筍の春 |

食べないで放っとくと大変なことになるんで、積極的にタケノコは掘った方がいい。
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https://kasuitei.jp/より
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竹カンムリに「旬」と書いてタケノコなんだから、やっぱしこれは旬のモンなんだろう。春は新芽の季節であるからとにかく他にもいろんな山菜類が豊富に出回る時期なんだけど、タケノコはその中でも別格の存在だと思う。それが今では大量に中国産の水煮なんかが年がら年中出回ってたりするもんだからポピュラーになり過ぎて、あまり春野菜としての季節感やプレミアム感が薄れてしまい、実態は単にマイナーでほろ苦いくらいしか個性のないような葉っぱ系の山菜がドヤ顔してたりするのがいささか残念に思う。
春から初夏にかけてのタケノコは本当に驚くほど美味い。春の山菜の王様ではなかろうか。今日はそんなタケノコについて。
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思えば竹ってぇのがそもそもかなり変なヤツである。植物の種類としては意外にもイネ科に属するらしいんだけど、120年に一度だったっけ?一斉に花が咲いて枯れる、なんちゅう良く分からないライフサイクルで、一般的な植物とはずいぶん違う奇妙な姿かたちで(親戚に当たる笹はまだフツーな感じがするな)、冬でも青々してて、そして異常なまでに成長が速い。繁殖力が強くて、放っておくと放埓に他の木の森を侵食してったりもする。獰猛でちょっと不気味なまでの生命力を宿してる感じがある。
古本屋に売り飛ばしちゃって手許に残ってないので記憶があやふやだけど、昔、竹についての本を読んだら、日本に生えてる竹はすべて人工的に植樹されたモノだって書いてあった(笹は元々ある)。竹は熱帯地方がルーツであり、遥か遠い昔に人間によって海を渡って大切に運ばれてやって来たんだそうな。
だってドンドン成長して家の建材にもなればあらゆる道具の素材にもなり、タケノコは食えるし、縦横無尽に張り巡らされる地下茎はヘタな鉄筋コンクリートも凌ぐ強靭さで地盤を守る。だから古代の人にとって、竹はものすごく価値のある財産だったんだ・・・・・・ってな風にその本には書かれてあった。
なるほど竹林が無人の山中に自生してるなんて見たことも聞いたこともない。もしあったならば、そこにはかつて人が暮らしてた、ってコトの証拠にさえなるらしい。実際、集落の近くの竹林を見てみると河岸とか背後の斜面とかにあるコトが多い。つまりはご先祖様が護岸とか斜面の養生とかの目的で、かつてそこに意図的に植えたのだ。先人の知恵、っちゅうこっちゃね。ところが好事魔多し、あまり深く根を張らないコトが災いして、放置しておくと竹林全体で地滑り起こしたりとかがあるらしい。
ともあれこんなにも用途の広い竹なのに、おれの趣味の世界を見渡してみるとまだあまり成功していない気がする。まずは楽器。そりゃぁ古典的な民族楽器では随所に竹が使われてるのは知ってるけど、もちょっと近代的なギターやベース、タイコの素材になっても良いのではなかろうか。ギターだとチャーのプロデュースしたESPのアコギが自分の苗字(竹中)にちなんで竹が使われてたり、一時期ヤマハが竹素材に拘ってギターもドラムも竹製のをリリースしたことがあるけれど、そんなにマテリアルとして普及したとは言えない状況だ。コイケドラムあたりで作らんかな?スノボでも過去にK2やエランが竹のコア材の板を出してたが、これまたあんまし一般的にはならなかった。何かやはり、安定的で均質な工業製品にするには課題があるのかも知れない。
タケノコからドンドン脱線してしまっちゃったなぁ~・・・・・・ま、いつものことか。
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肝心のタケノコについてだ。
タケノコの最大の問題はアク抜きにある。実は掘ったその日のうちに食べるのであれば、アク抜きの必要なんて全然ないんだけど、なかなかそこまで新鮮なモノは市中に出回ってないから、結局は米糠や唐辛子で長時間茹でなくちゃならない。茹で時間自体は45分から60分くらいなんだけど、水から沸かし、茹で上がってからも自然に冷めるのを待たんならんので、何だかんだでこれだけで半日仕事になってしまう。これがとにかくめんどくさい。それに昨今の核家族化の進んだ家庭ではく、タケノコが入るだけの大鍋が無かったりもする。実際、アク抜きの面倒さで言えばワラビやゼンマイ、フキなんかもそらまぁ大概なんだけど、鍋の大きさでは悩むことはないモンな。
しかしここを丁寧に下拵えすると後が一味も二味も違う。
でも違いとは何か?って訊かれると、「タケノコ特有の風味です」としか言いようがない。アホな答えですみません。ホント、タケノコの味って竹がいろんな植物とは根本的に異なる姿かたちであるのと同じく、他のどんな野菜類とも似てない唯一無二のモノだ。繊細なのに妙に力強く、香ばしいと言っても良い匂い、ほのかな甘さと、土臭さとはちょっと違うクセ・・・・・・どれをとっても独特だと思う。
そんなタケノコの食し方でおれが好きなのを列挙してみたい。
まずは焼きタケノコを挙げたいトコなんだが、残念ながらこれは下茹でしたのではあまり美味しくない。昔、「美味しんぼ」でタケノコ山を一山丸焼きにする話ってあったけど、皮の付いたそのままを丸焼きにして先っぽ近くの軟らかい所を食べる。塩だけで十分である。ひじょうに濃密な味がする。タケノコそのものを味わいたいんなら何としても朝掘りのをゲットして、まずは焼きではなかろうか。
その次に好きなのは天麩羅だな~。これも下茹でしてないモノで作った方が断然美味い。基本は真ん中近くを縦に薄く切って櫛型になったのを揚げる。油との相性が良いのか、かなり香りが強く出る。ああ、根っ子に近い硬い所を薄く輪切りにして薄く粉をまぶしてカリカリに揚げても美味い。
でも、素直に春を感じたいならばやっぱタケノコご飯だろう。不思議なことにアサリご飯なんかもそうなんだけど、春の食材の炊き込みご飯のコツは、とにかく薄味に仕立て、あれこれ他の具材を入れない、っちゅうコトに尽きるんぢゃないかっておれは思う。基本、酒と塩、ホンの僅かの薄口醤油くらいで、ほぼタケノコの味だけで食べるくらいの気持ちの味付けが望ましい。上には木の芽(葉山椒)を載せるのが習わしではあるけども、タケノコの味だけを純粋に味わうならば、別に無くたって構わない。
山椒と言えば、木の芽味噌和えなんてのもポピュラーだろう。おれも大好きだ。ただ、この料理はおれ的にはあくまで鮮烈な山椒と味噌のコクが主役ではないかと思ってる。だって、芋でもレンコンでも同じようにしてこの味噌で和えたら美味いもん。
若竹煮も定番の一品と言える。しかし、これについておれはまだ納得の行く出来栄えのモノを作れたことがないんで、多くは書けない。いやいや、ホントこれもめっちゃシンプルな料理なんだけど、カツオの出汁の利かせ方とか甘さとか、ワカメの食感とか真面目に作るとスゴくむつかしいんですよ。似たようなので土佐煮っちゅうて、汁気を煮詰めて炒り煮にして鰹節まぶしたヤツの方がまだ簡単かもしれない。
中華の炒め物にしてももちろん美味い。美味いけど、通常の千切りとか小さな賽の目はシーズン外れの水煮パックでやればいい。この季節は敢えて根に近いあたりを大きめに切って、ゴリゴリした食感を強調するくらいにした方が断然美味い。味付けは甘酢だとそっちが勝っちゃうんで、塩餡か青椒肉絲系の味付けの方がよりタケノコの風味を味わえる気がする。
もちろん、最後の吸い物もタケノコだ。ご飯と同じく、余計な他の具材入れず、ほぼ出汁だけの薄い味の方が美味い。う~ん、でもハマグリとタケノコの吸い物なんて春らしくって美味いよなぁ~・・・・・・ハハ、矛盾だらけやな(笑)。
そう、力強い味なのに、濃い味付けはあんまし合わないんですよ、タケノコって。
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ナンギな疫病が流行りやがったせいで、今や日本中が出掛けることもままならない状況に陥ってしまってる。実に忌々しい。チョビ髭といい顔立ちといいまるで月亭可朝みたいな、テドロスとかゆうひじょうに胡散臭いのをトップとする中国の走狗団体が、デタラメ極まりないナビゲーションしたせいでこのザマだ。
宿泊業も飲食業も軒並み休業しちゃってる。なのにタケノコは今年は当たり年で大豊作らしい。そんなんで庶民にはありがたいことに、皮付きの立派な国産タケノコが比較的安価で市中に出回ってる。
まぁスーパーに行って買い物するのは最低限構わないんで、持ち帰るにはちと重たいが、タケノコをご家庭で料理されて春気分を味わって、せめてもの無聊の慰みとされてみては如何だろうか。ヒマな年寄りや転売ヤーに交じってイライラしながらドラッグストアとかで行列に並ぶよりはよほど健康的だと思いますわ。下拵えさえしてしまえば冷蔵庫でケッコー持つから、しばらくは愉しめると思いますよ、タケノコ。 |
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2020.04.18 |
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