ＨＯＴ　Ｓｐａ　ＥＸｔａｃｙ再開に当たって

ＨＯＴ　Ｓｐａ　ＥＸｔａｃｙ再開に当たって

　ＷＥＢ化する際にずいぶんまとめこんだが、アーカイヴはもともと全部で１５０話くらいあった。毎週連載してたので、約３年分に相当する。書くのはしんどかったけど、ずいぶん自由気ままに楽しい時間を過ごさせてもらった気がする。おれは書き物をするときは「初めにタイトルありき」の方なので、文章化されないままタイトルとラフスケッチだけで残ったのは、おそらくその倍くらいあるだろう。
　今さら説明するのも野暮だけど、タイトルに「ＨＯＴ　ＳＥＸ」というコトバが潜んでいるのは言うまでもない。おれにとって温泉とは、ちょっと衒学的な言い方を許してもらうならば、「祝祭としてのセクシャリティ」と不可分のものだったのだ。
　話はそれるが、「祝祭としてのセクシャリティ」の延長線上に、おれのインモラルに対する傾倒があることは、賢明なみなさんならとっくにお見通しのことかと思う。ヨメはノリがいいとはいえ、子供に手を取られて何かと忙しい。誰かパートナーになって、いっしょにストイックにインモラルを追及してくれる人おらんかなぁ～（笑）。

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　さて、世状はその後大いに変わり、急速なインターネットの普及に乗っかって、こうして世間のお目汚しもできることとなった次第だ。いろいろな問題も抱えてはいるが、ＷＥＢは素晴らしいなぁ、と素直に思う。
　しかし、少しづつ整理してはアップしながら、どうにもおれは新作を書き下ろす気になれないでいた。

　年々歳々忙しくなってきているのが、無論、最大の理由であるが、温泉に関係ない駄文はそれでもすでに２０ほど書いた。つまり、時間はなくはないのだ。言い訳はアカンね。
　子供が大きくなって、以前ほど安価に、気ままに行動できなくなったことも大きい。温泉は大人も子供も料金が５００円均一だったりするので、家族全員で入れば２，０００円、一日８ヶ所入れば、なんと１６，０００円でっせ！！これはハッキシ言って、ディズニーランド行くより高い。オマケにガキ共も段々人格が形成されてきて、いっちょ前に自己主張なんぞしやがるし、休みの日に習い事やスポーツの約束が入ってきたりもする。「ほたら、わしいつ出かけたらよろしおまんねん！？」って感じですな。

　それにおれは、以前ほど話のネタになるようなケッタイな体験をしなくなった。一般人と同じく、休みの日が平日から土・日・祝日にシフトしたせいかも知れない。おもろいネタがないままおもろい文章を書くのは、実に至難のわざだ。四六の蝦蟇みたいに脂汗流しながら苦しそうに絞りだして、おもろい文章になるはずがない。

　ネガティヴな理由は他にもある。

　あまりに温泉の裾野が広がりすぎ、以前ほど落ち着いて入ってられるトコが減ってきたのである。渋いところは廃業あるいは閉館し、一方で規制や制約が増えた。撮影禁止・混浴禁止・外来入湯は１０：３０～１５：００までならまだいいが、外来完全お断り･･････１５年前は前日に電話すりゃ泊まれた旅館が、１年先まで予約で一杯の「名旅館」とやらに変貌を遂げた例も多い。どうせ旅行会社のリザーブなんだけどね。オマケにしたり顔に語る人も増えた。源泉掛け流しがどうのこうの、とか、泉質がどうのこうの、とか･･････いい人もたくさんいるけど、始末に終えないヤツの方が当然多い。
　最大の害悪は言うまでもなく「無遠慮で無知で非常識で厚かましいオバハンの集団」であるが、他にも色々な人種がいる。要は「徒党を組んで数に物言わせて闊歩するような人」のことだ。大嫌いだ。

　言い切ってしまおう。

　------おれは今、温泉に対して半ば興味を失いかけている。

　こんな状態で、なぜ改めて温泉エッセイを書こうとするのか？ネタはあるのか？パワーは続くのか？？？？？
　まことに不安だが、タイトルのまま埋もれたものをそのままにしとくのも、ちょっともったいないし、上のようなくさぐさの事柄にもかかわらず、多少はその後も色んなことがあった･･････楽しいこと、腹立たしいこと、シミジミすること。

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　それらのことをおれは、上手く言えないが、「私」というフィルターを通って異化された世界、いわばパラレルワールドのリアルなフィクション、としてこれから書いて行こうと思っている。
　アクセスや値段・泉質・星の数でナントカ度、なんてーのは極力書かない。つまらないデータベース化や分類もしない。そんなのネット探せばいくらでもある。

　かかる試みが、寺山修司ぢゃないが「記憶を修正する試み」、であることは論を待たない。しかしながらその行為は恐らく、おれの希求して止まない、しかしすでにあらかじめ喪われた温泉風景を、眼前に立ち昇らせてくれるような気がするのだ。

2005.04.07