「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ゴンドラばびゅーん!


ゴンドラ内からのショット。

 今年もまた、本格的なウィンタースポーツの季節が到来した・・・・・・ったって、普段の生活で雪は少しも嬉しくない。邪魔で鬱陶しくて危険なだけの存在だ。あぁ、つい先日も同じ事書いたっけ。繰り言が多くなるのは老化の証だわ。
 それはともかく、ぶっちゃけ思う。ゲレンデまではカンカン照りの夏で、アロハか何か着て行けたらどれだけラクだろう、って。

 大体においてゲレンデは山の高い方にある。だから往路は坂道を登り、復路は坂道を下らにゃならん。当然ながら凍結してるので滑る。つい一昨日もキロロからの帰り、急な下り坂でクルマが滑りまくって全く止まらなくなって、仕方なしに路肩の雪山に突っ込まざるを得なかった。前日に積もったばかりの雪だったおかげでクルマは壊れることも、傷が入ることさえもなく済んで胸を撫で下ろしたのだけど ホント間一髪だった。そらまぁ、道路が凍り始める時間まで目一杯滑って、さらには下りなのに横着かまして1速まで落とさず走ってたおれが悪いのだけど、マジで焦った。

 そんなんだから以前のように難行苦行で出掛けてくのはもう懲り懲りだと思ってる。ゲレンデでもなるだけラクしたい。コンフォート、メロウ&スムースでっせ。バカみたいにハイクアップなんてアウトオブ眼中だ。
 それが、スポーツが本来持つストイックな求道性からは随分外れた、とてもふざけた考え方だっちゅうことは良く分かってる。でもねでもねあのねあのねあのねのね、スポーツである以前にこれはレジャーなんっすよ、やっぱ。

 そもそも原初のゲレンデにはリフトなんて気の利いたものはなかった。1本滑っちゃ板を担いで登りを繰り返してたのである。国内に現存してるトコがどれだけあるのかは知らないが、目下仮寓する札幌だと、定山渓三笠スキー場っちゅうのが未だにそうだ。見たところただの真っ白な小さなスロープに過ぎない。営業してるのかどうかも知らない。札幌国際に行くときに横を通るけど、客が滑ってる姿を見たことがない。そもそも圧雪してるかどうかも不明なんだけど、それでもまぁ灌木や雑草は刈ってるみたいだし、ヤル気なくはないのだと思いたい。ともあれ、アメニティの進化した現代にあっては化石のような存在と言える。逆に、滋賀の赤子山スキー場みたいにリフトを廃止したにもかかわらず、それでもしぶとく営業を続けてる奇妙なトコは例外中の例外だろう。

 ゲレンデにやはりリフトは不可欠だ。今日はそんな気楽な話。

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 もっとも基本的なリフトはやっぱポニーリフトだと思う。正式名称はロープトゥーと呼ぶらしい。もう少し仕掛けの付いたTバーリフト、っちゅうのもある。ポニーは回るワイヤーからニョキニョキ棒が生えてて、そこに掴まって滑りながら登ってくのだ。距離は笑えるほど短いものが多くて、今はほとんど見かけなくなってしまった。おれがスノボにハマり始めた頃、地味なゲレンデの多い但馬界隈でも既に現役で残ってるところはほとんど無くなってた記憶がある。そもそもあってもあまりにショボく、乗る気にはなれなかった。15年ほど前、岩手・雫石に行ったとき、山のてっぺんにあるのを見付けて乗ってみようと近付いたら、とうの昔に廃止されたみたいで残骸になってた。それが自分で見た最後かもしれない。
 ポニーについては雪国生まれのヨメの方が詳しい。意外に掴まるのに握力が必要で、力尽きると後ろの人にぶつかってみんな将棋倒しになったとか、馬力が足りなくて動かなくなったとか、随分とナサケない代物だったらしい。
 Tバーリフトは残念ながらまだ実見したことがない。ワイヤーから伸縮するロープに繋がってぶら下がる逆T字型のフックに尻を引っ掛けて滑ってくもので、どちらも足が地についてるところが、通常のリフトと根本的に異なってる。

 その次はシングルリフトだ。今から思えばあれってスノボ乗りには優しかった。四角い座面から小さな背もたれと鋼線に繋がる棒が1本生えてるだけなので、横向きに座ることが出来たからだ。椅子はたいていただの、そして時折ささくれ立った分厚い合板で、特に尻の形に合わせた窪みや手すりのバーなんかも無く、ズーッと乗ってると膝の内側に座面の板が当たり続けて痛くなったりしたものだ。しかし、空いてれば乗り場に滑り込んでって、ポンと座れたりなんかしてとても具合が良かった。
 欠点はスピードがとにかく遅いことと、距離の短いのばかりでどうにも回転が悪いことだったが、空いてて行列なければビンディングの付け外しなしにいくらでも滑れるので、結構本数を稼げたように思う・・・・・・って、乗り場のオッチャンが黙認してくれたからこそ出来たワザであったので、良い子のみなさんは注意しましょうね。
 これも現在ではとんと見かけなくなってしまった。しかし、ちょっと寂れたゲレンデで、陽が傾きかけ、客の姿も減った頃に乗ってて、支柱の滑車を通り過ぎるタタタタンという軽やかな音を聞くと、何とも言えない侘び寂びを感じたものだ。ししおどしみたいだな(笑)。一言で言ってアジがあった。

 ペアリフトは今もまだまだ現役で使ってるところが多い。ロマンスリフトなんてぇ小っ恥ずかしい呼び名もある。アベック(←死後)で乗れるっちゅうコトだろう。要はシングルの座面が二人掛けになったものだ。だから座るときに身体をひねらなくちゃならず、シングルよりも座りにくい。特に混雑してきて知らないスキーヤーと隣り合わせに乗せられるときなど、相手の板に当てて傷なんかつけないだろうかと神経を使う。
 座った後、転落防止用に手で降ろす気休めのようなバーが付いてることが多く、そんなもんおれ的にはどぉでもいいのに、横の人が生真面目だったりして律儀に降ろそうとしたりするのも何となくめんどくさい。どんな理由からか、座面にはオレンジ色のウレタンが貼り付けられてるのばかり見掛ける。ちなみにこれも馴れると板外さずにひょいと乗り込める。

 この辺くらいまでは大体どこもワイヤーに椅子が固定されてるタイプだ。つまり登ってく速度のままで搬送椅子は自分のところに回ってくる。一方、3人乗り以上になるとデタッチャブルの高速タイプが主流になってくる。デタッチャブル、すなわち取り外し式、ってことで、これは乗降場のところで搬送器が高速に回るワイヤーから外れて、別のゆっくり動くコンベヤみたいなんに移し替えられるのである。
 ある程度の規模のゲレンデの中央リフトなんかは今はもう殆どこのタイプになってる。乗り降りするときはゆっくり動いて安全だし、スピード速くて輸送能力高いし・・・・・・で建設コストはかかるんだるけどすっかり主流になった。
 かつて毎年出掛けてた菅平のように3人掛けトリプル主体のところはワリと少なく、ほとんどが4人掛けのクワッド、ってタイプだ。ただ、速度が出る分風があたると寒い。
 そんなんで、高速リフトには自動開閉する風除けの手すり付フードが装備されてることが多い。ワイヤーに乗り移った瞬間にボテーン、って感じで降りて来る。座る位置が良くないと、手すりが頭の上に来て押さえつけられたりしてひじょうに間抜けなことになる(笑)。、菅平なんて修学旅行やスキースクールのメッカで初心者だらけなもんだから、アテテテ〜ッってなってる姿を良く見かけた。

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 人間の欲は果てしない。

 さらに上行くのがゴンドラである。ゲレンデが大型化し距離が伸びて来ると、なんぼフードで覆われてても吹きっ晒しは辛い。なもんでカプセル型の搬送器、ってことになるワケだ。こうなって来ると仕掛けが大掛かりな分、定員数は6人以上となってくるし、乗るには一旦板を完全に外して乗り込まなくてはならない。

 ・・・・・・でもさぁ、これがもぉめっちゃラクなんですわ。快適なんですわ。

 リフトだと原則的には片足のビンディングを外してでないと乗せてくれない。また、外して手に持っても乗せてくれない(稀に認めてくれるところもある)。しかし、片足を外して板をブラブラさせてるとこれがけっこう疲れるのである。だから外した方の足の上に板を乗せたりするんだが、やっぱそれでも両足に固定してるよりは疲れる。そもそも軸足側がビンディングのベルトで締め付けられっぱなしなのがいけないみたいだ。

 加えて距離が長い。リフトだと何本も乗り継ぎ、それもその度にビンディング付けたり外したり、ひどいときにはちょっと上まで板引きずってハイクアップしたりの乗り換えでようやっとゲレンデトップなところを、ゴンドラならば両足完全にフリーで、さらには外気から遮断された空間で少なくとも10分くらいはボーッと過ごせるから充分に寛げて、んでもってドアが開けばもう、山のてっぺんである。混んでて定員一杯詰め込まれると異常に窮屈なのが難点のど飴くらいなもんだ。

 そしてこれが最大の長所なんだけど、一気に上がっちゃう分とにかく滑走距離が稼げる。3,000mくらいは当たり前、ヘタすりゃ5,000mくらいの距離のところだってかなりある・・・・・・まぁ、ほとんどは超どフラットな緩斜面でマトモに滑れないのが大半ではあるが(笑)。スノボで何がめんどくさいって、座り込んでビンディング付けるのがいっちゃんめんどくさい。だから一度滑り始めたら、なるだけ長距離を滑り降りたいのだ。

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 気付けばいつしか、ゴンドラの備わってないゲレンデにまったく行かなくなってる自分がいる。もとい、メインが高速クワッドとかでさえもめんどくさくなってきてる自分がいる。どこまで堕落すれば気が済むんだ!?って!?昨シーズンにしたって最初のFu’s以外はみんな、メインがゴンドラのトコばっかだった・・・・・・あ、テイネのアレはちょと詐欺だと思ったが(笑)。
 とにかくゴンドラばびゅーんで一気にゲレンデトップに登ってしまえば後は降りるだけ。煩わしさは全くない。

 さてさて、今冬は新たにどこに行こうかな?腰痛再発しなけりゃいいんだけど・・・・・・。


大きくなった息子と

2012.12.09

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