「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
パックツアーの行方

 仕事柄、旅行代理店と話す事が多い。打合せの最後に必ず言われる。

 --------個人的なのでも、あったら何でも言うて下さい。

 よー考えたらオレ、代理店通じて自分の旅行申し込んだ経験がないのだな、これが。新婚旅行も自分で計画して、電話掛けまくって決めたもん。多分行き先が外国でもそうするだろう。
  何が悲しゅーて、お仕着せのツアーに加わらなあかんねん!?ワシは群れとーて旅行するんちゃうぞ!自分の行動位、自分で隅々まで作るモンや!

  まぁ、こんな変人は置いといて、一般的にパックツアーは相変わらずの人気らしい。行楽シーズン前の新聞の下1/3なんか、旅行屋の広告で埋め尽くされてる。豪華絢爛なんから日帰りの地味なのまで、御予算とスケジュールに応じて腐る程ある。意外にも、特に日帰りが一番人気なんだそうだ。

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そんなある日、新聞の投書欄に楽しーのが載ってた。大意を紹介しよう。

  「先日某旅行社の企画による日帰りツアーで、根尾の薄墨桜見物に参加しました。ところが行ったら道路は渋滞、途中の他の観光はカットされやっと桜の樹に到着したらものの見事に散り果て!そして、すぐ帰らねばなりません。帰りも渋滞で予定時刻を4時間もオーバーして、大阪に着いたのは夜中過ぎでした。どないしてくれんねん?アーンダラッ!」(大阪65才男、無職)

 ・・・・・・・・・・・・でその答え

  「誰が全部回ると約束しましたぁ?ちゃーんと借款に書いてある通り、道路事情等の不測の事態によっては端折ょるんです。大体ゴールデンウィークの真っ最中に予定通りの時間で行けると思う方が甘い!んなホンマのこと書いたら広告にならへんの子供でも判るコトやがな。おととい出て来やがれ!このクタバリ損ないがっ!」(○×旅行社、広報担当)

  まあ、どっちもどっちだけど私は旅行社の肩を持ちたい。筋が通ってる。ジイサンは何をトチ狂っとるのか、金さえ出せば(多分9800円コースだろうが)GWの渋滞も何のその、ゆったりと観光が楽しめると信じてたのだ。魔法でも使わなきゃ、勿論ムリである。そんな事も彼には分からんかったのだ。

  金払う側がいつも被害者/弱者/善良な小市民(・・・・・・の自覚があったからこそジイサンは憤懣遣る方なく投書したのだろう)で在れると思ったら大間違いである。旅したいなら旅したいで結構。ならば知識を深め、研究し、容易に騙されないだけの理論武装する責任の所在は、あくまで自分自身にあることを肝に銘じるべきだろう。旅や行楽は純粋に「アソビ」なのだから。

  このジジイにはそれがない。旅は複雑怪奇なマイコン炊飯器とは違うのだ。

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 これだけは知っておいて損は無いだろう。パックツアーが隆盛を極めたのは現代の日本ばかりではない。19世紀末イギリスでは、今のものと大差ないスタイルでパックツアーが大流行してた。そしてその後間もなく「陽の沈まない国」大英帝国の没落は始まったのは、申し上げるまでもない。

  もひとつ書いておこう。市民革命とやらによって、それまで一部の特権階級の遊びだった狩猟が一般市民にも開放された。我も我もとブームにアホな市民が押し寄せた結果、フランスでは固有種の多くが絶滅したのだった。

Original 1996 Add 2004
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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