「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
春の海顛末記


浅利・あさり・アサリ・・・・・・語感的にはカタカナが好きかも
  何を隠そう、春はアサリがうまい季節だ。貝のスター、アワビやサザエと較べて、普段はとても地味なヤツだけど、春から初夏にかけては抜群にうまい。うまいだけじゃなく、身が良く太って殻からあふれんばかりになるのも良い。
  これを丁寧に下ごしらえして炊き込みごはんにし、同じく旬の物、木の芽なんぞ散らせば最高である。貝自体の味が濃厚なので調味料も殆ど不要だ。少々セコいが、チマチマ網焼きにしても、酒蒸し・バター焼き・ミソ汁・深川鍋、どれもこれもグー!佃煮にしても、市販品より断然行ける。
  ちなみに酒は日本酒が良く合う。これには科学的根拠があって、貝の旨味成分であるコハク酸は、日本酒の重要な旨味成分であるからだ。

 ・・・・・・と、料理コラムのようになったけど、今回は春の海の風物詩「汐干狩」について。

  昨年の二色の浜での戦果に気を良くして、今年も汐干狩に挑むことにした。目指すは、播州赤穂は唐崎にある海浜公園である。専用袋に一杯(約5kg)まで取り放題で、何と1000円!一家なら高速代を差し引いてもツリが来る。
  早起きして、途中で鍬位のデカさのクマデを買い込み(ホントは、ジョレンとゆーカゴ付きのクマデが欲しかった)、目指す場所に到着すれば、誰も居らんやないか!料金所も無人。カニが道路を横切って茂みに消えて行った。 ガーン!そうなのでした。潮がまだ引いてないのでありました。

  干潮までの数時間をつぶさねばならない。しかし、幼児を連れて赤穂浪士ゆかりの旧跡を巡って、一体どーなるとゆーのだ!?頼みの赤穂御崎温泉は、外来入湯はやってないとのこと。う〜困った。こんな時は巨大スーパーに入るに限る。文字通りの「子供だまし」である。

  ようやく1時、戻るとうわ!駐車場にはクルマがギッシリだ。子連れの姿は殆どなく、泥との格闘に備えて完全武装の老夫婦が無闇に多い。雰囲気がえらく「プロ」である。商売でもするんだろうか?
  よし俺達も突撃だ!と道具担いでテンション上げれば、又もやガーン!

 --------兄チャン兄チャン、そらアカンわ!禁止や!

  「それ」とは、朝に買い込んだ巨大クマデの事なのだった。ジョレン買わなくて良かった。高かったもんな、アレ。結局手元に残ったのは、子供用のお砂場セットである。トホホ・・・・・・
  午前の海が嘘のように遠くまで干潟になって、人が一面に散らばっている。皆、真剣そのもの。生活がかかっているようなひたむきさが感じられる。
  それからの数時間、気付くと我が一家も全身泥だらけになって、掘って掘って掘りまくっていたのだった。いやもう、面白いように取れた。多分、夜中にダンプがやって来て撒いていると分かっていても、こんなけ実入りがあれば文句はない。
  そしてつまり、最初にズラズラと列記した料理の数々は、バケツ山盛り優に2杯はあったアサリを、アノ手コノ手で必死に食い倒した自分のことなのでありました。チャンチャン!

 ・・・・・・・・・・・・・・

  貝は無論、1年中取れるのだけれど、春がとりわけ汐干狩のシーズンなのは、味が良くなる以外にも理由がある。暖かくなって水辺が恋しくなることもそうだが、大潮で干満の差が大きくなることや貝毒の心配(夏場、特に2枚貝は中性腺という部分に猛毒を持つことがある)が無いことが合理的なトコだろう。
  ま、リクツは抜きにしても汐干狩は楽しい。たかがガキの遊びとあなどってはいけない。皆さん、7月上旬までがリミットです。お急ぎを・・・・・・

 ・・・・・・春の海、ひねもすのたりのたりかな

Original 1996 Add 2004
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