「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
サドル考


異様なまでにでっかい穴の開いたSelle Italia”SLR Super Flow”

さらにその考えを進めたSelle SMP"Carbon"

ここまで来るとヤリ過ぎ感さえ漂うInfinity
 ・・・・・・新しく組む自転車のサドルがまだ決まらない。他のパーツは続々と到着し、狭い我が家をより一層狭くしてるのに、これだけが白紙だ。

 実はチャリのパーツの中で最も決まらないものはサドルであると言われている。それは「終わりのない旅」・「沼」とまで言われており、実際、自分の尻にぴったりフィットするサドルに巡り合える人はごく僅かで、たいていの人がもっと良いサドルはないかと日夜思いあぐね、ショップでフィッティングしてみたり、ネットのインプレなんぞを読み漁ったりしてるのである。間違いなく自転車のフレームの数より多くサドルは世の中に出回ってるのではなかろうか?

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 あんましこれまで細かいことに拘って来なかったおれでさえ、サドルだけはもう5つ目くらいになるだろうか。取り敢えず今はタイオガのスパイダーツインテール、ってのに落ち着いてる。とにかく軽量だし、穴だらけの見た目の異様さからすると意外に快適とはいえ、全然問題がないとは言えない。

 思えば何年か前にロードバイクを勢いで買って、最初はただもう色が気に食わなくって交換したのだ。黒一色って大昔のロードバイクみたいですやん・・・・・・で、色だけで選んだ。VELOか何かの安いヤツ。しかしその内、妙に分厚いのが気になって来て(ロードは薄いほど見た目的にカッコよくなる)、バズーカかなんかのクソ安いのに替えた。
 しかし、いざ装着してみるとアイヤヤヤヤ!これが思ってたより古臭いっちゅうか安っぽいちゅうか、もちょっと見た目にマトモなのが欲しくなり、ウィザードってトコの値段からすると信じられないくらい軽くて薄いサドルにした。残念ながら今は廃版になってしまったが、#2106って隠れた名作で、探してる人がけっこう多いようである。それにしても安物ばっかだな〜(笑)。
 余談だがウィザード、正式名称みどり製作所って、今はちょっとパチっぽい安物を取り扱う代理店のイメージなんだけど、元々はマッキンリーってブランドでシッカリしたオーダーバイクを拵えてたトコで、流麗なラグワークで知られる大阪の名工房・ZUNOWの流れを汲んでいる。大阪のマニアックなフレームであるエクタープロトンや岡山のペロトンは、そこで職人やってた人が興したハズだ。
 それはともかくこれ、具合も良いような気がして、今のフレームに替えてからもかなり長い間それ使ってたんだけど、最近タイヤから何から整備し直したら、どうにもサドルだけカラーコーディネートできてないのが気になって、それで色と軽さ優先で手頃なのを探したらスパイダーが引っ掛かったのである・・・・・・あ〜ダラダラした文章だな、おい!

 ・・・・・・って、ここまで読んで賢明なる読者諸兄はもうお気付きだろうが、これまでおれは尻が痛くて我慢できないから、って理由でサドルを交換したことがないのだった。色と見た目と重さと値段、それだけでほぼ決めて来ている。ミーハーもいいトコなんだけど、逆にそもそもそんなに痛くなる人って一体全体どれだけドッカリ腰かけてるんかな?って思ってる。
 そりゃまぁ何ヶ月も乗らずに久しぶりに乗ると、坐骨辺りがいささか痛くなるのは仕方ないことなんだけど、一晩も寝れば治るし、その後はすぐに慣れてしまう。それにはワケがある。

 昔、初代金満号であるビゴーレを拵えた時に、先代のカタオカのおっちゃんにサドルについて教わったのだ。その教えを忠実に守ってるのである。
 その時はイデアル#90、って、当時ちょっと気の利いたランドナーといえば定番中の定番だったサドルを付けたんだけど、これがもうとにかくカッチンコッチンに硬い。クッションのクの字もない硬さだった。そりゃ当然っちゃ当然で、ブリキのフレームに分厚い革をリベットで留めてあるだけ。パッドもバネも何もない。現行品ならブルックスのサドルなんかを想像していただければお分かりかと思う。それまで乗ってたユーラシアには黒いサドルが付いてたが、安物とはいえスポンジくらい入ってた。
 またまた余談だがこのイデアル、製造元のツブれた今はプレミア付きまくりで、オークション等では気の遠くなるような値段で取り引きされるサドルになっちゃった。
 閑話休題・・・・・・で、不安に駆られたおれはおっちゃんに、こんなに硬いので長距離をホントに乗れるのかを尋ねたのだった。答えは実に明快である。

 ------あのな〜、サドルはそんななぁ、座るモンとちゃうんや。
 ------は!?
 ------尻の位置を決める程度。体重載せたらアカン。
 ------立ち漕ぎするんですか?
 ------いやいやいやいや、立つんとも浮かすんともちゃうけど・・・・・・こぉ、軽〜く置くカンジやね。

 さらにこのおっちゃんの主張によれば、ハンドルにしたってそんな四六時中グイグイ握りしめるものではなくて、手を添えるだけでいい、っちゅうのである。急坂を登攀したり、下りでスピードが乗るときならともかく、淡々と走るんならそんなシッカリ握る必要はない、と。????えっ!?えっ!?そんなん、どこで支えてバランス取るんねん!?
 その時は判じ物みたいに思えて良く分からなかったのだが、いざ出来上がったチャリで何日も何日も走ってるうちにおっちゃんの言わんとする意味っちゅうかコツみたいなのが何となく分かって来た気がした。要は足にちゃんと体重を乗せろ、ってコトなんだろうと思う。今の流儀とは違うのかも知れないが、そんなこんながあって、おれはあんましちゃんとサドルに座らなくなってしまったのだ。

 ちゃんと座らなければ尻が痛むはずもなく、何十日かをそれでフツーに走った。ただのジーパン切ったの穿いてるだけで、パットも何もなかったけど問題は起きなかった。それでもそれなりに体重は掛かってたようで、いつの間にかサドルにはクセが付いて尻にフィットしてた。おれだけではない、周囲の連中も大体そんな感じだった。思うに、今は情報が氾濫し過ぎてみんなナーヴァスになり過ぎなのかも知れない。

 随分途中の話が長くなってしまったが、現在装着してるタイオガ・「スパイダーツインテール」の問題、とはつまり座り心地なんかではない。実は耐久性がとても低いのである。何せ樹脂が剥き出しなんで、紫外線の影響で早ければ1〜2年で劣化して割れて来ると言われている。決して安くはない買物なんだしちょと勿体ない。それがケチなおれには厭なだけだ。尻へのフィット感はまぁこんなモンだろう、っちゅうか良く分からない。1日10時間くらいは乗ってられるんだから問題ないんだろう。

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 随分とアバウトかつテキトーに書き散らしたけど、サドルが原因の障害は実際に起きてるらしい。血行障害による下半身の痺れ、排尿障害、性機能不全等である。そらまぁ所謂「ウラスジ」とか「蟻の門渡り」っちゅわれるあたりがギュウギュウに押し付けられたり、ギャップ踏んでガンッッ!ってなったりするするのだから、さもありなん、って気もする。女性もまた例外ではなく、不感症になったりするんだそうな。あんましサドル細いと食い込むかも知れんし(笑)。
 この問題にはサドルだけでなく、ハンドルの高さも大いに影響しているらしい。ハンドルを低くした強い前傾姿勢だと、よりギュウギュウに押さえつけられるんだそうな・・・・・・って、ちょと骨盤立て過ぎなんぢゃね?
 おれはかなりハンドルが低めなんでいささか心配になったが、良く考えたらおれの手はかなり長いのである。一般的な袖の長さだとツンツルテンになってしまい、ワイシャツになかなか合うサイズがなくて苦労してるくらいだ。それにそもそもそんなに下を持たないんだった(笑)。だから大丈夫だろう、恐らくは多分メイビーパーハップス、っちゅうヤツで。

 いずれにせよ自転車にウツツ抜かしてチンコ勃たんようになっては一大事だ。えっちも出来んようになってしまう。それは避けたい。

 しかし、誰にでもフィットするサドルなんて一意の解はない。ドーナツ状に穴開いてたり、左右が完全に独立したアナトミカルな作りでもそれは言える。なぜなら言うまでもなく人の体型や骨格、そして乗り方も千差万別だからである。骨盤や坐骨、また尾てい骨の大きさや開き方・・・・・・それこそチンコやマンコだって人それぞれだ。だから「上付き・下付き」なんて言われるのだ。
 結論は、余程のことがない限り、人間様の方で合わして上手く付き合ってくしかないように思う。

 だから今度も見た目重視で選んじゃうんだろうな〜(笑)。セライタリアかフィジークかはたまたサンマルコか、プロロゴはあまり好きぢゃねぇなぁ〜、スチールに革サドルとかはクサ過ぎるからセラアナトミカもブルックスもないなぁ〜、SMPはいくら何でもちょと異様だな・・・・・・嗚呼、かくして肝心のサドルは今日も決まらない。


一貫して穴あきに対して否定的なFi'zi:kの名作"Arione"

穴あきもラインナップされるがあまり熱心ではないSelle San Marco"Aspide"

2014.05.25

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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