嗚呼、弁当箱 |

ネット上でこれ見付けて、おれはちょっと泣けた・・・・・・良く見ると小判型ではなく変形八角形なのね。
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https://blogs.yahoo.co.jp/musi_musi_kirai/より
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新学期を迎えたりする関係で、春になると弁当箱が売場に沢山並ぶようになる。
おれはこの弁当箱っちゅうのが中身と同じくらい大好きなのだけど、残念ながら今は日々の生活で特に必要ではない。殊に都内だとラーメン・饂飩・蕎麦、和洋中のみならず、その気になればエスニックなものまで各種定食を食べるトコがいくらでもあるワケだし、コンビニへ行けばサンドイッチや弁当が山積みに売られている。仕出し屋だって隆盛を極めており、有名な「玉子屋」なんて毎日実に7万食を配送してるという。つまり敢えて弁当を持ってく必要が無いのだ。
実際、おれのように街中に通勤するリーマンで弁当を必要とする人って、一体全体どれくらいいるのだろう?って思ってしまう。多分、ものすごく少なくなったのではなかろうか?それでも持ってくのは、例えばアレルギーがあって食べられないものがあるとか、ダイエットに励んでるとか、倹約に努めていて外食は出費がやはり嵩むからとか、極端に高層階のオフィスで下まで降りて戻ってると昼休みが無くなってしまうとか、工場勤務とかでいちいち着換えて外出してられないとか、何がしかの理由がある人くらいではないかと思う。
学校なんかも今は給食が普及したから、昔ほど弁当を持ってく子供は減って来てるのではなかろうか。ああ、高校で食堂完備はまだまだ少ないだろうから高校生の多くは持ってってるか・・・・・・毎日売店で焼きそばパンばっかし買ってるっちゅうのも極端だろうし。そぉいや姫路の「わんずまざー」とかゆう強欲で吝嗇な保育園がロクすっぽ園児に給食出してなかったって大騒ぎになってるな(笑)。
こうして考えくとと、この便利なご時世に逆に毎日弁当をどうしても持参せにゃならん人ってどぉいった人なんだろう?って思う。
林業に従事してるとか、山奥の高速道路の建設現場とかで働く人には要りそうな気がする。だって周囲に飲食店ないもんな。漁師もおかずの魚はまぁ釣り上げるから良いとして、ご飯くらいは持ってかんとアカンだろう。
想像力が貧困なのか、世の中が便利になりすぎたのか、ホントそれくらいしか思いつかいない。世のお母さん、奥さん方の労苦は減ったんだろうが、ちょっと寂しい気がする。
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さて、かつてそうして御飯を詰め込む弁当箱と言えば、アルマイトと相場が決まってた。アルマイトとはアルミ板の表面に酸化被膜を人工的に拵えて腐食しにくくしたもののことで、実はアルミ製品には通常このアルマイト処理がしてある。
大昔のは薄金色してたような記憶があるが、おれが初めて弁当箱を持たされた半世紀ほど前は既に今のような白っぽい銀色ばかりになってた。形は比較的小型な小判型と、A5サイズくらいの長方形の2種類くらいしかなかったと思う。いずれも深さは3~4cmくらいで1:2くらいのところで仕切る薄い板が付いてた記憶がある。広い方のスペースがご飯で、狭い方のスペースがおかずってコトだ。後、ゴムのパッキンが付いた密閉出来るおかず入れみたいなのもあったっけ。
ともあれ現代の弁当箱のヴァリエーションの豊富さからすると、当時はサイズも形状もそんなんで随分シンプルなモンだった。ああ、蓋にはワンポイントのアクセントで花柄の絵とかが良くあしらわれてたな。子供向けには今と変わらずTVのキャラが描かれてることが多かった。幼稚園に通うおれが持たされてた小さな小判型の弁当箱はケロヨンだった・・・・・・そ、孤高の影絵の巨匠・藤城清治の生んだキャラクターである。ハッキリ覚えてないのだが、おれはこのTV勃興期の傑作である着ぐるみドラマの「ケロヨン」が大好きで、食い入るように観てたらしい・・・・・・っちゅうか病弱で家に居ることが多かったおれは本読むかTV観るかばっかりだったから、どんな番組も食い入るように観てたのだけど(笑)。もう知ってる人も少なくなったろろうが、「ケッロヨ~ン」っちゅうて蛙のキャラが主人公なのだ。
そこに母親は朝早くから、ひじょうに手の込んだ盛り付けをしてくれてた。お弁当の本なんかを買い込んで、たこウインナーは当然として、海苔を髪、黒豆を眼、梅肉を口に見立てて顔にしたおにぎりや、小さなハンバーグと錦糸玉子やチーズで向日葵を表現したりと、今で言うキャラ弁みたいに仕立ててたのである。全ては異常に偏食の激しいおれの好き嫌いを少しでも直そうって親心だったが、それでも食えないモンはどしたって食えないワケで、今から思えば実に申し訳ないことをしたと思う。
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「弁当箱=アルマイト」の時代は結構長く続いてたような気がする。新興住宅地の小学校は急増する小学生に給食センターの建設が追い付かず、3年生までは弁当だったが、みんなアルマイトの弁当箱持って来てた記憶があるし、中学校になってもタッパウェアなんてのはまだまだ少数派で、殆どがアルマイトのを持って来てたと思う。
この頃になるとおれの病弱もスッカリ収まり、それで暴れ回ってハラも減るもんだから偏食も自然と克服され、母親曰く「アンタは弁当手ぇ抜くようにしたら急に食べるようになった。ホンマ張り合いないわ~」などと呆れられたもんだ。
その頃、つのだじろうの恐怖短編シリーズで「亡霊学級」ってのが始まる。その中の一話に「虫」っちゅう弁当ネタの話があって、とても印象に残った。いつも弁当のフタを立てて中身を隠すようにして食べてる、芋虫を思わせるモソモソした小太りの冴えないヤツがいて、いじめっ子が冷やかしてそのフタを無理矢理取り上げると、その食ってるのがギッシリ詰められた芋虫で・・・・・・ってな気色悪いストーリーだった。ちなみに一部の芋虫は焼いて食うとひじょうにコクがあって美味いらしいが(笑)。
いささか話が脱線したが、そこに出てくる弁当箱もアルマイトの長方形のだった。だからこそ立てて本体部分に咬ませることも出来たワケだ。たしかに中学校とかになると、中身を他人に見られないようにフタを立てて必死で隠して食ってるのが一人や二人いたものだ。その中には本当に芋虫入ってるヤツが居たかのも知れないな(笑)。
なるほど実際、弁当の中身にはその家の経済状態や親のセンス、子供への手の掛け方が如実に表れる。それは紛れもなく事実だろう。おれが通ってたのは公立中学だったから、様々な家の子が来る。以前書いたTさん弁当なんてのは極北の事例だろうが、まぁ客観的に見てやはりどしたって粗末でおざなりなのもやはりあった。
そんな弁当について、井上ひさしが「家庭口論」とゆうエッセイの中でとても良いことを書いている。
終戦後、色んな事情があって彼は弟と共にカトリック系の孤児院に預けられて育った。意外なことに、猛烈な食糧難の時代であったにも拘らず、施設が拵えて学校に持たされる弁当は米軍の放出品が潤沢に回って来てたのと、神父たちが私腹を肥やすことなくそれらの物資を子供たちに回してくれた関係で、バカでかいウインナーがドーンと入ってたりしてとても豪華だったらしい。むしろ、その辺の農家から通う子の方が粗末だった。
しかし彼は書く。たしかに自分の弁当の方が豪勢だったが、何か細かい部分で大味で殺風景だった。つまりおざなりだったのである。逆に他の子の粗末な弁当の隅っこにちょっとした佃煮や漬物、昨日の夕食のおかずの残りなんかが添えられてたりする。そしてそれこそが家庭の暖かさなんだ、と。恐らくそんな孤児院の弁当も農家の子の弁当もアルマイトだったと思われる・・・・・・農家だから曲げワッパかな?
ああ、マンガで弁当箱っちゃぁもっとダイレクトな例があった。「亡霊学級」が連載されてた少年チャンピオンでほぼ時を前後して連載が始まった、おそらくはポスト「巨人の星」の野球漫画の金字塔である「ドカベン」だ。水島伸司はこれで野球マンガ家としての地位を確立したと言っても過言ではなかろう・・・・・・って、最初はこれ、柔道マンガぢゃなかったっけかな?記憶が定かではないが、何か色々あって路線変更したような。
・・・・・・で、タイトルは単純明快、主人公の山田太郎がデカい弁当をいつも食ってるから「ドカベン」なのである。その弁当箱も言わずもがな、アルマイトのだった。ちなみにドカベンとは、本来は土方のムチャクチャ大容量の弁当の略だ。
あ~話が逸れまくってる。ホンマおれの文章って漫談だなぁ~・・・・・・。
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今でもアルマイト製はもちろん残ってるが、むしろ少数派になってしまった。大抵が樹脂製で、形も絵柄もサイズも実に豊富だ。それだけでなく、密閉性が高いのはもう常識で、保温できたり、蓋が保冷剤になってたり、キチンとスタックできて食べ終えたら入れ子で小さくなったり、箸だけでなくスプーンやフォークまでビルトインして仕舞えたり、実に色んな種類が売られてる。
逆にレトロな木、竹籠、高いのになると漆塗りなんてのもある。ステンレスで出来たカレーも入れられる密閉タイプなんてのもあるし、どんぶりをそのまま保温して弁当に出来るようなのもあれば、味噌汁まで持ってけるのもある。良い時代になったなぁ~、ってつくづく思う。
そうして売場で足を停めて様々な弁当箱に見入ってると、ヨメにいつも笑われてしまうのだ。
------ホンマ好きやねぇ。でも、仕事行くのに別に要らんやんか。
------まぁ、そやかて何かテンヤモンより味あってエエやんか。
------・・・・・・で、誰が作んのん?
------オマエ。
------勘弁してよぉ~!ただでさえアンタ早いのに、ワタシ、何時に起きなアカン思うのん!?
------・・・・・・スンマヘン。
------木こりにでもなったら?そしたら買って作ったげるわ!
では今日はこの辺で。バッハハァ~イ♪ |

重箱ではない個人用弁当箱では最大容量と思われるもの。何と1.67ℓ!
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2017.04.02 |
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