「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
アウトドアクッキング!

 何が何だか分からない内に、アウトドアブームである。ディスカウントや釣具屋のチラシにまで「コールマンツーバーナー¥9,800!」とか「ロゴスドームテント¥16,800!!」なんて出ている。子供にせがまれたり、家族サービスのつもりで買った人も多いことだろう。
 しかし、安上がりなようで、イザ買ってみると、コマゴマしたものが必要で、意外に高くついた。手入れが面倒。かさばって普段の置場に困る。等々、何かと色々問題も多い。
 行ったら行ったで、準備するだけで、どひゃー大変!

 テーブル出して、イス出して、バーナーにガソリン入れて、スタンドに載せて、んでもってポンピングだ、プレヒートだ。市役所の手続きだってもう少しはラクなんじゃなかろうか、と思えて来る。
 オトーサンの苦闘はまたまだ続く。水は汲みに行かなあかんわ、食材は出さなあかんわ、テントは説明書通りに立ってくれないわ、と「何で遊びに来てこんなに苦労せにゃならんのだ!?」とタメ息をつかれた方も、これ又多いことだろうと拝察する次第である。

 そこで、今回のコラムは2回にわたって、簡単なアウトドアクッキングについて、である。ちなみに、上のエピソードは個人的なものではありません。

 まずは、基本の3か条


  1.できるだけ火を使わない!
  2.できるだけ道具を減らす!
  3.できるだけ現地調達する!


 これを守るだけで、はっきり言って楽勝である。続いては、具体的に必要な物を挙げると、以下の通りになる。


  1.醤油・・・・・・地元のスーパーかどっかから、適当に取って来る。
  2.わさび・・・・・・チューブに入ったやつ。
  3.ワリバシ・・・・・・これも、スーパーの惣菜コーナーとかからせしめる。
  4.食器・・・・・・3点コッヘル等、安物で充分!火にかける事を忘れずに。
  5.固形燃料・・・・・・昔ながらの缶入りのもの。小さいので結構。
  6.ミソ・・・・・・だし入りで小分けになったやつか、チューブ入りのもの。


 たぶん、総費用千円ちょっとで全部揃うはずだ。上手に詰め込めば、ウエストポーチにだって納まり切るコンパクトさ!強いて付け加えるなら、調味料関係はもう少し色々あってもいいかも知れないし、家にある小さめの皿やナベを持ってったって構わない・・・・・・要は、3か条を基本にすれば何だってOKなのである。
 何で、醤油とワサビなのかについては、その理由は単純である。刺し身にソースをかけては食えないが、トンカツに醤油ならまだ行けるからだ。

 最初に色々書いた大仰さに較べると、何とまあシンプルであることか。これならば、全く経験のないアナタにも、道具に押しつぶされそうになってるアナタにも自信が湧くというものでしょう。

 とゆーワケで、今日はここまで。次回は料理・効能編をお届けします。最後に、恐らく旅の達人だったと思われる俳句の元祖、松尾芭蕉の一言を

 --------旅の具は、少なきが良し。



 さて、先週に引き続いて今回は、後編。料理・効能編について。

 買うものは、刺し身のパック、魚貝類、パック入りの寿司、等々。惣菜コーナーのコロッケやらお浸しなんかもお勧めである。必要ならば、酒・ビールといったアルコール類。刺し身、惣菜関係は口にいれるだけで済む。おもむろに10円玉で固形燃料のフタを開け、小さな鍋を火にかける。魚貝類は全部まとめて、みそ汁にしてしまう。刺し身で、甘エビの頭とか残ってたら、それも構わずブチ込んでしまう。少々のウロコとかは無視しちゃう。こうすれば、ダシも出て美味い。

 どうです!?簡単でしょ!?

 これでアナタは、隣の赤いボルボ850エステートワゴンに、毛の長い賢そうな大型犬を連れた一家が(※註、キャンプ場に行くと必ず一組は、こーゆーすかしたファミリーがいる)、道具を並べるだけで四苦八苦するのを横目で眺めながら、本当にゆったりとした時間を過ごせるだろう。
 それならばいっそ、こんなアイデアもどうだろう?キャンプ場に出前を取ってしまうのだ。仕出屋の懐石弁当なんか最高だ。草地に据えられた大名膳、ゆくりなく味わいながら、一時を過ごす。ただし、出前が来てくれるかどうかは、保証の限りではないが・・・・・・。

 ちょっと脱線すると、私は高校生の頃教室に出前を取って先生からムチャクチャに怒られたことがあります。まあやっぱし、授業中に出前箱提げたアンチャンが入って来たのはマズかったんだけれども。

 冗談はさておき、このヤリ方、大欠点が幾つかある。ついでだから、これも箇条書きにしよう。


  1.とてつもなくビンボ臭い。下手すると、ホームレスの様である。
  2.大人数に全然向かない。頑張っても3〜4名が限度である。
  3.メニューにテンヤ物が並ぶので、「クッキング」の感じが出ない。
  4.暗くなってからだと、涙が出るほどさびしい。わびしい。情けない
  5.趣味の高尚さ/高邁さが理解されず、変人に思われる。


 我田引水、手前ミソとはこの事かも知れない。なーにが「高尚さ/高邁さ」だ。書いててアホかと自分で思ってしまう。ただの変人やないか!
 しかしだ、昨今のコンセントまで備えつけられたキャンプ場に、夜逃げでもして来たんかいな?とイヤミの一言もでる位のテンコ盛りで繰り出すのとは、根本的に大違い。この軽みだけは捨てがたい。
 そして、その軽みは芭蕉の言う「漂泊の思い止まず」や種田山頭火の放浪とか、サンカ(日本に昭和40年代初頭まで存在した、と言われる非定住者)とかジプシーの流浪や、バム(ヨーロッパで各地をフラフラして遊んでる若者)の気持ちにどこか通底する、根無し草の軽みのように思う。

 うーん・・・・・・文字にすると大層やなあ。仕方ない。勢いで続けましょう。

 多分、自由の代償としての哀感をアナタは、程度の差こそあれ、実感することが出来るだろう。たとえ日帰りでも、一泊二日でも。

 まあ、あんましハナシが堅苦しくなってもいけない。名付けて「貧困アウトドアクッキング」。暖かくなったらひとついかがでしょうか?その内「宿泊編」「旅行編」もお届けします。

Original 1996 Add 2004
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