「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
コロッケ小考

 正しくは「肉屋のコロッケ」である。店先のフライヤーにつけたカゴに並べられたコロッケ。クリームコロッケではない。イモだよイモ。それも俵型ではなくて小判型と法律で決まっとる!

 どうも最近はスーパーのラップに包まれたものに押されて、見掛けることが少なくなった。でも、あーしてラップ包装になったコロッケって全然カラッとしてなくってフニャフニャで、ちっともうまくないんだ。

 スーパーでセルフで取るタイプには、それでも少しは昔の面影が残るが、これが又、うまくないんだ。何であんなに味付けが濃いんだ?全く。

 ・・・・・・で肉屋のコロッケ。ヘッドとゆー牛脂(ブタの脂がラードと呼ばれてこっちの方がポピュラーだ)で揚げたものがやっぱりいいな。つぎ足すだけで替えてないんじゃないか、と凝ってしまうよーな焦げ茶色のドロドロの油の中を浮き沈みする、あれだ。

 近所のダイエーにもあるんだけれど、結構、高い。それに、小綺麗なビルの中のテナント街にあっても、もひとつピンと来ない。周囲のシチュエーションも大事な要素なのである。
 オススメは豊中は庄内、豊南市場の肉屋のコロッケが、正しく、私の求めているものを、周囲のスラクチャも含めて継承してるよーに思う。一度、試してみて欲しい。確か1ケ25円と格安だったように思う。

 でも、買ったからって、家に持って帰って、皿に載せて食べても面白くないのだな、これが。どだい、家に着いた頃には湿気でフヤけてホニャホニャだ。
 加えてもっと欠点がある。フライ物のクセに、おかずの主役を努めるだけの「華」に欠けるのだ。

 一膳飯屋のガラス棚に並ぶおかずを思い浮かべてほしい。片やトリの唐揚げや、天ぷら盛合わせや、トンカツがいかにも「私はメインディッシュなんですよ」と真ん中で存在感を漂わせてるのに、コロッケはやや端の方のお浸しやら酢の物との境界線辺りで、申し訳無さそうにしているのが常だ。
 つけ合わせにしたって、せいぜいキャベツだけ。パセリもついてない。だからいっそ、家では厚めの食パンにマヨネーズやらケチャップを塗りたくってギュッと2つにたたんで食ったりした方が、よっぽどハマるとゆーものだ。

 結論。つまり肉屋のコロッケは、

    「歩きながら食べる!」

 ために売られてるのである。タコ焼きとかタイ焼きとかに近い存在だと思う。

 揚げたてのアツアツ、ホクホク、バリバリの衣で口の中が切れそうなヤツをパクつく快感。包み紙は当然、新聞紙か若草色のワラ半紙でなくてはならない。
 これって、ホント、ハンバーガーなんかよりよっぽど「歩き食い」の至福だと思いませんか?

 最後になったが、こんなに素朴で愛すべき「肉屋のコロッケ」には同種のお友達がいた。それは思うに、ジャガイモ串フライ、ウズラ玉子のフライ、ハムカツではないだろうか?
 いずれも、夕食のおかずの主役にはチト寂しいが、少なくとも昔日をしのぶには恰好のサカナだろう。

 どうぞお試しあれ。

Original1997 Add 2004
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