽自動車の比ではない。まぁオリンピックのルールもそうなんだけど、かなりの白人至上主義で実情はかなり恣意的かつ差別的で卑怯極まりない点も多々あって納得のいかない変更も多いのが癇に障るが、とにかくウルサい大家のアパート以上の規則のカタマリであることだけは少なくとも事実だ。
 そんな制約の中で拵えられるマシンもまた、最早ガラパゴスと言える。「走る実験室」と言われ、レースからの技術的フィードバックは市販車の随所に活かされてる・・・・・・いつの時代の話だ!?
 ハイブリッド技術はF1からか?CVTはどうだ?EVは?最近のディーゼル復権は?HIDのヘッドライトは?あんな葉巻ボディと実際のボディに空力的な共通項はどれだけあるのだ?ピレリのタイヤなんてショボいぢゃんかよ。1500ccV6エンジンが市販車にどれだけあるというのだ?どだい、F1に参戦してるメーカーが売れてる・・・・・・即ち大衆の支持を得てるメーカーか?
 そんな一般市場とは完全に遊離した世界で、街中を走るどんなクルマとも似ても似つかないクルマが狭いサーキットの中をギョンギョン走り回ってるのである。ありとあらゆる創意工夫を傾注したマシンが。

 今日はお気楽に書きトバしたいんであんまし深追いはしないでおくけれど、とにかく軽自動車を見ていると、おれは「自由からの逃走」の逆とも言える「不自由の自由」をどうしても看取してしまうのである。

 さてさて、軽が売れまくる一方で普通車・・・・・・殊に2リッター以上のクルマはハイブリッドを除くとこのところどぉにも元気がない。どぉすりゃこの苦境を打開できるのか!?

 ・・・・・・答えはカンタンだ。とっとと3ナンバーなんてモン廃止して、乗用車は2000cc・・・・・・どころか1500t以下で5ナンバーサイズまでに規制しちゃえばいいのである。シバリが入れば日本人はまたとんでもない想像力を発揮することだろう。

 
今見ても素晴らしいスタイリングのスバル「360」とマツダ「R360クーペ」

2015.04.13

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