ANARCHY IN THE SOUP・・・・・・スープカレーにハマる


・・・・・・これ、どこだったっけな?

 食べることが大好きな、それもトウガラシや山葵、山椒、マスタードといった激辛で刺激的なキワモノをこよなく愛するおれがこの地に住んで触れんワケにゃいかん食い物がある。言うまでもなくスープカレーだ。
 近頃はずいぶん東京近辺にも出店が進んで、ある程度は知名度も上がってきてるとはいえ、全国区ではまだまだマイナーなこの奇妙な食べ物に、当然ながらハマッてる・・・・・・って、三度三度ちゅうほど足繁くあちこちの店を訪ね歩いてるんでもないけど、それでもまぁ月に数件は行ってる。少なくともラーメン屋に行く頻度よりは高い。

 今日は札幌が生んだ、この摩訶不思議なスープカレーなる食い物について書き飛ばしてみたい。

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 知らん人のために、そもそもスープカレーって何だんねん?ってトコから始めんといかんだろう。

 外見的に言うと、固めに炊かれた皿に盛られたライスと、大きな鉢にやわらかく煮た骨付きの鶏腿肉を中心にいろんな野菜を素揚げしたものが添えられた上から、熱々でサラサラのカレースープを注いだもののセット、ってことになる。所謂トロミのついたカレールーとは見た目も味付けも異なっており、ほとんどの店に共通して特徴的なのは辛口が基本なことと大量のバジルのクセのある香りと言えるだろう。

 その起源は案外古く、70年代初頭にまで遡るらしい。最初は店の賄いだったとも言われる。ブームに火が付いたのは90年代くらいからで、北大の連中が中心になって広めたんだそうな。ウソかマコトか、ピーク時には実に札幌市内だけで300軒もの店があったとか。今はだいぶブームが落ち着いたのと淘汰が進んで減っている。とはいえ、それでも100軒は優にあるんぢゃなかろうか。

 メインは鶏腿肉と申し上げたけど、そこに必ずしも絶対的な決まりがあるワケではない。手ごねハンバーグを売りにしてるところもあれば、フィッシュフライ(メルルーサっちゅう、アレ)をドカンと入れるところ、豚肉を軟らかく煮たもの、ソーセージ、ベーコン、つくね、肉団子、ミンチ、豆腐、厚揚げ、海老フライ、ステーキ、茹で玉子、納豆、チーズ・・・・・・何でもいいみたいだ。
 添え物にしては異常なまでに大量の野菜にしたって、およそスーパーで普通に売られてるものは何でも入ってる。ジャガイモ、玉ネギ、人参、茄子、ピーマン、パプリカ、ズッキーニ、ヤングコーン、オクラ、水菜、アスパラ、三度豆、さやえんどう、トマト、貝割れ、山芋、ブロッコリー、カリフラワー、南瓜、牛蒡、蓮根、エノキ、シメジ、舞茸、エリンギ・・・・・・キクラゲやもやしが入ってるのを見たこともある、ラーメンかよ!?揚げ餅や春雨がアクセントの店もあったかな??

 んでもって食べ方も千差万別。ちょっとづつスープをスプーンですくってはメシの上にかけて食う人が多いような気がするが、逆パターンもあるし、最初からライスを全部スープの中にブチ込むツワモノもいる。ちなみにおれはスープを啜って、具を食って、飯食ってを繰り返し、最後少しご飯もスープも残しといて、それを混ぜて食うことが多い。つまりこれまた決まりがあるワケではない。最近は「らっきょ大サーカス」って店があろうことか「おこげ」まで始めた。こうなるともう、中華か何だかわからない。

 ダシにしたって鶏がらスープもあれば、トンコツ系のラーメンに近いところ、和風ダシに近いところ、様々である。シッカリ出汁が効いてカレー味のものに不味いモノがあるはずない。トマトベースで、サラサラというにはちょっとドロッとした感じのがウリの店もあれば、すりつぶしたエビの殻や味噌でコクを出したスープがウリの店も多い(個人的にはあまり好きではないが・・・・・・)。

 辛さの段階の付け方も店によって異なる。10倍とあっても楽勝で食える店から、涙流しながら死ぬ思いをする店までバラバラで、できればこれくらいは分かりやすく統一してくれりゃなぁ、と思うことがしばしばだ、単に唐辛子が増えるところもあれば、何かいろいろ混ぜたものを使ってたりもするし、唐辛子の種類が違うっちゅうこともある。上に書いたように基本辛口が多いので、辛さに弱い人は最も注意が必要なトコだろう。

 ・・・・・・とまぁ、つまるところ、何をやっても自由なのだ。サバンナの高橋にギター抱えて歌わせたいくらいに自由なのである。いや、自由っちゃ聞こえはいいが、むしろ放埓とか無秩序に近いようにも思える。最早、ライスとスープが別々っちゅう以外は殆ど料理としての様式の崩壊寸前にまで行ってると言えるかもしれない。

 実はおれはそのいい加減さが大好きだ。そぉいえば店主にこれまたいい加減そうな、酒井法子の元ダンナみたいなタトゥーバリバリの遊び人でヤサ男タイプがひじょうに多いのも何となくおもろい。いやもぉホンマ、食後のドリンクにバングラッシー頼んだらホンマに出て来るかも知れんな(笑)。何せ北海道は原野に行くと生えてるから。

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 これだけ多種多様な発展をしてる一方で、カレーっちゅうのはそれだけでひじょうに強烈な個性も土台の部分で持ってるものであるからして、どの店もどんぐりの背比べ的なところもある。個性的なんだけど個性を打ち出しにくい、っちゅうか、まぁ良く言えばアタリハズレが少ないのである。全く知らん店にいきなり入っても大ハズレだったってことがない。
 オマケにおしなべて安い。原価率が低いのかテナント料が安いのか、マトモに働いたことなさそうなチャラ男を安い人件費でこき使ってるからなのか、大体千円でお釣りがくる。ムチャクチャ大盛りにしてトッピング所狭しとあれこれ追加して辛さを目一杯上げても1,500円でお釣りがくるくらいだ。昼に今書いたようなの食うと、晩飯まで要らなくなるから、ある意味、とても経済的と言えるだろう。

 詰まるところ、ハッタリだらけのように見えて意外なまでに実直でいいヤツなのである、スープカレーは。

 私事で恐縮だけど、ヨメもこっちに遊びに来ると、ラーメンよりジンギスカンより海の幸よりスープカレーを愉しみにしてたりする。曰く、「サラッとして後口が意外にいいのに猛烈に辛いトコがいい」のだそうな。みなさんもこの地のお越しの際は、是非とも試して欲しいものだ。

2012.07.27

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