「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ロード乗りのロード嫌い


この人たちはコレでいいんです、コレで。

 ・・・・・・ともあれ安物とはいえ、おれはロードのオーナーになった。

 それでも元々の定価は15〜6万円くらいするワケだし、コンポもシマノの105の10速とか付いてるし、どうせボロクソのグレードの炭素繊維だろうけど一応カーボンフォークだし、ロード初心者としては十分すぎる内容だろう。
 昔取った杵柄、でドロップハンドルには全然抵抗ない。最も使いやすい自転車のハンドルは絶対ドロップだとってるくらいだし。それに、最近はダンシングとかゆうそうだが、いわゆる「立ち漕ぎ」っちゅうやっちゃね、あれも全然フツーにできる。まぁ、今のところクリップつけてないから「踏む」しかできないけど。

 それにしても乗り味の軽さには感動モンである。漕ぎ出しとかもうメッチャ軽い軽い。すごく大雑把な言い方すると、ママチャリの10倍、ランドナーの2倍くらい軽い印象だ。チクショウ!こんなんだったらもっと早くにロードに開眼しておきゃぁ良かったぜ!オイラ、人生の折り返し点過ぎちゃったぢゃねぇか!と叫びたくなるくらいに。

 そんなんで早速おれは、川沿いのサイクリングロードに出かけて行ったのだった。そして愕然とした。

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 休憩ポイントで一服してると次々とロード乗りがやってくる。それはもうウジャウジャウジャウジャ、ハンパな数ではない。日本の自転車市場は現在5,000億とも言われるのが頷ける・・・・・・いや、それはそれで十分驚きっちゃ驚きだけど、なにより驚いたのは、そいつらが揃いも揃ってみんな「いかにもロード乗ってます」っちゅうカッコだったことだ。

 キメたツモリでおられるみなさんにゃぁ悪りぃが、どうしてもおれにはあれがいいカッコには思えない。あのカラフルなウェアとピチピチのタイツは70年代のTVの特撮番組のヒーローとかカラフルなモジモジ君に見える。ヘルメットはH・R・ギーガーがデザインしたものに見える・・・・・・要は全体としてはまるで「怪獣に噛みつかれているウルトラマン」のようにしか見えない、ってコトだ。

 それでも、いわばこれが「正装」なんだろうし、風の抵抗やら動きやすさやら、いろんな合理性を追求した結果できあがてきったカッコなんだろうとは思う。けどそれは100分の1秒を争うレースの世界の中での話やろ?川沿いの、ママチャリも散歩する老人もいるのどかな堤防上を、フツーの自転車に毛の生えたくらいのスピードで行くのにはやはり、似合わない。やはりレースに出てこそ映える姿だろう。
 だから、明らかにいろんな節制と筋トレやって体脂肪率が海老くらいしかなさそうな体躯の人は、100歩譲ってまだ良しとしよう。この人たちは普段着がコレみたいなモンなんだろうし、おそらくは実際レースとかにも出てたりなんかして、結果を出そうと頑張ってるんだと思う。

 問題は、だ。一言で言って趣味オヤヂの連中。九谷焼の色キチガイみたいな布袋をロードの上に置いたらちょうどこんな風になるだろう。ン10万円の高級ロードがへしゃげるんぢゃないか?と言いたくなるような、見事に紡錘形の身体つきのオッサンがかようなカッコでいるのは醜怪以外の何ものでもない・・・・・・って、こんなオッサン、どんなカッコしたって醜怪なんだけどね。おれも含めて(笑)。
 あと、カッコ完璧なのに補助ブレーキ付いてたりとかも、なんとも言えないチグハグさが寒いこと限りなし。見てて恥ずかしい。服買う前にそれハズせよ、って言いたくなる。オヤヂばっか悪く言ったけど、けっこう30代くらいでメタボ戦隊ブタレンジャー、みたいなんも沢山いた。
 なるほど気分だけでもなったツモリでいたい、って心理は理解できなくもないが、それって実に幼稚極まりない・・・・・・ああ、逆に土手の上っちゅうシチュエーションには、コレぐらいがお似合いなのかもしれないけれど(笑)。

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 判で捺したように・・・・・・

 ハーレー乗りは、革ジャンに鉄兜みたいな黒いメットだ。
 暴走族は、絞りハンに風防にビートのサイドカバーだ。
 オバハンは、その辺のハイキング行くのにも重たそうな登山靴だ。
 女子コーセーは、ふっとい脚にミニスカ、白のニットのベストだ。
 ヤクザは全面スモークのベンツだ(最近は黒ぢゃなく白だが)。
 ヲタクは、安物リュックに銀縁メガネだ。

 ・・・・・・古典芸能かよ!?

 どうして日本人はこうも様式を無批判に受け入れ、カタチから入り、共通記号を身にまとい、そして徒党を組みたがるのだろう?おれはたまらなくそれがイヤだ。

 ・・・・・・そりゃまぁヤクザがヴィッツやフィットに乗ってたらたまらんけどな(笑)。

 なるほど物事にはTPOやオブリッジ、っちゅうモンがある。そりゃ分かる。結婚式はやはりTシャツにサンダルで出かけて行くべきものではないし、弔事に振袖姿で参列したらキチガイだ。また、格闘家はあくまで強そうでなくちゃならないし、パンダはコロコロと可愛く振舞っていなくてはならない。それこそヤクザはヤクザらしく、ド派手なストライプのスーツに白のメッシュの革靴か何かでベンツに乗ってて欲しい、これだけは。
 畢竟、映画の発表会でブータレてる沢尻エリカは、だからバカなのだ。

 なるほどフォルムは機能を演繹した先の必然的な帰結としてあり、そこには美がある。そりゃ分かる。ブルーノ・タウトぢゃないけれど、桂離宮の緊張感はつまるところ虚飾を切り捨て、「当時」の但し書きが付くとはいえ機能の究極を目指したところにある。モンベルのコピーだって「Function Is Beauty」だ。しかし、その美はその機能を必要とされる場においてのみ発揮される、ってコトは忘れちゃいけない。オリンピックの競泳選手のカッコで市営のファミリープールを泳げるかい?

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 思えば昔、チャリに乗ってたときも、おれは別にそぉゆうカッコはしなかった。当時はランドナーだったから何でもいい、っちゅうのもあったんだけど、それでも妙チクリンなツバの短いカラフルな帽子、今のレーサーパンツに通ずるようなピチッとした短いジャージなんかはけっこうみんな着てたと思う。
 そんな中でおれはタオル鉢巻に古いジーンズ切ったの穿いてた。履物だって裸足にビーサン。そう、あの鼻緒の付いたゴム草履。あれでトゥークリップのついたペダル漕いでた・・・・・・って、これはツアラー系の裏ワザか。シマノの珍品、「SPDサンダル」でも買おうかな?(笑)
 いずれにせよそれで一向不自由したこともなければ、危険な目に遭うこともなく、2,000km以上の長旅も走りきった。

 単車に乗ってたときも、どうにもあのライダー必須アイテムの皮ツナギ、っちゅうのがおれはイヤだった。ロードのチャリのウェアと一緒で、基本的にどれもメチャクチャにハデ。こんなカッコで平気で旅先ウロついたり、食堂入ったりするセンスがおれにはどうしても理解できないし、我慢ならなかったのだ。だから安全を確保するために最低限必要なヘルメットとグローヴ、ライディングブーツだけでずいぶん長い間過ごしてた・・・・・・あ、念のために申し添えると、それぞれはシッカリ金かけて高品質なのにしてたっす。おれはケチだけど、そこまでぢゃない。
 多少脱線したが、それでもGPz900Rで200キロでカッ飛ぶようになって、万一コケたときにカラダが路面で削られて大根おろし状態になるのが怖いから渋々買ったのだけど、それはダイネーゼ(DAINESE)の黒くて地味な柄のモノだった。ツナギとはいえ上下でセパレートにできるようにもなってて、裾が長く、ブーツでなくても乗れるタイプにしたけどね。

 唯一それらしいカッコ、道具で固めたのはスノボくらいなモンだろう。何でかっちゅうと、他と較べて環境が苛酷だからだ。ゲレンデ、っちゅうから何となく単なるレジャーの場と思えるけれど、要は冬の雪山である。ありあわせの道具やカッコではどうにもならなかった。
 それでもセッションズ(SESSIONS)のジェイミー・リンシグネのウェアなんて大枚はたいたわりに縫製ザツだし、防水にしたってお笑いのような性能で(今はどうなったのか知らないけど)ずいぶん看板倒れだなぁ〜、と思った記憶がある。今はアウターは全身ゴアテックスにした。でも、インナーはユニクロのフリースだ(笑)。

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 ともあれこうして、スタイルにハマることがどうしても苦手なおれは、だからいつまでたっても、何をやっても、どっちつかずの中途半端な蝙蝠のような存在、「村外れの狂人」・「フール・オン・ザ・ヒル」なのだろうけど。

 まぁ、ややこしいことは抜きにして、自転車くらい肩肘張らずにフツーのカッコで乗っていたいっすね。おらぁ〜そう思います。

























= ウェアバッチリのメタボのオッサンロード乗り
2007.11.18

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