「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
如何なものか!?


CERVELO"R5"

 暖かくなって来たので再び近所の川沿いのサイクリングロードを流すようになった。家から大きな休憩スポットまで往復して60kmくらいなので、調子良ければ2時間台で戻って来れる。早起きすれば買い物DAYで出掛ける前でも一汗流すことが出来て都合が良い。 冬はひたすら縹渺たる枯野が広がりまことに殺風景で、北風も強く、走ってても気が滅入るばかりなのだけど、それ以外の季節は沿道に咲き乱れる花を眺めながらなので、爽快感がある。

 アルミフレームの脆弱さに懲りて、長く使えそう、ってコトでスチールフレームに入れ替えて部品はゴッソリ移したんだけど、あまり素材による差は感じない。バネ感がどぉこぉウィップがどぉこぉとか言われるけど、ドクター中松のジャンピングシューズぢゃあるまいしビョンビョンするワケではない。鈍感なおれにはあんなん誇大広告にしか思えない。
 強いて言うなら何となく身体に伝わる振動にミュートが掛かったような気がするかな?っちゅう程度であるが、ぶっちゃけ安物から上等のタイヤに履き替えても同様の感覚はあるんで、あまり大きな差異ではなかろう。舗装の荒れたところは当然ガタガタするし、別に上りでもがいたからってリヤステーが暴れるコトもない。大体そんなん今時粗悪なママチャリでも少ない、っちゅうねん。

 まぁ、要は一言で言ってフツーっちゅうかそれほどの違いはないのである。おいおい!「上等の絨毯の上を滑るような感じ」って誰のタワ言だ!?
 GT−Rとリッターカーでは明らかに走行性能に差があるし、ZZR1400とスーパーカブだって圧倒的に違いがある。それはつまりエンジンやシャーシ、パワーウェイトレシオが違うからだ。
 しかし、チャリは人間の脚力が動力源で、パワーウェイトレシオを決定する要素の大半はその体重が占めているワケで、人に依存する部分が大半な上に、そんなフレームに大きな差があるワケでもない。

 結局、体力自慢の高校生の乗るママチャリと不摂生でデブデブのおっさんが乗るフルカーボンのロードバイクなら、前者の方が圧倒的に速いっちゅうコトになるワケだ・・・・・・いささか哀しいことだけど(笑)。

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 さてさて、近所のサイクリングロードでも年々歳々走る自転車の数は増え続けており、今では場所によってはすれ違うのも難渋することがあったりするくらいの大盛況だ。休憩スポットにはついに、鉄パイプにサドルを引っ掛けてぶら下げて停めるタイプの駐輪場まで出来た。そこでジュースを飲みながらボーッと次々に現れる自転車乗りの連中を見ていていると、何だか可笑しくなって来た。実に滑稽な光景である。

 まずはやっぱし成金系のバイクが見てていっちゃん面白い。チャリ本体だけだとあんなにも機能美溢れてカッコいいのに、乗り手といっしょだと滑稽極まりないのが多い。走ってる途中に見かけたのも含めて列挙してみよう。

 サーベロR5にコスカボかませたおっさん。オマエ今からレースに出るんか?っちゅう感じ・・・・・・ってーか、公式サイトのカタログフォトそのまんまやんけ(笑)。そいでもってご本人の体型については、ここは言わないでおこう。一つだけ真面目な話すると、こういった舗装が必ずしも宜しくないサイクリングロードに決戦用ホイールはぶっちゃけ危険ではないかと思う。カーボンスポークなんて切れたら一発でアウトなんだし。
 キャノンデールのスーパーシックスEVOにレーシング3のおっさん。コンポはマニアックにスラムだ。しっかし、何キロ走ったのか知らないけど、こんな過ごしやすい日に平野の真ん中のここでなんでそんなにブクブクの腹で苦しそうな息してるのか!?
 タイムと並ぶハイエンドカーボンの総本山、ルックの異様な最新モデル675に何だかんだいかついパーツつけたおっさん。そこそこスリムだし、速いのはいいよ。抜かしてくれるのもいいよ。とてもいいことだ。速く走るのが身上の仕様なんだし。でも、しょっちゅう休憩しててチンタラ走るおれに抜かれるっちゅうのはどぉゆうこっちゃ。ウサギとカメか?ゼロヨンでも一人でやってるのか?
 デローザのキング3RSにフルカンパっちゅう泣く子も黙る金満仕様で、ビシッと決めたショップの派手なジャージ、シャカシャカと高いケイデンスも今風だ・・・・・・が、ヲイヲイ!肝心のスピードがサッパリではないか。だらけたお散歩のカッコで贅肉だらけのおれがジレて抜かすくらいだから推して知るべしだろう。
 クワハラGAAPやアレックスモールトン等のハイエンドミニベロにこれでもかとばかりにカーボン系パーツを突っ込んだ仕様のおっさん集団も依然として多い。彼らの特徴に「群れる」、ってーのが挙げられるだろう。まぁ好事家同士で牽制しつつ自慢し合いたい、って歪んだ心理が働く結果かもしれない。単独行がとにかく少ない。それはともかく行き帰りの道中、写真撮ってるとこは見掛けたけど、走ってるトコを見なかったのはどぉゆうワケだ?

 彼等を見てると自転車で痩せる、っちゅうのはマヤカシの妄言ではないかとさえ思ってしまう・・・・・・そらまぁ、どれもコスプレの一種だってコトは良ぉ〜く分かってんだけど、やっぱ綺麗なコのコスプレの方が美しいに決まってるの人情なワケで、これらのオヤジたちのザマはまるで、新宿二丁目のトウの立ったオカマや女装クラブに集う人のようでグロテスクで不気味だ。

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 相変わらずドロップハンドルは下を握るものだと思い込んでる人が多い。不思議なことにまず間違いなく強スローピングのフレームでショートリーチショートドロップ、っちゅうんですか、クルンとなった部分の小さいハンドルのチャリに乗ってる人だったりする。コラムスペーサーは全部挟んで、あまつさえご丁寧にアヘッドのステムも上向けに付けてたりするもんだから、下握ってもまぁサドル面と同じくらいの高さになってる。

 おれがもうオールドスクールな人間で、今様なセッティングの出し方はこれなんかな?って気もするんだけど、とにかくおれがかつて習ったハンドルの高さは大まかに言って、ランドナーやキャンピングで大体サドル面の高さとハンドルの上の部分との落差がフラット〜プラス2cmくらい、ロードでマイナス5〜10cm、競輪等はもっと低くってな感じだったと思う。それで大体いい感じに猫背になるって寸法だ。これは単に巡航速度の高い低いだけでなく、ホイールベースの長さにシートフレーム角やキャスター角、トレールなんかが影響した結果、必然的にそんな感じになるんだ、って聞いたような記憶がある。
 少なくともここでポイントなのは、上体がどれだけ寝てるかはともかく、背中はどのタイプに乗ろうが猫背気味になってる、っちゅうコトだ。当然、目つきはランドナーでもやや上目遣いになる。オートバイだってこれが標準的なフォームだろう。

 なのになのに嗚呼それなのに、下ハンオンリーで握られる方の多くは全く逆で、まことに奇妙なエビ反りの姿勢で、アタマが完全に直立しっちゃってるのである。オマケにサドルの位置も妙に前だったりする。立ち漕ぎはともかく、普通に漕ぐときは少し腰を引いてペダルを回すもんだと思うのだけど、今の流儀はどうやら違うらしい。
 そらまぁ乗りやすけりゃ何だって構わないが、時代遅れなおれとしてはどぉにもへっぴり腰に見えて、やはり奇異の念を抱かずにはおれない。

 おそらく、ママチャリのポジションが基準になってこのような異様なスタイルが出来上がったのではないか?っておれは愚考している。ご存じのとおり、日本で独自に発展したっちゅう点でママチャリはケータイ並みに特異でガラパゴスな存在なのだけど、寝かせ気味のシートフレームやキャスターに、ひじょうに身体に近く・高くセットされたハンドルが特徴である。結果的に上体はほぼ直立になる。もちろん頭も立っている。そんなのに永年乗って来た人が急にロードバイク買ったりすると、モノ凄い前のめりでおっかないもんだから、ついついこんな感じになるのではないか?と。だってママチャリフォームで前傾姿勢になってくとちょうど下ハン握りな人たちのフォームになるんですよ・・・・・・ま、何度も言うが、それで本人がラクならそれはそれでいいんだけどね。

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 如何にもな雰囲気を漂わせたヲタク系の人がチャリで流してるのも見かける。いや、ヲタだって乗っていいんだよ。それは全然否定しない。ただ、ヲタクはヲタクとして人生を賭けるべき目的があって、そのために他の全てに無頓着、っちゅうのがそもそもの由来ではないかと思うし、よって自転車なんてモンは日常の足以外の何物でもなく、得体のしれないサビサビのママチャリやMTBルック車みたいなんに乗るもんだとばかり思ってた。

 ところがよくよく観察してると意外にそうでもないのである。大半はクロス車みたいなんとはいえ、時折、絵に描いたようにヲタな風体の人が、ケッコーなロードバイクやMTBに乗ってたりするのだ。

 これがナカナカ興味深い。観察してるとどうやらブランド志向は最初に上げた金満系のオヤジより素直、っちゅうか保守的、っちゅうかベタで分かりやすいのが特徴だろう。ロードではコルナゴやフェルト、国産ではアンカーあたりの安いアルミモデル、MTBだとトレックやGTなんかが多い。ジャイアントやルイガノは裾野が広いのも手伝ってるだろうが、かなり見掛ける。ただ、これらは趣味で乗ってるのか、単に足として購入したのかが分かり辛いが、「それなりに名の通ったブランドの廉価グレード」っちゅうのがポイントだろう。
 ヲタとピナレロの取り合わせは何故か見なかった。話はそれるが、ピナレロは乗ってる人が恥ずかしいブランドの最右翼だろうと思う。いい自転車なのにユーザーが台無しにしてるっちゅう珍しいケースだ。

 閑話休題、ヲタクが趣味性の強いチャリに、いかにもヲタクな風体のままで乗ってる理由をあれこれ想像しては見たのだけれども、結局イマイチ良く分からない。考えずに買うにしては高い買い物なワケで、やはり何らかの意図を持って購入してるんだろうとは思う。誰かこのワケをご教授いただけるとありがたい。

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 気付くと日が翳って来て、遠くに雲が広がっているのが見える。春とはいえまだまだ三寒四温で、急がないと急にパラッと来るかもしれない。そろそろ引き返すことにしよう。

 それにしてもサイクリングロードのたかだか数時間の走りにも、マンウォッチングっちゅう隠微な歓びがあったりする。そんなおれも畢竟「如何なものか」な存在ではあるな(笑)。


最廉価のCOLNAGO"STRADA"

2014.04.07

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