「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
新興温泉ブッタ斬り

 大体、「ブーム」なんて呼ばれる事自体ロクでもないことなのだけれども、昨今の「温泉ブーム」とやらには心底ウンザリする。「ドラクエ」や最近では「たまごっち」の流行はまだ本物のブームに思える。だって皆、動機は何であれ真剣に「手に入れたい」の一心で行列作るんだから。ちゃんと主体性がある。

 一方の温泉ブーム。何なんやこれ!?完全に業界主導。ラジカルに温泉目指しとるヤツなんざ皆無である。せいぜい学生の「温泉探訪サークル」位なもんだが、こいつらにしても学生ノリの無責任で、どーせ徒党を組まなきゃ何も出来ない連中だ。群れたがるなよ、ガキが。ホント、うっとーしい。

 観光業界も各地方自治体も、とにかく金を落としてくれたらそれで良しなので、全く無比判かつ無反省に、口当たりの良い施設を作ればバカな都会人が集まると思ってる。完全に客はナメられとるワケだ。
 結果、日本中に銭湯ともクアハウスともつかない、何の個性も地方色もない、味気なくもつまらない掘っ建て新興温泉が乱立することになってしまった。山梨県など、膨大な税金を注ぎ込んで30ケ所もボーリングしまくったそうだ
 そして勝手なもんだ。皆、飽きてしまった。決して筆者の思い込みではない。

 全国の基本的にデイユースを前提とした温泉施設で、まともに商売が成り立ってる所は、半分にも満たないと言われている。千メートルもボーリングして、やっと湧いたと思ったら殆ど水。沸かす重油代もバカにならない。これで資金が簡単に回収できる方がおかしい。出来るワケがない。
 まっとうな民間企業ならとうに潰れてるが、片や親方日の丸、片や胡散臭い不動産がらみの観光業者。「老人保養センター」だとか「ふれあい何とか」みたいな名前を付けて税金投入の言い訳にしてみたり、宗教法人の名の元に、法外に値段をつり上げたりと四苦八苦である。
 それでもここ近畿地方のように、元々温泉が少ない地域はそこそこもってる施設が多い。一方、関東以北・九州を代表とする温泉地帯は悲惨である。閉鎖休館を余儀なくされたとこだってある。

 ザマミロ。ホンマに来たいヤツだけに来てもらうような、そんな考えを持ったスタッフは一人としておらんかったんだろうか?
 そもそも秘湯だ何だと安易に紹介するメディアのタチは悪いが、ちょっとTV・雑誌で見たからと言って、安易に訪れる方も十分に悪い。こーゆー甘っちょろい連中の抜かすことは知れている。曰く・・・・・・

設備が古いからイヤだ/混浴だからイヤだ/脱衣場が無いからイヤだ/温泉なのに湯船が一つなのはイヤだ/露天風呂が無いからイヤだ/目隠しが無いからイヤだ/熱過ぎるからイヤだ/ぬる過ぎるからイヤだ/湯に色がついてるからイヤだ/石鹸・シャンプーもないからイヤだ/遠いからイヤだ/不便だからイヤだ/近すぎてイヤだ/本格的過ぎてイヤだ/イヤだからイヤだ。

 じぶんちの風呂に入ってろっ!!っつーの。

 こんなアホ共のリクエストに、欲だけ肥大化させた妖怪みたいな手合いが寄ってたかって、最大公約数的に応えた挙げ句がこのザマだ。

 男女均等・左右対称、熱いの深いのぬるいの浅いの、打たせに超音波に、外には塀に囲まれた箱庭露天風呂、カランにはお約束のアロエボディソープとリンスインシャンプー。多少の変化はあっても、これが日本の新興温泉の全てである。他には全く何もない。

 早く滅んでほしいものだと、ハードコア温泉野郎の自分はしみじみ思ってしまう。そうだ、アメニティは決して無責任で野放図なものではない。享受する側にも、提供する側にも、それなりの努力と精進に、あえて不遜のそしりを覚悟で付け加えるなら、最低限の「資質」が求められるのである。

Original 1996 Add 2004
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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