みんな似てるっちゃぁ似てる・・・・・・鰻・穴子・鱧


そぉいや穴子の蒲焼は皮目を上にしてることがケッコーあるかも・・・・・・(画像は富津「大定」)。

 ・・・・・・どれもみんなヌルヌル、ニョロニョロしてるし、色合い的にも近いから、遠目に見たらよく分からなかったりして。

 気になって調べてみたところ、やはり生物学的には近い存在のようだ。鰻は「ウナギ目ウナギ科」、穴子は「ウナギ目アナゴ科」、鱧は「ウナギ目ハモ科」・・・・・・んん~、書き写しててアホらしくなってくるな(笑)。ただ、皮膚呼吸をするのは鰻だけ、回遊性があるのは鰻・穴子ってな違いがあるらしい。
 ただまぁこのウナギ目の「目」ってのはケッコー曲者で、あのグロテスク極まりないウツボだってこのウナギ目に属してたりするんでワケが分からない。ちなみに海のギャングとか言われて悪食で知られるんだけど、高知で昔、甘辛く味付けした干物を刻んだのを食べたらケッコー淡泊で、あんまし味が無かった記憶がある。

 しかしながら強壮薬として巣鴨行ったら店頭で焼いて売られてるヤツメウナギは名前だけでまったく無関係。そもそもあれは魚類でさえない。ヌタウナギも同じで、これらは円口類っちゅうムチャクチャに原始的な脊椎動物で、味も全然違う。援交ちゃうで、円口やで。
 ヤツメウナギは食ったことないから知らんけど、ヌタウナギは少なくとも魚の味ではなかった。以前書いた下賀茂神社・糺の森近くにあったカルトな呑み屋のマスターの能書き、「テッチャンの歯応えと味ですっっ!」に嘘はなかった。あと、サバいたら出てきた黄色い卵がその身体のサイズからすると異様に大きくて、ちょっとキモチ悪かった記憶がある。さらに脱線するとコイツ、韓国では珍重されてるみたいだ。

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 まずは鱧から行こう。ここで唐突にマメ突っ込むと「はも」は「食む(はむ)」から来てるらしい。獰猛で鋭い歯があって何にでも噛み付くからである。一部の地方では「はむ」と今でも呼ぶトコがあるらしい。

 さて、鰻・穴子はワリとまぁ全国的に食べられてるが、鱧については関東以北の人はあんまし食べない印象がある。そもそも海におらんのかもね。桂米朝がナレーターやってた往年のTV番組・「味の招待席」の名セリフにあった、「京都の夏はやっぱし鱧でんなぁ~」の通り、特に京都では鱧をよく食べる。一般的には落とし(湯引き)に梅肉やら酢味噌なんだろうけど、松茸と鱧の土瓶蒸なんかももちろん有名だし(・・・・・・滅多に口に出来んけどさ)、蒲焼にしたんの身をこそげ取って包丁の腹で押して延ばしたのに実山椒の佃煮散らして箱寿司にしたり、残った皮を刻んでうざくみたいに塩もみしたキュウリと和えて酢の物にしたりもする。天麩羅、鍋なんかもたまにメニューにあったりする。ただまぁ鰻や穴子より若干クセが強いので、やはり好き嫌いは分かれるかも知れない。落としにするのはやはりワケがある、っちゅうこっちゃね。

 鱧が厄介なのはあんまし硬くはないけど無数の小骨が皮のすぐ下のところに格子状にビッシリあることだろう。かつておれがバイトしてた寿司屋でも、たまに鱧を仕込んでるのを見た。皮一枚だけ残しての俗に「一寸に24回」と言われる細かい骨切りは到底素人の手に負えるものではない。これが雑だとしかし小骨が障って食感が宜しくないっちゅう、ひじょうにめんどくさい魚なのである。
 逆にこの骨切りの細かさは京料理の板前のウデの見せ所でもあるワケで、一寸に24回もだんだんハードコア化して26回だの33回だの色んな流儀があるらしい。一方で生魚だから手早くやらんと鮮度が落ちるし、独得のジッジッジッジッって音を立てながら切り込みを入れてる姿はホント大変そうだった。

 ともあれこうして細かく切れ目を入れたのをそのまま生で造りで食する、ってのは寡聞にして知らない。大抵は火を通す。そうすると皮目が縮んでポワッと花が咲いたようになるのが何となく美しげでおれは好きだ。実際「牡丹鱧」って呼ばれるくらいだから、昔からその見た目でも好まれて来たんだろう。

 こっちのスーパーでも鱧の落としは最近見掛けるようになってきたが、あんなクッソめんどくさくておいそれと誰にも出来ないようなコト、人海戦術で凌いでんだろうか?あんなんしかし一日中やらされてたら発狂するで!って気になって調べてみたら、ありましたがなありましたがな!理工エンジニアリングっちゅうトコから「HS-3」とか「HS-6B」ってな機械が出てますやん。やっぱ「HS」って「ハモ・スライサー」なんかな?(笑)・・・・・・ともあれ人間の欲求と知恵はやっぱし無窮やね。ホンマ感心するで。
 でも、こぉしてスーパーで売られてるのって、何か美味くないんだよね~。ビシャビシャして味が抜けてる気がするし、色も不自然なまでに白いし、食ったら食ったで水っぽいくせにモソモソしてて折角の魚なのに勿体ないことしてるなぁ~って思う。他の刺身類はパックに入ったのでもそこまでヒドくないのに、鱧だけは当たったためしがないのが不思議だ。

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 鰻についてはこれまで散々書いて来たんで今さら新しいネタがあるワケぢゃないんだが、まぁやっぱし好きやなぁ~、ってコトはまず述べときたい。

 そぉいや先日、TVでようやっと本格的な完全人工養殖の目途が付きそうだってやってた。産卵場所の特定や人工孵化までは何とか出来るトコまで来てたんだけど、その幼生(レプトセファルス)に何を食わせたら良いのかが最大の難関だったらしい。以前の駄文に書いた通りでエサになるものは見付かってたんだけど、それだとベラボウなコストが掛かってどうしても採算に乗らなかったんが、その後さらに研究を続け、ありとあらゆるものを試してたところ、ようやく最近になって商業ベースでやってけそうな餌に辿り着けたっちゅうのである。どうやら深海鮫の何かを遣うんだそうな・・・・・・肝油ドロップかな?(笑)。

 思えば鰻ってムチャクチャ不気味な生物と言える。大きく育って産卵時期を迎えたら異常な生命力を発揮し、ほぼ絶食状態で何千キロも離れたマリアナ海溝まで遠路はるばる泳いでって、そこでワザワザ産卵するのである。長旅に備えてヒレは大きく発達し、口や消化器官はスッカリ退化してしまう・・・・・・これはもう魚類っちゅうよりかは昆虫の変態に近いのかも知れない。あ、ビザーレのヘンタイちゃうで(笑)。
 生まれたら生まれたで件のペラペラで透明なレプトセファルスの状態で、親の辿った道のりよりもさらに遠回りしながらフィリピンや台湾沖を通って帰って来る。ホンマに故郷の川に戻ってるんかどうかは分からんけどね。そいでもってサバいてもいつまで経っても動いてたりする。
 だから食うたら精が付くやろ、ってコトで古来珍重されて来たんだろうが、生命力の強いモンを食ったら丈夫になる、って実はあんまし科学的根拠はないらしい。

 あぁそうだ。鰻屋についてはあちこち行った際には地元の名店って言われるトコを探して、ささやかな贅沢で立ち寄ることが多い。特にこの10年くらいはそのパターンがとても増えた。しかし、あんましガイドやネットの星の数はアテにならないなぁ~、って気がしてる。実際、世評通りの店も多い一方で、みんな名前にアテられてホメちぎってるだけちゃうんか?ってツッコミ入れたくなる店も多い・・・・・・ま、具体的な店名を挙げてディスるのは止しとこう。ともあれ、あちこち何十軒も行って「こらホンマに美味いな~」って思ったのは、野田の「千歳家」、三ケ日の「千草」あたりかなぁ???

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 ・・・・・・で、穴子だ。
 最初に己の不見識を恥と共に告白しとく必要があるだろう・・・・・・って、何を高いトコ目線で勿体ぶってゆうてんねん!?(笑)。

 いやぁ~、ぶっちゃけワリといい年になるまで、おらぁ穴子ってどこか「鰻の代用食」みたいに思ってたんっすよ。ちょっと小さいけど同じような味・食感で安く食えてエエやん、みたいな(笑)。これはこれで立派に世界あって優れてるのに、どっか三文安く見てた。ホンマお恥ずかしい。
 でもまぁ実際、蒸してから焼いた大きめの穴子の蒲焼重なんて、見た目だけだと鰻重とほとんど区別が付かない。味もまぁ似てる。穴子の方がややアッサリしてるかな?

 これは小さい頃に関西の直焼きの穴子に馴染んで来たから一層そんな風に感じてたように思う。関東では基本、煮穴子や蒸し穴子ばっかなのでフワフワ・トロトロしてるのが一般的な一方で、開きを並べてそのまま串焼きにした焼き穴子はちょと干物っぽいっちゅうか、シワシワ・コワコワしてて、平たくゆうと萎びて縮んだみたいでひじょうに対照的なのだ。

 阿呆で幼稚な思い込みを最初に解いてくれたのは、学生になって通い始めた、何話か前に書いた銀閣寺の「ん」でのマトモな煮穴子の握りだろう。小さな両面挟む網で軽く炙ったそれは、下手に箸でつまむと崩れそうなくらい柔らかく、味も鰻とはやっぱしちょと違って、穴子って美味しいモンなんだなぁ~、って知ったのだ。
 その次は、上記イカれた呑み屋で2尺ほどもある大穴子の一夜干しを焼いたのを食べた時かな?フワフワのケーキみたいな食感と凝縮された味に驚いて、改めてコレはコレなんや!って気付かされたのだ。
 さらに蒙を啓いてくれたのは、就職して呑み歩いてる時に見付けた穴子専門店だった。どこのなんて店だったかな~?たしか、JRの吹田か茨木か駅前の雑居ビルみたいなトコの2階に新しく出来た店だった。何の気なしに立ち寄ったら開店セールなのか何なのかすごく安くしてくれて、造り・天麩羅その他、蒸しも直焼も堪能して、それでおれはますます穴子は鰻とは似て非なるモンなんだ、って知ったのだった。
 房総方面では穴子のことを「はかりめ」と呼ぶ。身体の横に並んだ側線の点々が秤棒に似てるかららしい。今では旬の春になったらあっちに出掛けるのをちょっと愉しみにしてたりする。

 そんなんで今はまったく代用食なんて失礼なコトは思ってない。それに他の二つに比べて手頃な価格で生のが手に入れやすいから、コロナ禍のオカゲで以前に比べて格段に増えたおれの家での料理の食材に買うことも多い・・・・・・まぁ大体は天麩羅だけどさ。たまに煮穴子もやるけど、ありゃホント奥が深い。メッチャむつかしいわ。

 ・・・・・・肝心のオチを書き忘れるトコだった。そうだったそうだった、おぉそぉだったんだ!

 おらぁ近いうちに穴子の直焼がフツーに魚屋の店頭に並んでるような土地に引っ越すんだった。もちろん生で開いたのがザルに何匹も乗って安く売られてたりもする。鱧もあるが、ナンボ産地でもこっちはそれなりにお高い。

 これから時代は穴子やね!(笑)


劇的に美味い野田の「千歳屋」の鰻重。

2022.10.25

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