「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
レッツゴー爆食!!(V)


レトロで怪しい佇まいが野田・やよい食堂にも通じる、会津若松「白孔雀食堂」外観

 ・・・・・・またやってしまった。

 あれだけえらそーに封印を宣言したにもかかわらず、またもや爆食、やっちゃいました。

 場所は前回の最後にふれた会津若松は「白孔雀食堂」。会津は喜多方ラーメンと並んでソースカツ丼が名物なのだが、その中でも老舗かつ異常な量で有名なのがこの店である。
 ものすごい行列だった。後から後から客は入ってきて、ソースカツ丼をワーワー言いながら食ってる。もはやここは飲食店ではなく、遊園地のアトラクションに近い存在なのだろう。そう思ってみると無造作に店内に置かれた「キルビル」や「タイムボカン」の等身大切抜き看板も不思議とマッチしているように見えてくる。ボロボロの店は、あるいは「お化け屋敷」にもにた演出だろうか(笑)。
 大盛ソースカツ丼は柔らかめのご飯と甘めのソースがマッチしてナカナカの美味だった・・・・・・量さえ普通ならば。

 「オマエ、きっちり行ってるやんけ!!確信犯ちゃうんかいっ!?」とツッコミ入れられそうだが、ちょっと図星である。今度会津に行くならやはり絶対行こう、って思ってたもん。
 こないだの10月の三連休で、うまく行けば山形〜新潟北部を予定してたのが、あいにくの天気と高速道路の不通に進路を遮られて、目的地を変更したのが運の尽きだった。会津に行った以上は訪ねなくてはならない。もはやオブセッションですな。

 詳細な画像はそのうちアップするギャラリーでも見てもらえばいい。笑えます。

 とにかくおれはまたもや懲りもせず完食して死にそうになり、その日の夕食もとても食う気になれず、翌日の昼を過ぎても胃がもたれてた。まったく進歩のないことおびただしい、っちゅうヤツですわ。

 ボロボロでバッドテイストな店内で、ムリムリ喰いながらおれは思った。冒険精神、挑戦、ウケ狙い、道化、自虐、卑下、諧謔・・・・・・etc、この行為にいろいろな言葉を散りばめることはできるし、この前エッセイ(TとU)にも色々書いたけど、結局その底流にあるのは「自傷」、もっと言えばどこかで自分で自分を罰する「セルフパニッシュメント」なのではなかろうか、と。
 全てのお笑い芸人がそうであるように、演じる本人はタナトスの虜なのだ。

 自分の何を罰しているのかはカンタンだ。自己の「存在」そのものだろう。しかし、誰に対してそれを示しているのかはよく分からない。世間様に対してのようでもあるし、自己の内部で完結したトートロジーなのかも知れない。

 しかし、クラくなろーが哲学しよーが、目の前にデーンと大量のソースカツ丼は相変わらずある。オマケに子供は二人で一つにしたのにそれでも持て余してる。そのうちいずれおれに回ってくるのは必定だ。

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 実はおれは「カツ」、とりわけ「トンカツ」が大好物である。順番で言うと、ダントツ1位「トンカツ」、2位ちょっと落ちて「チキンカツ」、3位はグッと落ちて「ビーフカツ」、さらに落ちて4位「メンチカツ」っちゅー感じかな。メンチ食うならハンバーグの方がいい。
 定食屋で選ぶのに悩んだときは、たいてい「トンカツ定食」頼む。そんなワケだから、無論、カツにまつわる爆食話も多い。

 何より思い出すのは、大学の近くにあった「A」というオバチャン二人でやってたトンカツ屋だ。大学にはロクに行かなかったが、ここでメシ食った回数はけっこう多い。トンカツ定食とチキンカツ定食、あとはカツ丼と牛丼の4種類しかメニューがなかったと思うが、普通はともかく、50円増しかなんかで大盛にすると、とにかく量がスゴかった。
 ただ、チキンカツのデカさはやたら思い出すのに、トンカツの記憶はほとんどない。あるいは大きかったのはチキンカツだけだったのかもしれない。
 しかし、これだけでは本当の爆食とはいえない。さらなるアレンジが必要だ。アレンジとは即ち、ライスをカツ丼大、とかに替えて食うのだ。こうするともう凄まじい量。あの頃だからそれでも何とか食えたけど、尋常ではなかったな。
 店主である方の細身のオバチャンは、食いっぷりのいい学生を相手にしてること自体が楽しそうで、いつも穏やかに笑ってた。今でもあの店は残っているだろうか。

 そこからちょっと行った大きな交差点の近くにあった、これまた「A」という店も忘れられない。ここはカツ丼で有名な定食屋だった。おれはカツは好きだが、玉子でとじたカツ丼は当時あまり好きではなかったので、そんなに足しげく通ったワケではないが、システムがとにかくおもしろかった。
 カツの枚数と玉子の個数で大きさが5段階くらいになっていたのだ。実食はしてないが、たまたま見かけた最大パターン、カツ5枚・玉子5個だったと思うが・・・・・・それはほとんど洗面器のような丼に入ってた。

 叡電の茶山駅近くにあったトンカツ屋は正確には爆食系ではなかったが、それなりにデカく、そしてやたらと安かった。当然だがその分、あまり美味しくはなかった。
 それもそのはず、そもそも中が一枚の肉になってない。薄いロースを貼り合わせてあるのだ。肉のベニヤだな(笑)。
 しかしその間に梅肉やおろしニンニクを挟んだモノがメニューにあって、まぁそれはそれなりに食えた。金がなくてトンカツ食いてぇ!と思ったときに何度か行ったが、やはりギターといっしょで、材は合板より単板のほうがいいに決まってる。そのうち足が遠のいてしまった。

 名前は忘れたが、大阪の京橋にあったトンカツ屋も忘れがたい。ちょっと変わってて、分厚いロース肉を真ん中で切り開いて、両側の脂身に深く切り込みを入れて叩いたものを揚げてある。
 そんな製法のために、できあがりの姿はまるで、羽を広げた巨大な蝶というか、ドラゴンボールでカメハメ波を撃つときの悟空の手というか、B5ノートを広げたくらいのとてもトンカツに見えない大きさと形をしていた。
 申し添えると、おれはこの店では敗北したのだった。店主は心得たもので、何も言わなくてもパックに残ったのを詰めてくれた。

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 こうして列挙するとカツ関係でもずいぶんバカをやってきたことがわかる。だが、おれも歳を取った。白孔雀食堂での体験は、恐らくはカツネタでは最後のオバカ記録となるのではないだろうか。

 ま、感傷はいいや。いずれにせよこんな飽食野郎、しばらく禅寺かどっかで過ごした方がいいのかもしれない。あ、北朝鮮でもいいかも。帰って来れる保証ないけど(笑)。
2005.10.21
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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