「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
琵琶湖タワーでポン!

 確かに直径108m、世界最大級を誇る大観覧車「イーゴス108」もある。普通のバンジージャンプも逆バンジーも両方が備わってる。映画見ながら、椅子がガタガタ揺れる、バーチャルコースターもある。一応ひと通りは何でも揃ってる・・・・・・なのに、なのにだ。

 何ゆえ、かくも「琵琶湖タワー」は大脱力なのか!?

 立地が大体良くない。琵琶湖西岸は「紅葉パラダイス」に局部脱力の町「雄琴」、今は爆破解体で消えたけど「幽霊ホテル」等々、筋金入りの脱力濃度を誇ってるのだった。浮御堂も大抵は、泥田のように干上がった湖床で哀れな姿を晒してる。
 何かのオーラにこの辺りは包まれてるのか?それとも祟りか?

 ・・・・・・うーむ、バカな感慨に耽ってる場合やない。肝心の琵琶湖タワーを忘れるトコやったやんけ。

 ・・・・・・・・・・・

 何が琵琶湖タワーで脱力かと言えば、要は「異常に野暮ったい」コトに尽きるだろう。遊園地としては、趣味の悪さが尋常ではない。狭ーい敷地に何のまとまりもコンセプトも無く、コテコテの割に老朽化した諸設備が並ぶ。古い方のジェットコースターなんかサビだらけだ。脱線しないのかな?
 駐車場も無料はいいが、設備群と混在して砂利敷きのが点々とある。つまり設備投資はそこそこやるのだが統一感がサッパリない上に、後の維持管理や抜本的リニューアルが、全く度外視されているのだ。だからひたすらだらしなく拡大し続けてるだけ。

 最もコテコテなのがお土産と軽食コーナーであるのは言うまでもない。地方都市の駅前名店街も腰をヌかす、恐るべきレトロぶりだ。大きさだけは立派なんだけど、何だか妙に小汚い。「年増の厚化粧」とゆー格言を思い出す。
 2Fのレストランとゲーセンはまあ当然としても、何やこれ?結婚式場まであるやないか!誰がするんや、ここで?バンジー結婚式か?
 こんなけ揃ってて宿泊設備も無いワケがない。そうなのだ、ここ一応旅館業なのだ。

 私は脱力の倦怠感にクラクラして、鯉の池の傍に行った。人だかりがしてる。何があるんやろ?・・・・・・どっひゃ〜!!何や何や、この鯉の数は!
 巾1m程の、用水路みたいに駄菓子コーナーの小屋を取り囲んだ池には、水面が盛り上がる位に鯉が押し合いへし合いしてる。見てて気分が悪くなる。みんな黒い鯉。ここは生け簀か?レストランで洗いにして出してたりして。

 ・・・・・・・・・・・・

 昭和30年代から40年代初頭にかけて、全国的にヘルスセンターのブームがあった。産業振興政策で石油や天然ガスをボーリングしたら温泉が出ちゃったとゆーのが典型的パターンである。今や一軒宿としては世界有数のデカさとなった長島温泉も、元々はそのクチだ。
 何を隠そう琵琶湖タワーも同じなのである。それが証拠に、忘れられたような温泉棟が園内の一角に建っている。そして他のコテコテからすれば随分控えめな大浴場には、灰緑色の不思議な湯が溢れている。湧出量も結構ある。
 片方は団体客がひきもきらぬ観光地となった。しかし我等が琵琶湖タワーは十年一日の如く、一向にアカ抜けしない。頑張ってるのにねぇ。

 私は呆然と湯に入った。近所の老人らしき人達がポツポツとやって来る。いっちょ前に、冷泉の源泉槽まであるぢゃないか。のぼせた身体を沈めて窓の外を見てると、今まさに逆バンジーがバビューンと跳び上がった・・・・・・。


2004補足
 文中では「琵琶湖タワー」となっているが、正しくは「びわ湖タワー」、しかし結局最後までタワーは存在しなかった(笑)この遊園地も、平成13年(2001年)の8月末日をもって廃止となった。近畿地方ではUSJがオープンした影響で、他にも宝塚ファミリーランドやポートピアランドをはじめ多くの遊園地が閉園に追い込まれたのであった。

Original1997 Add 2004
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved