「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ニッピン讃歌


スリーブ式と吊り下げ式の中間のような独自の「ドライエッケン」システム。
しかしさぁ、番号くらい消せよぉ〜。

http://www.nippin.co.jp/より
 電脳ヲタクと外国人の街、秋葉原の北西のハズレあたりにニッピンの本店はある。以前は少し離れてもう一軒あったような気がするが、いつのまにか一つに集約されてしまった。あとは御茶ノ水に道路を挟んではす向かいになって二軒の支店があるだけ。うち一軒はスノボの専門店で店の名前も異なる。つまり、山の専門店としては二軒のみ、っちゅうことになる。
 まことに失礼ながら、どちらの店もかなり古びた感じで少々活気に乏しく、ややゴチャッとして垢抜けなくも飾り気のない陳列に、昔ながらの山屋さんっぽいマニアックな雰囲気も感じられるものの、ぶっちゃけいささか衰退気味な印象を受けてしまうことは否めない。現に2ちゃんで得た情報によれば、昔はもっとあちこちに店があったんだそうな。つまりは事業はどんどん縮小傾向、っちゅうことなのだな。

 ここの最大の特徴は、テント・リュック・シュラフ・登山靴、という登山の四天王の品揃えがオリジナル商品をメインにしてるってことだ。いわゆるPB(プライベートブランド)っちゅうやっちゃね。そして、シュラフ・靴・リュックはともかく、テントのユニークさは他に類例を見ない。

 告白すると、恥ずかしながらおれは、ニッピンの製品は赤いジュラルミンのピンペグしか持ってない。そんな野郎がオマージュめいたものを書き連ねるのもどうかとは思うが・・・・・・あ〜も〜堅苦しい言い回しは抜きにしよう!

 なーんかすごく好きなんですよ、ニッピンが!!判官びいき、っちゃそれまでなんだけど。

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 まずアナクロの塊のようなカタログのダサさがいい。そこに踊る時代錯誤っぽい言葉の数々の魅力がとってもプリティ!ちょっと書き出してみよう。

    ●2人で1分、超特急設営            それくらいすぐにテントが立ち上がる、ってコトね。
    ●ジェット設営60秒                これも同じ
    ●直結価格                     問屋を通さずメーカー直結で中間マージン省いた、と。
    ●新素材N−LAYER5050(ゴーゴー)    ゴーゴー、ってアータ・・・・・・
    ●純日本製商品                  言いたいことは分かるけどさ。

 ね!?何となく分かるでしょ?このビミョーにダサい感覚。

 しかし、字面だけではこのカタログの楽しさは伝えきれないようにも思う。独特の、隙間なく能書きが詰め込まれ、やたら「世界一」が随所に出てくるレイアウトについては、オンラインでPDFがダウンロードできる。加えて、ムチャクチャ素人っぽいサイトの作り全体もかなり泣ける代物なので、ぜひとも隈から隈までジックリ見て欲しい。

 ・・・・・・とはいうものの、まずはテントについて言うならば、国内でのシングルウォール不人気はどこ吹く風とばかり、軽量と設営性にのみ特化して異常なまでにシングルウォールにこだわったラインナップや、SNFテックスという珍しい生地素材(※)、独自の「ドライエッケン」「OUTサイドIN」なるポールとの接続方式等々、どれも極めて個性的な内容だ。
 特にロープをポールに絡みつかせながらフックに掛けるドライエッケンは、支持ポイントが通常の吊り下げ式より多く、スリーブ式よりは風の力を流しそうな構造で、かなりいいな、って思う。
 雨なんか降ったら、内部は恐ろしく蒸れるだろうと思うけど、お金に余裕ができたら一張り欲しい。

 ※アライやICI石井の一部の製品に使われる「エスフレッチャー」は実は同じ。アライのカタログによると「若干の透湿性をもった防水コーティングです」となってるから、ゴアテックスのような性能を期待すべきではないのだろう。

 チベットの山々の名前のつけられたリュックもいいぞ〜。

 リュック本体が背中にくっ付かないよう、ピンと張られたメッシュ地がリュックを支える構造は、「テクノライトフレーム」と名づけられ、ドイターの通気性とタメ張る。だって背中との間に隙間が5cm近く空くのだから。
 汗っかきのおれとしては大注目で、実際一度は買おうとしたのだ。ところが、だ。

 ある日店を覗いたら、1年落ちの「ヒンズークシュ」っちゅう25リッターのが3,980円で出てた。手に取ってみるとかなりこれがいい。ユーモラスなたまご型のフォルムもかわいいし。鮮やかなライムグリーンのカラーも形に合ってる。
 早速買おうとして、普段現金はほとんど持ち歩かない主義のおれはカードを出したのだけれども、使用を断られてしまった。カードは1万円以上なんだってさ。特にその日は他に買う物もなかったので、ニッピン出て、その足で別の店に行ったら、飾られてたMILLETの小ぶりのがついつい気に入ってしまって、そっちになってしまったのだ。

 ・・・・・・チャンスロスやで、これって!!(笑)。

 もしリストラされたらマジで放浪しよう、なんて思ってて、以前から70リッター台のザックをいろいろみつくろってる。幸か不幸かその時はまだ来てないが、その折には「バジョレ」ってモデルを買ってやろう、などとも考えてる。
 冗談はともかく、容量70+10リッターでザックカバーまで付いて¥13,650−、言うまでもなく「直結価格」(笑)。あ、カードも使えるな。2気室でこの値段は驚異的。激安。作りもシッカリしてて、ホントいい製品だと思う。問題は・・・・・・地味なことくらいかな。

 後は端折るが、靴もシュラフも、どれもちょっとづつ他にはない個性があって、同じPBでも量販店のPBとはどこか一線を画した感じがあって楽しい。
 たしか中高年登山者のカリスマ、岩崎元郎氏はニッピンのスポルティバなる登山靴を愛用してたのではなかったっけ?オマケにココ、あの伝説の登山家、ラインホルトメスナーのスポンサーもしてるしねぇ・・・・・・本人、ホンマに使ってはるんやろか?

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 もしこれをお読みのアナタが東京もしくはその近辺に在住で、山とかアウトドアに興味があるにもかかわらず、まだ一度もニッピンを覗いたことがないというのなら、ぜひとも一度行ってみて欲しい。そしてどことなく懐かしい店内の雰囲気も含めて、ユニークな製品群を愉しんでみられてはいかがだろう。
 自転車で言うなら、コルナゴやデ・ローザといったイタリアンブランドではなく、トーエイやズノウ、ケルビム、はたまたキヨミヤザワにハマるようなマニアックな歓びがありますから。そして、失礼ながら少し、脱力観光的な気分も味わえることも間違いなしですから。


これが「バジョレ」、ナカナカいいっしょ?

2006.06.02

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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