「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
うどん・ウドン・饂飩

 ハンバーガーもフライドチキンもクレープも無かった頃、喫茶店の軽食と言えばカレーとサンドイッチとナポリタンしか無かった頃、軽食の代表選手は、「うどん」でありました。
 「あしたのジョー」の中で、巨漢の西が減量トレーニングの苦しさに耐えかねて、夜中抜け出して屋台のうどんを食べに行くとゆー印象的なシーンがあった。結局、矢吹丈にバレてドツキ廻されるんだけど。
 今回はこの「うどん」についてである。

 立ち喰いうどんは今でも多い。駅構内とかで良く見かけるが、あれはしかし、「サラリーマン御用達」であって、誰もが気軽に入れる雰囲気ではない。例えば幼児の手を引いたお母さんが入れますか?そもそも子供の背じゃカウンターに届きませんわな。
 値段の安い点では確かに「虫やしない」軽食ではあるが、これはボツ。

 スーパーの軽食コーナーのうどんも、安いがもひとつである。当たり前だが「うどん屋」としての店構えが全くない。高速サービスエリアも同様の理由であきまへんな。

 かと言って松葉屋や美々卯とかの名店でもダメだよな。利尻の昆布がどーのこーの言われてもズッこける。それじゃ軽食の代表選手の名折れとゆーもんだ。

 デコラの安っぽいテーブルに、緑とか赤のビニールの丸椅子、10円玉いれてグルッとひねるとオミクジの出て来る灰皿がうどん屋の「3種の神器」である。「丼物一式」は当然としても、怪しげな「カレー丼」や、うどんダシにゴマ油と胡椒をブチ込んだだけみたいな「中華ソバ」は忘れてはならない脇役だろう。
 無論、それらの「御品書」、は赤いフチの短冊で煤けた壁に貼られてなくてはならない。

 もっと大事な欠かせないメニューがある。それは「ハイカラ」と「きざみ」である。今では天カスは無料サービスが普通だが、昔はそれを「ハイカラうどん」と称したのである。「きざみ」は薄アゲを刻んだもの(味ツケはない)が載っかっている。何ともチープで泣かせてくれる。そんな店も段々と見なくなってしまった。現代に尚、その面影を伝えるのは恐らく「力餅」だろうか。

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 しかし、現在もなお、軽食の代表選手がうどんの町がある。何を隠そう四国は高松である。讃岐うどんの本場だ。とにかくうどん屋が多い。店内は上に述べたレトロな様子とは全く異なり、セルフサービスが基本の、むしろ最初に否定したタイプのものである。
 それでも感動したのだ。客層がなかったのだ。老若男女、サラリーマンもOLも、子供連れの主婦も、大学生の兄チャンも、学校帰りの制服姿のネーチャンも、ニキビ面の中坊も、みんな入り乱れて思い思いの具を突っ込んで食べていた。

 やっぱし、うどんはこうでなくっちゃいけない。

 最後に余談ではあるが「たぬき」について。大阪では「たぬき」は「きつねソバ」を指すが、京都では、生姜の効いたよく暖まる「あんかけうどん」の事である。知らずに、夏のクソ暑い日にこれが出されて半泣きになった記憶がある。関東に行くと今度は「ハイカラ」の事である。アッチは天カスとは呼ばない。揚げ玉と称している。

 皆さん、気を付けましょう。

 それとも一つ、オマケに初期の町田町蔵の歌詞(?)を一つ・・・・・・

  ♪ハイカラに天カス入れんなぁぁぁぁっっ!!

Original1997 Add 2004
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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