幸せな焼きソバ |

真の焼きソバ日本一は横手でも富士宮でもなく滋賀県は大津にある「美富士食堂」と言われている。
・・・・・・いやまぁ、量のことだけど(笑)。
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http://blog.livedoor.jp/tonsan01/、http://blogs.yahoo.co.jp/dotechin0122/より
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焼きソバは一見簡単そうで、それはそれは奥が深い料理だと思う。未だかつておれは自分で100%満足の行く焼きソバが作れたことがない。
別段、中華料理の「炒麺(ソーミェン)」のことを言ってるのではない。フツーのソース焼きソバ、アレがむちゃくちゃに難しいのである。野菜のチョイスと肉気、それらと麺の量とのバランス、火加減、油の量、火の通し方、麺投入のタイミング、そこからの炒め具合、味付け、青海苔/紅生姜/鰹節の加減・・・・・・これほど単純なのに完璧に拵えるのが困難な料理も珍しい。
そこまで拘りがあるのは、要するに好きだからである。いや、おれより焼きソバが好きなのがいる。ヨメだ。要は夫婦揃って焼きソバが大フェバリットなのだ。そんなんでこれまであれこれ工夫してきた。
今日はそんな苦闘の日々の記録をまとめてみたい・・・・・・って大層やな。
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まず大事なのは野菜のチョイスだ。結論を最初に言っちゃうと、余計なものをあれこれいれずシンプルにキャベツのみどっさり!がいっちゃん美味い、ってーのが目下の結論である。
モヤシはわりとお店でもよく使われるけど、どぉにも水気が出やすいのがよろしくない。葱は醤油味の焼きうどんには良く合う気がするがソース味の焼きソバにはどうもも一つシックリ馴染まない。お好み焼きやたこ焼きには合うのに理由が分からないが、合わないモンは合わない。ナポリタンには欠かせない玉葱・人参・ピーマンも、ありゃケチャップ味だからこそ合うのではなかろうか・・・・・・ただし、これらは個人の趣味趣向や育った家庭での味、ってーのもあるんで、これらキャベツ以外の野菜が入ってなきゃ焼きソバぢゃねぇ!って主張する御仁がいても少しも構わない。最高の調味料の一つには「思い入れ」ってのがあるんだから。
とは申せ、複数の野菜派の人にこそ一度、キャベツだけに絞った味を体験していただければ、と思う。
肉類は何が良いか?も百家争鳴の一大事だ。おれ的には一番ベーシックな豚肉、それもバラと呼ばれる脂身が多目のが一番美味いと思う。牛肉はクセが強すぎる。鶏はバサバサしてそもそも合わない。ハムやウインナーはそれはそれで懐かしさがあって良いけど、ちょっと弱々しい。お好み焼き屋では高給グレードに海老やイカ、タコ、ホタテの類を入れることもあるが、旨味が生地に染み込むお好み焼きならいざ知らず、焼きソバの場合、炒めることでどんどん旨味は逃げるわパサパサで硬くなるわなので合わない。変わったところではカマボコや竹輪なんてーのを刻んで、あるいはシーチキンをほぐして入れる、っちゅうのも聞いたことあるけど、果たしてどうなんだろ?
麺はぶっちゃけどうだっていい。最近は特売で黄色い蒸し麺3玉入りのが98円で売られてたりする。あれで全然OK。1玉づつ袋に入ってるから、あらかじめレンジでチンしておくとほぐれやすい。大抵の場合、粉末ソースもついてるので、これはサッと入れられるように口を切っておく。
これで食材の準備は出来た。何せ手際が命!な料理なので、速やかに調理に移る。
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それらを全開の強火にやや多目の油で炒める。鉄板がなければフライパンでいい。まずは肉だ。欲張って沢山はいけない。旨みが出れば充分。油が熱せられてうっすら煙が上がったら細かく切ったバラをペッと放り込んでジャカジャカ。
一方、キャベツはこんなにブチ込んで大丈夫なのか!?ってくらい入れる。また、事前に洗ったらとにかくよく水を切っておく。麺一玉に対して数センチ角に切ったのをガバッと一掴みくらいが目安だろう。それを肉の色が全部変わったあたりで間髪を入れずに投入!こぼれるの焦げるのも気にせず手早くガーッと炒める。
この辺は炒め物の基本である「手早さ」が何より大切で、イジイジ・グジュグジュ掻き回してると、すぐに野菜から水分が流れ出してベチャッとなってしまう。とにかく恐れることなく強火をキープだ。イメージとしてはキャベツを油通しするような感覚だと思う。要は熱い油の膜がキャベツの表面に出来ればいい、みたいな。
だから麺投入はさらに手早く実行せねばならない。緑色が若干濃い、葉っぱの薄い部分が半透明になりかけたら躊躇うことなくすぐに入れる。芯に近い厚いところはまだ生ちゃうんかい!?などと泣き言を言ってはいけない。それはここから後のフェーズで充分火が通るんだから。
麺を入れたらキャベツとナカナカ混ざってくれないのでイライラする。しかし、慌てず騒がずジャカジャカ。麺はチンしてあるから、実はそんなにこねくり回して火を通す必要はない。
味付けはまだか!?これはなるだけ最後の方だ。引っ張りまくれ。早めに入れると塩分の浸透圧でやはり水気がドンドン流れ出すからである。また、粉末ソースは少量の水を加えろ、なんて書いてあるが無視。野菜の水分だけで充分行き渡る。
ここで悩ましい問題がある。添付されてる粉末ソースだけだと、麺と具材の量に対していささか少ないのである。なもんで、そのままだとなんとも味が薄い。この動かしがたい事実は永年おれを苦しめてきた。仕方なくソースを足すのだが、それだとどうにも美味くない。ウスターだろうが中濃だろうがトンカツだろうが、あるいはイカリだろうがブルドッグだろうがオタフクだろうが、どれもダメなのである。醤油を隠し味にいれたこともあるがやはりダメ。
思いあぐねてある日、不足分を塩コショウだけにしてみた。そしたら不思議とこれが美味かった。理由は分からないが、ソースの味を控えめにした方がソース焼きソバは美味いんだ、っちゅう我ながら逆説的な結論に到らざるを得なかったのである。ウソだと思うのなら一度試してみていただきたい。まぁ限度はあるだろうが、味が薄いときは塩コショウをベースに、それでもあまりにソース味が足りないな、と思ったらホンの僅かソースを加える・・・・・・それくらいで充分だ・
おお!大事なことを忘れとったがな!玉子をどうするかだ。これは人によっては一大事だろう。横手の焼きソバはあまりにも甘ったるくておれはあまり美味しいとは思わないのだが、あそこの場合は目玉焼きが添えられて初めて完成すると言っても過言ではない。玉子の有無は重要なポイントなのである。
エラそうに言いつつおれ自身は基本、玉子入れない派だったりする。ちょっと寂しくて欲しいと思った時など、別のフライパンで目玉焼きを作って上に乗っけることもあるが、混ぜ込むことはしない。しかし、焼飯のように混ぜ込んだ状態を好む人も沢山いる。もちろん否定する気は毛頭ない。ただ、玉子を溶いてキャベツを炒めてる所に流し込むのはどうかと思う。それだとどぉしようもないくらいベチョベチョな仕上がりになってしまうのだ。
最初に玉子だけを多目の油でやや軟らかめに炒めておいて別皿に取り、仕上がり前に混ぜ込んだ方が断然美味い。言うまでもないが、ボロボロの煎り玉子にしてはダメで、溶き玉子を流し込んだら大きく5つ数えて大きく掻き回す程度でいい。
ともあれ、ようやっと完成・・・・・・っちゅうても5分かそこらだろうけど。
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仕上がったら皿に取る。フライパンのままの方がいいとか、これも十人十色の意見があるだろうと思う。好きにすればいい。おれは皿に取るって、それだけだ。ちなみにお好み焼きは絶対鉄板のままだ。
そいでもって、トッピング類を載せる。青海苔は好き好きだと思う。紅生姜はないといささか寂しい。問題は鰹節だろう。お好み焼きには薄く削ったのより、鰹節粉が合うような気がする。たこ焼きは削り節が好い。何が好いのかっちゅうと食感の違いである。ぢゃぁ焼きソバはどやねん!?ってことになるが、おれは削り節の方が合うのではないかと思ってる。特に小さなパックに入った鉛筆の削りカスみたいなのより、大袋に入った一片がヒラヒラして大きなものをかけた方が良い。これもおそらく食感で、何となくキャベツの大きさと釣り合う気がするのだ。なお、マヨネーズは大好きだけどおれは焼きソバには入れない。
いやぁ~、ツヤツヤとエエ感じや~。湯気で鰹節が動いとるわ~。
薀蓄だらけでここまでやって来たが、最後に一つだけ拘りの薀蓄を傾けさせて欲しい。焼きソバにはご飯である。ビールは合わない。他のサイドメニューも合わない。実のところお好み焼きも合わない。味がカブり過ぎるからだ。ここはやはり白ご飯、それもお釜の形がそのまま残ったような大雑把によそった冷やご飯がナゼか不思議と合う。しかし、最初に書いた通り、いつもどこか問題点は残っている。
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焼きソバを拵えるくらいの時間の余裕。
そして大層立てずにチャチャッと掻っ込むくらいの軽やかさ。
次はもっと巧く作ろう、って反省と希望。
・・・・・・それって結構いい塩梅の幸せだ。 |

初めてこれ食った時は子供心にも「間違ってる!」って思ったな(笑)。
送り仮名が付かないのが特徴の「日清焼そば」
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2010.12.18 |
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