「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
落人伝説と超美人

 とんでもない山奥で、とんでもない美人の地元民に出くわすことがある。相当うれしい。或いはムチャムチャカッコいい男も見てるのかも知れないが、私はヘテロ/ストレートなので全く記憶にない。オンナがやはりいい。
 数年前、北但馬のミカタ奥ハチにスノボに行った帰りの事だ。下校途中の女子高生とすれ違ったら、もの凄いベッピン!見とれてそのままガードレールに衝突しそうになった。谷底に転落してたら、いい物笑いの種にになってたろう。

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 群馬の尻焼温泉は、和歌山の川湯・長野の切明なんかと並ぶ「川がそのまま風呂」で有名である。あいにく訪れたのは初夏の頃、川は雪解け水で増水してた。これでは流されてしまう。仕方無しに河岸にある露天風呂で我慢することにした。とはいえ、素っ気ない造りのこちらも結構シブいたたずまいである。

 知名度とは裏腹に、小さな山峡のいで湯といった趣が強い。旅館が数軒散在するだけだ。今日の宿泊地をここにして正解だったようだ。
 宿に入り、又もや風呂に行って、部屋でボケーッとビール飲みながら窓に腰掛けて景色見てると、夕食が運ばれて来た。どれどれ?どんなんかな?わお!!

 前フリでお分かりの通り、料理の内容に驚いたのではない。恐らくここの娘さんだろう。お膳を提げて来たのは、年の頃は17・8のものごっつい美少女なのだった。目鼻だちから肌の色つやからスタイルから何から、もう完璧だ。
 ただしジャージ姿だったけど・・・・・・。いずれにせよまあ、素っピンでこれは驚嘆に値する。料理が並べられる間中、見とれてた私は確実にアホ面さらしてたに違いない。

 山宿にありがちな山菜のオンパレードを前に、私は改めて「山奥の美少女」のワケを考えてみる気になった。

   @ 食べ物と空気と水と環境が良いので、ストレスがない。
   A 元来、人口に対する美人率は低い。加えて人口の少ない過疎地域で出会って、実際以上に綺麗に見えた。
   B 平家の落人か何かの末裔で、朧たけた美人の連綿と続いた血を引いている。
   C 因習と掟に閉ざされた(←このセリフ、好きなんです)閉鎖社会での近親婚を繰り返したら、突然変異的に美人が生まれた。
   D ただの偶然。運が良かった。見つけたヤツが眼ざとかった。

@ストレス説

 それではただ単にボーッとした顔になる事の方が多そうな気がする。

A過大評価説

 理性的ではあるが、全く面白みがない。「雨の降る日は天気が悪い」と同じでミもフタもないので、ボツ!

B落人説

 平安美人と言やあ、アーチャリ(麻原彰晃の三女。ひでぇ)に掌底突きを10発位入れたよーなドメンタコとちゃうんか?と言われそうだが、それは誤解である。井上章一は「美人論」で博覧強記ぶりを発揮して、豊富な資料を引用しつつ、ベッピンの基準は太古の昔より実は何ら変わってない事を詳細に述べている。だから、平安美人の血流が現代的な美人であることは十分あり得ると思う。

C近親婚説

 近親婚のマイナス的側面は近年、生物学的には否定されつつある。倫理・道徳的観点からインセストは禁忌とされた、と理解すべきらしい。事実ならばそれはそれでコワい。ともあれ、辺鄙な村に対する横溝正史の小説的なオドロオドロした偏見よりは、こっちの考えの方が楽しかろう。

D目ざとい説

 ほっといてんか!

 ・・・・・・どれが正解だかはどーでもいい。全部ハズレかも知れない。ともあれ翌朝宿を発つ時、そのコは既に学校に行ったしまってたようだ。似ても似つかぬドターッとしたおかみさんに送られて、私は尻焼温泉を後にしたのであった。

 実に残念である。も一度見たかった・・・・・・・。

Original 1996 Add 2004
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