「加賀の温泉」と聞いて、皆さんはどのようなイメージをお持ちだろうか?団体オンリーの巨大旅館、芸者にパニオン勢ぞろいのお色気路線、ハデな歓楽街・・・・・・それらはいずれも、全くの間違いではないけれど、さてどんな立地なのか?と聞かれると、今イチ、ピンと来ない。茫洋として像を結ばない、針穴写真のようなもどかしさがある。
このイメージの湧きにくい点こそが、「加賀の温泉」の町並みの最大の特徴のように思える。どれも、日本海の単調な砂浜にうねりながら続く丘陵地帯に忽然と現れる、至って平板な温泉街なのだから。違うのは山中位だろう。
所謂「加賀温泉郷」は厳密に言うと、山中・山代・片山津・粟津の4つの大温泉がこれに当たる。さらに戦後派の芦原、小さいが歴史のある辰口、距離的に苦しいが、金沢の奥座敷・湯湧も含まれる。・・・・・・あ、雑学のネタが尽きた。
実をゆーとワタシ、こっちの温泉には滅法ウトいのであります。理由は先週と同じ。「いつでも行けるや」である。だから山代も今回始めてなのだ。
・・・・・・今は金沢で働く悪友のKは「ヘビメタ顔」の女の子に縁がある。ファッションでもヘアスタイルでもなく、顔がメタルな女とゆーのも説明に窮するが、彼の付き合って来た女性はともあれ、皆ヘビメタ顔なのだ。ちなみに本人は松福亭鶴光にソックリの、要はスケベそーなオッサンである。
そんな彼から嬉しそうな声でお誘いがかかった。ジェットスキーは口実で、新しい彼女を紹介したいらしい。まあ良い、こりゃ楽しかろう。
所ジョージを張り倒し/踏んだようなルックスのクセに、いつも違う美人を連れてるナンパの天才・これも悪友のOに、その何人目か分からん(数えるだけでハラが立つ)彼女。そして私と、当時はまだ彼女だった妻を加えた4人は、Kがどんなヘビメタ顔を連れて来るのかワクワクしながら、夏も終わり近い加賀に向かったのであった。
男の見栄か女の意地か、着替えてトランポから出て来た女3人、見事にハイレグ。何ぼ当時の流行り始めとはいえ、全員は珍しい。片やお笑い系の男3人。
どこまでも一直線に砂浜の続く海岸で、ビール飲んではジェットに乗り倒し、あちこちクラゲのミミズバレこしらえて、夕刻、ヘトヘトになって着いたのが、柴山潟を挟んで対岸に片山津の灯が望まれる小さな温泉宿だった。
これ又男の見栄だか何だか、恐らくその旅館で出せるであろう最もニギヤカな料理に、暗黙の了解で集まったのが、ギターにベースにキーボード、リズムボックス。オマケにアンプが2台。明らかに、旅館に持ち込む量を遙かに逸脱してる。後は、無数のワケの分からんゲームにオモチャ。
ホンマにリズムボックスがドンチャンと鳴ってたから、文字通り、ドンチャン騒ぎだったのだろう。あんましアホらしいので後は省く。
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1年後、私は結婚し、さらに翌年、Kもこの時の彼女と所帯を持った。Oは相変わらず独身だが、仕事が忙しく、以前みたいに「10分でゲット」や「5マタ」「毎週予算達成」といったナンパの怪人ぶりを発揮できないでいる。
皆、それなりに落ち着かざるを得なくなっていたのだ。
夏の海の記憶は、何故かどれも遠いものだ。今、こうして整理してみると、このバカバカしいエピソードは、あの茫洋とした加賀の景色にこそ似つかわしく、そして一層遠い。
・・・・・・え!?そのコ、ヘビメタ顔だったかって!?そうそう、忘れてた。画竜点睛を欠くとはこのことだ。
結果は残念とゆーか何とゆーか、彼女は全然メタル入ってなくて、どちらかと言えば、ロリ系のベッピンさんだったのでありました。チャンチャン! |