「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
試案、ロードバイク野宿


古典的フロントバッグの名品、オーストリッチ(OSTRICH)「F−702」
容量は15リッター近くあるが、ロードでは取付が厳しい


 いろんな制約条件が付くとはいえ、夏の徒歩野宿は30リッター弱のザック一つありゃ十分可能であることを以前実証した。冬でもまぁ平地なら45リッターもあれば可能であることも実証できた。
 ぢゃ、ロードバイクではどうなんぢゃい!?っちゅう命題について・・・・・・っちゅうたって誰かから出題されたワケぢゃないけれど(笑)、あーでもないこーでもないと検討した記録が今回の内容である。やりたいことはやりたいんだが、どだい可能なんかいな?と。
 無論、この「ロードバイク」がエンジンの付いたものでないことは言うまでもない。件のタイヤの極端に細いチャリのコトだ。

 いやはやしかし、縮み指向もここまで来ると、我ながら病膏肓の感があるな〜(笑)。

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 持ってく荷物については、従来の2本足野宿行と基本は大差ない。テント・マット・シュラフ・雨具、着替えにタオル・洗面具、あとはデジカメやケータイって小物類だろうが、これにさらにチャリ特有の荷物が加わる。すなわち予備チューブ、パンク修理セット、工具、列車移動もあるから輪行袋やエンド保護金具・・・・・・これらを合わせると何のかんので歩きより3〜4リッター余分に増えてしまう。ウルトラライトな旅をする上で、徒歩は実に偉大な移動手段だ、ってーのが改めて良く分かる。

 一方でロードバイクは「軽く・速く」が身上ゆえ、まるでジャコメッティの彫刻のようにスカスカである。たいてい荷物を載せることは全く考慮されていない。まれに鉄フレームでダボ穴(キャリアや泥除けのステーをネジ止めする穴)付きのものもあるけれど、あくまでロードでは例外的な存在だ。詳しくは良く知らないが、そもそも最近多流行のカーボ素材など、引っ張る力には恐ろしく強いけど耐剪断性ではからきし弱いらしいので、そのような一点に応力が集中するダボ穴、ステー台座といった類は御法度なんだそうな。従って積載性の悪さはいかんともしがたい難題である。
 おれのチャリも安物とはいえ一応ロードバイクのはしくれなので、そのような穴は一切ついていない。だから容量として最も優れるサイドバッグ類は一切不可能、取り付けるとするならハンドルバーやフレーム、サドル、シートポストに小さめのバッグをつけるか、自分で背負うしかない。
 やっぱダボ穴のあるシクロクロスタイプにでもしとけばよかったかなぁ〜、とロード買って唯一後悔してるポイントなんだけど、よしんばそれらがもし付いてたとして、いかついキャリアを前後に取り付け、バッグ類で満艦飾にするなんて、ロードバイクとしてはアンバランスだし反則だ。やはり荷物にしたって極限まで小さくまとめ、スリムに行ってこそのロードである。見た目の身軽さは崩しちゃいけない。

 本来、一番便利だし、ある程度容量も稼げるのはハンドルバーに付けるフロントバッグ、っちゅうモンだろう。こいつはたいそう便利で、手の伸ばせるとこにあるから物がとにかく取り出しやすい。単車のタンクバッグとならんで、二輪車に最初に付けるバッグとしては一番使い勝手が良い。
 しかし、すでにハンドルバーにはベルやライト、サイクロコンピュータといったものが所狭しと並んでいる上に、最近はSTIってブレーキレバーと変速レバーが一体式で、本来バッグが収まるあたりにワイヤーが飛び出したりしてるのが一般的なもんだから、バッグの入るスペースがハンドル周りにないのである(※)。また、バッグが大きくなると下から支えるキャリアも必要だ。どしたって大容量のものは厳しい。それに大体やねぇ〜、ロードにフロントバッグなんて何となく似合わへんがな・・・・・・って、ハハ、もっと似合わない野宿をやろうとしてるんだけどさ(笑)。

 次の候補としてはサドルバッグだな。大きさとしてはサドルのレールに付ける、弁当箱のオカズ入れくらいのお話にならいない容量のものから、専用のアタッチメントやキャリアでシートポストに固定するタイプまでたくさんのなタイプがある。調べてみると、20リッター以上入る大きなものも見つかった。
 ただ、当然ながらバッグが大きくなるほどに車体に固定する仕掛けはゴツくなって行かざるを得ない。だが、そこまで巨大なのを取り付けるのはおれの場合ムリだ・・・・・・っちゅうのもナサケないことに、現品処分でフレームがワンサイズ大きめのを買ったことに加え、脚が短いせいで、シートポストがフレームからほとんど出てないのである(ちなみに、サドルが高いほどカッコよく見えるロードとして、これは致命的にダサい。トホホ)。台座の華奢な、せいぜい5リッター前後のものが関の山だろう。でもまぁ、これである程度はOKOK。
 チャリが安物だったおかげでシートポストがアルミだから、ここはキャリアが取り付けられるだけまだマシとせねばなるまい。もしカーボンだったらフォークと同様の理由で、はなっからキャリア台座を取り付けること自体、不可能だった。

 あと考えられる積載方法としては、フレームに付ける類のものが挙げられようが、これがもうおよそバッグと呼ぶのもおこがましい、財布とかポーチくらいの容量なもんで、結局、大半は自分で背負うしかない。
 ところが歩きと異なり、自転車に乗るのに大きなザックは余分に疲れる。前のめりって姿勢が姿勢だけに、肩が後ろに引っ張られるのである。何たってチャリ乗るには空身が一番なのだ。
 そぉいやぁサイクリング漫画の元祖である「サイクル野郎」って作品中で、途中から主人公の相方となる超巨漢の大男(名前忘れた)がキスリング背負ってた記憶があるけれど、ありゃぁ作者の荘司としおの自転車に対する造詣の深さを物語っている。一般的な日本人の体躯で大きなザック背負って自転車で旅するなんてムリなことを分かってたから、敢えてああゆう掟破りのキャラにしたのだろう。
 だからザックとしては比較的小さな30リッターでも、いささか持て余してしまうことは間違いない。

 ・・・・・・え!?身体に密着させれば良い、って!?それだと背中の風通しが悪くなり、暑くて困る。実は普段のチョイ乗りに、おれは10リッターくらいの小さなザック、それも背面の通気性をある程度確保したのを背負ってるのだけど、こんな寒い季節でも気合い入れてペダル漕ぐと、すぐに背中は汗ビッショリになってしまう。野宿を決行しようとしてるのは夏場だから、大きなザックを背負ったらどうなるかは火を見るより明らかだ。塩吹きまくりでっせ。

 要は徒歩の場合より、ザックはさらに小さなものにしなくちゃならず、また、自転車の道具が増える分、従来の荷物をもっともっとコンパクトに絞り込まねばならないのである。ハードルは極めて高い。

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 ウダウダと書いたけど、しかし、この辺でおぼろげながら方向性が見えてくる。

 1.可能な限り大きめのサドルバッグを買って、そこに入るだけ荷物を詰め込む。
 2.上だけでは到底収まりきらないので、ザックも併用するが、徒歩より小さなものとする。
 3.したがって、従来の道具の中でも小型化できるものは予算の許す限りさらに小型化する。


 ・・・・・・予算が許すんなら旅館に泊れって言われそうだが(笑)、ともあれ小型化が求められるものの筆頭に挙がるのはおれの場合、シュラフとマットだろう。前者は3シーズンの化繊であるモンベルのバロウバッグ#4を止め、1シーズンのダウン、同じモンベルで言うならULダウンハガー#7あたりにでもすれば一気に小さくできる。後者は山用の超薄手の半身用もしくはエアマットにすれば、これも現在のフルサイズで厚手のセルフインフレータブルとは比較にならないくらいまでに絞り込めるハズだ・・・・・・寝心地は確実に落ちるだろうけど。それに予算の都合もあるけど(笑)。
 テントについては、今のモノフレームシェルターですでに十分小さい。そりゃあツェルトにすれば、缶ジュース1本くらいといった極限の仕舞寸法の小ささは実現できるだろうが、設営大変だし、いざ雨降ったらダダモレだし、結露スゴいし、ちょっといくらなんでも安全性や快適性が悪すぎる。
 さらに意外な伏兵である嵩張る着替え類については、素材を化繊系のものにし、キチンと畳んで、コンプレッションベルトで縛り上げてシュリンクさせれば、あともう少し小さくすることが可能だと思う。

 ・・・・・・と、まぁ以上で何とかなるんぢゃないだろうか。一つ有利な点として徒歩より重量面での制約が少ないから、上手く行けば小さなコッフェルやトランギアくらいは詰め込むことが可能かもしれない。

 ようやく春も近付き暖かくなってきた。荷物を小さくできるアイデアがまとまるほどに、夢の方は膨らむ。あとは実践だけだ。その結果についてはいずれ必ず報告する。どうか期待してください。


※註:「変速バナナ」や「ノコン・アウター」ってなパーツでワイヤーの方向を曲げることは可能。


リクセンカウル(RIXEN&KAUL)のリュックにもなるサドルバッグ「META2」
容量は26リッターというけれどキャリアがつかない・・・・・

2008.03.02

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