「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
おれなんてまだ甘い!・・・・・・耐寒野宿の傾向と対策


ビックリしたな、もう!!目の前で凍るんだもんな〜!

 前回の続きネタだ。

 ことほどさようにおれの道具は本格的な冬の野宿に使うには貧弱なのだが、それで一体全体どれくらいまで耐えれるんだろうか?って実験がちょっとしたくなって、先日山に行ってきた。これから書くのはその報告だ。

 実験失敗で凍死するのはイヤだから、クルマ(いざ、っちゅう時に逃げ込めるからね)でアプローチできる標高1,000mくらいのところ、って条件で近場を探すと、秩父界隈が条件にちょうど合致する。他に目的もないので、遅出で午後から出かけてみた。堂平山といって標高876mの山で、てっぺんに天文台があったりする開けた山だ。眺望は抜群で、関東平野と秩父盆地の両方が一望できる。低山ハイクのコースとしても人気があるらしい。

 クルマってコトもあったし、隙間風が少しは防げるかな?と、テントは最近の主力のVAUDEではなく、裾張りのついたEUREKA!の重たい「BP−Dome」にしたのが変更点なくらいで、あとは全部普段の装備にした。ちなみに火器類はあえてトランギアのアルコールランプとキャンドルランタンを選んでみた。ガスにすると意志薄弱なおれでは暖房代わりに使って耐寒実験にならなくなりそうだったからだ。持ってった食料はパスタとカップスープ、そしてアルファ米のドライカレー、それとスキットルに詰めたウィスキー。これで2食分。意外と小食やんけ。

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 16時半、山頂直下にお手ごろの草原があるのでテントの設営を開始するが、この時点ですでに激サム!!・・・・・・っちゅうのも下から吹き上げてくる風が尋常ではなく、風速10m以上あるのだ。手はかじかむは、生地は飛ばされそうになるわ、とえらく立ち上げにてこずりながら、ようやく寝場所を確保。ともあれペグダウンできる場所だっただけラッキーってモンだ。
 早速テントにもぐりこみ、広げた寝袋の足許にホッカイロを突っ込み、その上にちょっとでも気化を促進するためトランギアを載せる。することもないのでスキットルの酒を飲み始める。すでにメチャクチャ寒い。それにしてもヒマだ。本でも持って来れば良かったと思うが後の祭り。ここは山のてっぺんなんだった。
 風はますます強く、周囲に遮るもののない草原の真ん中なこともあってモロに吹き付け、テントが揺れる。ガイロープは長く、ピンピンに張ったはずなのに・・・・・・と外に出て確認すると、いつの間にかけっこう緩んでいた。ともあれキチンとペグを打っといたのは正解だった。
 何とまぁ実に、この後も一度ロープの張りを確認しに外に出ただけで、あとは翌朝7時までの13時間あまり、おれはテントの中でジッとしていた(笑)。まるでもうアホだが、強風と寒さでとても外に出る気になれなかったのだ。

 日没と共に気温が急激に下がり始めるのが分かる。風もより一層激しくなってきた。ロウソクを灯して天頂のループにブラ提げるが、テントがグニャグニャしなって揺れまくる。危ないので仕方なく下ろしてコッフェルの蓋に置いた。それでも火があると、僅かでもテントの中が暖かくなった気がする。それにしても裾張り付きのテントなのに、風がスースーするのはどぉゆうこっちゃ。

 動かなくてもしかしハラは減る。それに何より、あまりに手持ち無沙汰で何かしないと間がもたない。トランギアを触るといい感じに暖まってるので、寒いのをこらえてドアのジッパーを開け、前室で湯沸し開始。予熱の効果は抜群で、モラモラした火が高く上がることもなく、アッちゅう間に火力は安定した。もし事前に暖めてなければ炎が高く上がるので、フライも開けて外で湯沸しするハメになっていたろうが、この強風ではマトモに湯が沸騰したかどうか。

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 就寝までのイベントは以上。あとはもう寝るしかなかった。しかし、風の音はゴウゴウと凄まじく、そのたびにテントは大きく揺れる。マジで倒壊しやせんかと不安になるし、呆れるほどやかましくてとても眠れない。ティッシュを丸めて耳栓代わりに突っ込み、さらにタオルを頭に巻いておれはうつ伏せになった。

 ん!?尻が寒い!

 仰向けになると今度は膝がシンシン冷える。

 言っちゃなんだが、スノータイツの上にさらには起毛裏地のカーゴパンツを穿いてシュラフに入ってるのに、だ。なにより脂肪だけは売るほどあるデブなのに、だ。足先にはカイロが入っており、上半身はフリースを2枚着てるから暖かいが、途中の部分が冷え込んでいるワケだ。幸いダウンジャケットを脱いで枕元においてあったのでそれを膝のあたりに巻き付けるようにして押し込み、ついでにカイロの予備を腰の後ろに貼り付けて対応。

 それにしても、通常なら触れることのないテントのインナーウォールがベタベタと頭や足先に触れる。強風で通常では考えられないくらいにテントがバタついているためである。フレームまでイッたら一気に終わりやなぁ〜、クルマに避難しようかなぁ〜、とウダウダ考えてるうちに酔いの力も手伝って寝入ってしまった。

 ・・・・・・目覚めると7時前。外はすっかり明るくなっている。風もほとんど収まっていた。

 枕元のプラテパスからカップに水を汲むと、ひょえ〜!!一瞬でシャーベット状になるではないか。まれに水は氷点下になっても凍らず、衝撃が加わると急に凍ることがあると知識では知ってたが、実際に目前で見てあまりの不思議さに一気に眠気が覚めた。握った方のプラテパスも半ば凍って、たくさんの氷片が漂っている。
 それにしても普段は気密性が高すぎて結露に悩まされるこのヨーレイカ、今朝はまったくもってテントの内部はサラサラだ。強風で換気されたことに加え、くっついた僅かな水滴も全部凍ってしまったためである。あちこちに落ちているケシ粒ほどの氷の球を掃いて集めるとけっこうな量になった。首をボキボキ鳴らしながら、おれはゆっくり撤収に取り掛かり始めた。。

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 結局、色々着込みはしたものの、凍死どころかそれなりに暖かく過ごせたのである。ちなみにこの日の朝の山頂気温はマイナス6℃。貧弱な装備でもかなりのところまで耐えることが良く分かった。

 ・・・・・・などと、鹿爪らしく逐一書いたけれど、世の中にはものすごい雪中野宿/寒中野宿マニアが数多くいらっしゃる。彼らの目指す世界は実にマイナス20℃とか30℃である。今の道具だと凍死間違いなしやね。
 おれなんてまだ児戯に等しいレベルだ。全然甘い。甘っちょろすぎる!でも今回はこれが限界です。次はもちょっと頑張ります。でわ。

2007.03.28

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