「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
もう一度、走る。


ホリゾンタルの例(PINARELLO "DOGMA FPX")

強スローピングの例(SPECIALIZED "SEQUOIA")

 まぁ「、」は「藤岡弘、」の「、」、「。」は「モーニング娘。」の「。」みたいなもんだな。ちょっとばかし強調してみたのだ。俄然猛然ヤル気が湧いてきたのだ。

 実を言うと、しばらくチャリをサボってた。3年ほど前に買ったフルアルミのロードはそんな上等でもなんでもなかったんだけど、弱スローピング(トップチューブが前上がりになってること)のフレームも割とスタイリッシュで気に入ってた。おれはジャイアントに代表される強スローピングは大嫌いなのだ。チョコチョコとサドルやホイールなんかも交換したりして、見た目的にはかなりエキセントリックでいい感じにもなってきてた・・・・・・それが、だ。

 まだ数千キロしか乗ってないのにフレームが破断したのである。

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 ある日、ロングライドに出てて、何だか急にフレームのしなりが良くなったような気がした。分かる人には分かるだろうが、アルミフレームはそんな簡単にしなったりはしない。それだけでなく、ほぼ同時に踏み込んだときにギチギチというようなカミキリ虫が歯噛みするような音が微かにし始めた。それで不安になって道端であちこち調べたら、トップチューブとシートチューブの溶接部分の外側がパイプに沿うようにして塗装が剥げている。見たところヒビらしきものは見えないので取り敢えずは騙し騙し家に帰って、そこでもう一度見たら髪の毛よりも細い亀裂が広がり始めてるように見えた。その辺りをグッと押すとミキミキと軋む。
 噂にアルミは破断する、と聞いてはいたが、どうやらそれはホンマの話だった。6061アルミはそれでも7005アルミよりは持つなどと言われるけど、完全に俗説やね・・・・・・って、大体値段からすれば妙に軽く(8キロちょっと)仕上がってる分、フレーム弱いかもしれないってことに気付かなかったおれがアホなのである。しかし、破断したこと自体ではさほどめげなかった。

 ヤル気をなくしたのはそっからだ。買った自転車屋に早速連絡して症状を伝えると、すぐに持って来てくれと言われた。だからすぐに持ってった。もちろん即入院だ。代理店に調査に出すんでしばらく預かります、と言うもんだから、おれは店員の言葉に素直に従ってそのまま預けた。おれの取った行動は多分間違ってないと思う。
 2週間くらいして自転車屋から再び連絡。そしてここからが急にややこしくなる。自転車屋とのやり取りをちょっと書いてみよう。

 ----先日の自転車の件なんですが・・・・・・。
 ----あ、ども。結局あれはやっぱフレーム割れてたんですか?
 ----いえ、それは良く分からないとの回答です。
 ----え!?それ調べるために代理店で回収したんぢゃないんですか?
 ----(遮るように)で、それでですねぇ・・・・・・。
 ----(既にこの辺でハラ立ち始めて)何ですか?
 ----代理店としましてもお客様に気持ちよく乗っていただきたいということで、交換ということで話が来てるんですが。
 ----(何か話が美味過ぎるなと訝みながら)同じフレームなんですか?
 ----それはもう在庫がないってことで・・・・・・。
 ----!?何になるんですか?
 ----****の****ってモデルです。今までのフルアルミと違ってリアカーボンです。
 ----何だか釈然としませんねぇ。私としては調査の結果を教えて欲しかっただけなんですけど。
 ----それは分からない、って回答なんですよ。
 ----(分からないワケあらへんやんと思いつつ)ふぅ〜ん・・・・・・。
 ----・・・・・・で、それでですね、一応パーツも含めた車体全回収で新品交換ってことでお願いしたいと。
 ----ちょっと待った!それってティアグラとソラの寄せ集めやん。ブレーキはテクトロだし。何で105のセットがそれに交換なん!?
 ----でもまぁ新車ですし、購入当時の価格と比較しての結論です。
 ----私は別に新車に交換してくれなんて頼んでませんよ。
 ----だからそれはお客様に気持ちよく乗っていただきたい、ということで・・・・・・。
 ----正直、ものすごく不愉快です。
 ----そうですか!?
 ----だってそうでしょ?こっちは調べてくれって言っただけで、そっちの都合で勝手に交換だのデグレードでは納得できんでしょ。
 ----いや、まぁお客さんの買われたモデルはそれなりのグレードのものなので・・・・・・
 ----(ブチ切れて)高い金出したらもっとマトモに相手したるってか!?安いたって10万円からするもん高額商品でしょ、普通!?
 ----そういう意味ではなくて・・・・・・
 ----ぢゃぁどぉゆう意味なんだよっ!?
 ----代理店も1年以上経ってるし、通常は交換なんかしないんですが、出来る限りの誠意をってことで。
 ----恩着せがましく言うな!!大体おれはそんなこと頼んでない。
 ----一体どうすればいいんですか?
 ----(こっちが訊きたいわい!)ぢゃ、もういいです。元のまま返してください。
 ----それは出来ないとのことです。
 ----何でですか?そっちに何か後ろ暗いことがあるんぢゃないですか?
 ----いや、まぁ、その・・・・・・代理店の方の回答がそうなんです。それと、車体もう送ってしまってるもんで・・・・・・。
 ----分かりました。ならば、パーツは今のを全部移植するよう代理店にやらせてください。それでなかったら認めません。
 ----・・・・・・代理店に確認してみます。

 正確には何度かのやり取りがあったのを一つにまとめたのだけど、中身的に面白おかしくは脚色はしてない。だってクソ忌々しくありこそすれ、面白くもなんともない話なんだもん。
 それはさておきこれって、ハラ立てるな、って方がおかしいっしょ!?何が「お客様に気持ちよく乗っていただきたい」だ!?おれはこんなに怒ってるのに。単に代理店は証拠隠滅で自社製品の脆さを揉み消したかっただけ、店は有力代理店との取引切られたくないからその走狗になって、客の無知に付け込んで丸め込みたかっただけ、それだけやんか。ところがどっこい、おらぁ見た目からは想像つかないほどスペックについては耳年増なんだよっっ!!

 やってきたのは激スローピングのいっちゃんおれの嫌いなタイプである。MTBか!?おまけに何だかサイズが一回り大きい。それに何が「リアカーボンですから」だ!?フツーにフルアルミやんけ。ホント破断部分の写真を詳細に撮って、対応ぶりも含めて消費者相談センターに送ってやれば良かった。

 誤解なきように申し上げると、おれは別に新しくフレームだけ買っても全然良かったのだ。10万かそこいらで手頃なフレームはいくらでも売ってるし、そのうち鉄系のプレーンなフレームにパーツ類を全部スワップしようとも目論んでた。保証期間が一年ってことだって百も承知だし、別に病的クレーマーみたいにネジ込んでタダで新しいフレームゲットしようなんて思ってもない。ただもうヤツ等の言うことをハイハイと素直に聞いてたら、勝手に一方的な理屈振り回されてどんどん変な方向に捻じ曲げられただけである。ま、顧客ニーズの読めないバカな青二才の店員のお陰で、この店は立ったかも知れない売り上げを確実に損したワケだからそれはそれでいいし、それにそもそも論で言えば、パーッと思いつきで現品売りのロードをあまり考えずに買ったおれが悪いんだけど・・・・・・。
 いずれにせよこれが首都圏中心に多数の店舗を構える名の通った大手販売店の実態である。ま、小さい専門店でもひどいところは多いみたいだから、業界全体の問題なのかもしれない。

 そんなこんなでクサクサした。居間に鎮座する強スローピングのフレームを見るのも気鬱だった。そうしておれはチャリに乗らなくなってしまった。

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 しかし、自転車そのものに罪はない。単なる2つのコマのついた人力のささやかな道具である。そしておれはそんなプリミティヴな機械であるチャリが好きなのだ。交換されて戻ってきたそいつも何とか好きになろうと努力してみたし、ポジション出しだってシッカリやり直してみたのだが、どうにもトップチューブがびよ〜んと長く、妙にアップライトでコンフォートなフォルムはマヌケに見える。どれだけハンドルスペーサー抜こうが馴染めなかった。そうなりゃもう答えは一つだ。

 フレームをスワップしてパーツを全部移植するのだ。

 アルミは金輪際ご勘弁だし、中途半端なカーボンをフレーム単品で買うくらいなら完成車買った方が遥かに安いだろうし、ハイブリッドは何ともどっちつかずだ。ならば初志貫徹で鉄しかない。クロモリだ。これならおれの大好きなホリゾンタル(トップチューブが水平の古典的な形)が未だに一般的なのも好都合だ。重い、錆びる、古臭い、おっさん、保守的・・・・・・と嗤わば嗤え。
 また、デブデブと自嘲するほどではないとはいえ、やっぱ体重軽くはないから薄手軽量のパイプ使った高級品よりむしろレイノルズ520やカイセイ022、タンゲ#2みたいなゴツいパイプの普及品の方が頑丈で好適だろう・・・・・・ってことは安い方がむしろいい。大体、パーツパーツゆうたかて所詮105である。これがアルテとかデュラならもっと拘る気にもなろうが、10速の普及品だ。割れ鍋に綴じ蓋、っちゅうかそれなりでエエやんか。アヘッドステムが入って色が遠目にも分かる個性的なものでさえあれば、後はどぉだっていいんだ。

 決まると行動はやたらと迅速なおれである。決心した数日後の休日にはもう自転車屋に行って見積もり取ってた。で、何軒か回って雑費コミコミで手頃で親切そうなところに発注をかけた。色はホイールとの組み合わせを無視したようなド派手なのを指定した。派手ついでにタイヤもこの際入れ替えてしまおう。バーテープも巻きなおそう。そして気分一新でも一度、走ろう。

 ・・・・・・問題が一つだけあった。

 受注生産なので即納は無理で、入荷にけっこう時間が掛かりそうなのである。春までには出来上がるかな?ワクワク♪


まぁ、このクラスのヤツっす。

2010.01.27

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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