ヤクルト戦記


一般の流通に乗ってるのがこのY1000、専売品がヤクルト1000とややこしい。
瓶の形と内容量が違う

 「ヤクルト」、っちゅうたかてまぁあぁゆう肌色っぽい色の甘い乳酸菌飲料全般だと思ってください。ほれ、「テトラポッド」っちゅうたかてそれは不動テトラの作ってる消波ブロックの商品名だったり、「宅急便」っちゅうたかてクロネコヤマトがやってる宅配便のことだったりするんと一緒やね。
 それはともかく実はおれ、このモッタリして甘いのが昔からケッコー好きで、森永マミーとかの大きな紙パックが安売りになってるとたまに買ってたりしてたのだ。北海道にいた時はもちろん「カツゲン」やったな~。

 調べてみるとチャンと定義があって「乳製品乳酸菌飲料」と「乳酸菌飲料」、「発酵乳」に分けられてる。無脂乳固形分が3%以上か未満か、菌の数が多いかどうかで最初のと真ん中のに分かれており、これらの総称が乳酸菌飲料。8%以上になると3番目ので、どちらかっちゅうとこれは液体のヨーグルトになるんだそうな。へぇぇぇ。さらに生菌なのか死菌なのかとかで細かく分類することもできるらしい。もちろんそれが値段の箆棒な違いに表れてたりする。

 おらぁそもそもケチだし、とにかくヤクルトみたいなあの味が愉しめりゃ何でも良かったんで、専ら大きな紙パックのを買ってたんだけど、特に不満も感じてなかった。それに「恵」だとか「ブルガリア」、「ビヒダス」といったカップヨーグルトをほぼ欠かさず毎朝1ヶ、ネコとシェアして食ってるから、さらにムリして乳酸菌を摂取することもなかろう、って思ってたのもある。

 ・・・・・・それが、だ。

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 みなさま既にご高承のことと存じ上げるが、SNSを中心に「ヤクルト1000/Y1000」っちゅうのがとにかく効く、って噂が流れ始めたのである。「バズる」っちゅうやっちゃね。いつくらいからだったかなぁ~、去年の暮れあたりにはチョコチョコ見掛けるようになってた気がする。ひょっとしたらステルスマーケティングやったんかも知れん。
 曰く「マジでよく眠れる」、「目覚めが爽やかになる」、「睡眠の質が爆上がり」・・・・・・ヘンなトコでは「悪夢を見るようになる」ってのもあったりするんだけど、流石にそれはアカン思うで(笑)。
 さらにこの人が取り上げると必ず売れまくると言われるマツコ・デラックスがTV番組で紹介したコトで、人気は決定的なモノとなった。ヤクルトは笑いが止まらん状況らしい。

 親譲りなのか何なのか、おれは普段から結構眠れない方だったりする。とにかく寝つきが極端に良くない時がしばしばある。ここに年明け以来の肩凝りの悪化が加わってホント、苦しい状態がズーッと続いてたのだった。せっかくようやくちょと寝れたなって思っても、寝返り打った瞬間に「アイタタタタ~ッ!」ってなって、激痛で目が覚めちゃうのである。元々昼間は職場で寝てばかりなのが(笑)、マジでズーッとうつらうつらしてるような状況になった。集中力なんてこれっぽちも湧いてこない。文章呼んでもサッパリもぉアタマに入らない。アイデアも駄文も何も纏まらない。肩凝ってる側の目はいつもナミダ目になったりさえもしてる。ヒドくなると肩の反対側の足先が痺れたりもする。いやもぉガチでボロボロだ。

 溺れる者は藁をも掴む、イワシの頭も信心から・・・・・・そんなんで困りあぐねてヨメに噂のその1000とやらを買って来てもらったのだった。6本で900円とかメチャクチャ高い。ヨメが言うには自分の買ったパックで最後だったとのコトだ。やっぱし売れてんだな。
 何が1000なのか?っちゅうと、一瓶に入ってる乳酸菌の個数が1000億個なんだそうな。1ccに10億個!一般販売用は110ccだから厳密には1100億個なんだろうけど(専売品は100cc)、まぁややこしいから1000で統一してるんだろう。

 そんな即効性のある薬でもなし、サプリみたいなモンで1日や2日飲んだって効かんだろう、ってコトで取り敢えずは1パックを、飲み忘れた日もあったんで1週間少々掛けて飲んだ。次の分も幸い、近所のスーパーで1パックだけ残ってた。どうやら売れまくってるせいで配送が遅れるのか、開店しばらくしたあたりに棚に並んでるみたいだ。
 効いてるのか効いてないのかサッパリ分からない。余りの辛さに耐えかねて相前後して鍼灸院に通い始めたのもあって少し肩はラクになり、それでちょっとは眠れるようになったのもあるから、ヤクルト単体での効果は不明だ。幸い悪夢は見ないものの、そこまで騒がれてるようなドラスティックな何か変化みたいなんはまだ訪れてない。"Something Came Over Me"とは行ってくれん。”Was It White and Sticky ?”ってか。たまに気分転換にR-1やらLG21、ガセリその他もためしてみたが、これらは乳酸機飲料の味ぢゃないんでイマイチ面白くないかも。

 そんなこんなで甚だ飛び石ながらヤクルト1000は3パック目か4パック目になった。1ヶ月半くらいだったかなぁ~?まぁ、そぉ言われてみれば少しは良い方に向かってないことはない気がしないでもない、くらいやね・・・・・・「ぺこぱ」の漫才かよ!?

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 ・・・・・・しっかし、そもそもどうして乳酸菌ってそんなに身体に良いんだ!?

 よくよく立ち止まって考えてみると、単に子供の頃から何となくそぉゆう風に刷り込まれちゃってるっちゅうだけで、明確な説明をそういやついぞ聞いたことがない。改めてネット越しに調べてみたところ、次のようなことが判明した。雑駁で順不同だけど、少し箇条書きで列挙してみる。

●乳酸菌の効能は大正の半ば、メチニコフってロシア人学者がブルガリアに長寿が多いってことから唱えた仮説。
●ただ、メチニコフ自身は毎日大量にヨーグルト食ってたものの、70歳少々で死んだ。
●発酵乳自体はチーズなんかと同様、元々は保存性のために生まれて来たモノ(カツゲンもそんな目的だった)
●ブルガリアがそこまで長寿って統計的なデータは、実はない。
●日本ではヤクルト創業者の代田稔が昭和の初めに耐酸性の強い株を発見して、その後事業化
●日本には給食に見られるように、一種の牛乳万能栄養信仰が昔からある。
●一方で牛乳そのままだとおなかを壊す人が昔は多かった。発酵乳だと比較的それが少ない。
●「生きて小腸に届く」コトが、だからどうなんだ?っちゅう明確なエビデンスは、実はない。
●ただし、免疫力を高める効能はある。
●所謂「悪玉菌」を駆逐する効能はある。
●ところが実は死菌でもこれらの効能はあったりする。
●乳酸菌数を高濃度にすると効き目が上がる、というエビデンスはない(400を3本飲めば1200億だ)。
●1000で驚いてる場合ではない。死菌だけど1兆個っちゅう製品がチャオちゅーるで有名な「いなば」から出てる。
●ただ乳酸菌は常住菌ではないので、摂取数は継続的に多い方が良いのではないかと考えられている。
●そんなに身体にとって良いヤツなら常住菌になれそうなモンだが、そうはなってない。
●シロタ株以外にも生きて小腸に届く乳酸菌株は、その後いくつも見付かっている。
●シロタ株が他の株(ピルクルのNY1301株、等)より優れて有効であるというエビデンスはない。
●最近の研究で、腸と精神の状態には何らかの関連性があるらしいということは判明している(腸脳相関)。
●実際、ドーパミンやセロトニン等、感情ホルモンの多くが腸内で生成されている。
●鬱病患者の腸内細菌数は統計的に少ないコトが多いらしい。
●腸内細菌のないラットは無気力で不活性らしい。
●「腹が立つ」・「腹を括る」等、古来、人間は経験的に腸と脳の相関性を理解してるようである。
●しかしながら乳酸菌がそうしたメカニズムにどう作用するのか、そもそもするか/しないかは分かっていない。

 これらの断片を繋ぎ合わせて行くと見えてくるコトが2つある。乳酸菌はもちろんプラシーボとまでは言わないけれど、そんなに恭しく頂戴せにゃならんほどの効能は見込めないってコト、そして本家ヤクルトの値段の高さは効能よりもむしろブランド代だってコトだ。結論は出た。

 すっかりアホらしくなったおれはヤクルト1000を止めたのだった。ブランドに金払うんなら腕時計とか買った方がまだマシだし、お布施なら近所の神社に再選挙げてる方が余程精神衛生上エエやんか。そんなんで今は菌の数で換算すると実勢価格が半額以下のピルクル飲んでるが、これもそのうち止めそうな気がする。でもまぁ、あんましすぐに止めると、「飽きっぽい」だとか「長続きせんよねぇ~」とか呆れ顔でヨメにディスられそうで、それはいささか悔しいし、もぉ少しだけ引っ張ろうかな?ってのが目下の気持ちだ。

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 かくしてヤクルト、またそれに類する様々な各社の高機能性乳酸菌飲料をしばらく飲み続けて、一つだけ効果としてハッキリしたことがある。これはもぉ絶対に間違いない。

 ・・・・・・肥ったのだ(笑)。整腸作用だけは確実だな。


一時期、どこ行っても入手困難だった明治の「R-1」。分類上は発酵乳、つまりヨーグルトになる。

2022.06.19

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