「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
玉手山遊園地の巻

 電車で行けば河内松原と古市の中間、道明寺(桜餅とは関係ありません)という駅から少し行った小山の上に、玉手山遊園地は悄然とある。駅からは小さな支線が出てて、関西線の柏原(かしわら)に接続している。かつては吉野から伐り出される木材の積み替えで賑わったのだが、今では遠くに大和川を望む何の変哲もない場所である。そういえば高校の頃はまだ、古風なレンガ色の電気機関車がよく駅に止まっていたものだった。
 何でこんなトコにと思うが、これでも近鉄が経営する立派な(!?)遊園地なのだ。一応。 ロケーションの前フリで充分御理解頂けるものと確信する。ここは、紛うことなき大脱力遊園地である。

 どんなトコが脱力かと言って、まず、絶叫系のマシンが一つも無いことであろう。幼児向けコースターさえない。これだけでテンションの低さは充分伺い知れる。で、どんなもんがあんのかとゆーと、こうだ。

   ●ミニSL
   ●メリーゴーランド
   ●アストロファイター(グルグル回るヤツね)
   ●冒険ランド(フィールドアスレチック)
   ●すべり台
   ●ジャングルジム
   ●人間ロープゥェイ(野猿みたいなもん)
   ●昆虫館

 ね、すごいっしょ!?こ・れ・だ・け・児童公園かいな。今時、巨大スーパーの「ワンパク広場」とかでも、もうちったあ遊具が揃っとるんやないか?
  一番のウリが長ーい滑り台とメリーゴーランドっちゅーのも、イチビッてるのかマジなのかホント、ズレてて楽しいよな。理解に苦しむ。大脱力だわ。

  さらに骨の抜けるごたる事実がある。こんなけショボいクセに何と、フリーパス券(!)が存在し、あまつさえそれがたったの1000円!ホンマにここは遊園地なのだろうか。金取っていーから設備投資しろよ!・・・・・・ったくもう。

  ・・・・・・なーんて、怒っちゃいけない。ここは脱力空間なのだから。

  それでも子供にはそれなりに楽しめるのか、春秋の遠足シーズンは近所の小学生の団体(勿論低学年)でそれなりに賑わうし、休日は幼児を連れた若い家族にそれなりに人気があるみたいだ。言うまでもなく「それなりに」である。
  だからここは一つ、是非ともカップルとか何か「若いナウなヤング」で訪れて欲しいと思う。絶対、ギュパーッとトビそうになりますから。

  最後に。ここ玉手山には遊園地の他に、横穴式古墳群なるものがあるのだが、それはそれは見事に悪童達の遊び場と化している。遺跡保存もヘチャチャもホチョチョもあったもんじゃない。ただのボコボコ空いた崖っぷちの穴だ。

  ここで昔、墳墓を飾る線刻画が発見された。されたのはいいが、その存在は実は遙か以前から知られていたそうなのである。何で遅れたのかと言うと、その絵の稚拙さに誰もが、「近所のガキの落書き」と信じて疑わなかったからなのであった。
  往古の昔より玉手山という土地自体が脱力のオーラに包まれていたのかも知れないが、ともあれいかにも脱力遊園地にふさわしい、アホなエピソードではある。

  ちなみに休園日は水曜です。駐車場はありません。それでも園内には3ケ所レストランがあります。よろしく。では。


附記:これを書いてしばらく後、この遊園地は廃園となった。

Original1997 Add 2004
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