「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
温泉マーク縁起

 「かつらこえだ」とワープロで打って変換すると、イッパツで「桂小枝」と出て来る話を、探偵ナイトスクープでやってた。試してみたら本当だった。ちなみに「かつらさんし」はちゃんと出ない。「かみおかりゅうたろう」に至っては、「神尾下流太郎」である。ワハハ、やっぱし機械ってバカ。

 ワープロにはこんなんホンマに使うんかいな?と思うようなマークまで入ってるのに、「」はない。ついでに書くと、「  」マークもない。何てこった!民謡とか小唄が引用でけんやないか!

 今回はこの、妙にとぼけた味のある、サカサクラゲこと温泉マークの由来についてである(・・・・・・しかし、「サカサクラゲ」とゆー言葉もほとんど死語の世界だよな)。

 何と!いっちゃん古い例は、今から約300年余り前、万治4年(1661年)の奥書のある地図に載っている。これは土地境界争いの裁定のために作成されたもので、いわば、裁判所判決の公文書みたいなものだ。下図は原図ではなく安中市の記念碑の写真だが、見れば現在よりもひょろ長いのが2つちゃーんと記されている。

                          

 おお、すごい!特徴を良く掴んでるじゃないか。群馬県は安中市とゆー町の磯部温泉が、この地点に当たり、地図の原本は高崎美術館に保管されてるそーだ。

 さて、時代は下がって明治14年、内務省地理局測量課(多分、現在の国土地理院みたいなトコだろうか)の作成した地図に、記号としては始めての温泉マークが出て来る。こんなんである「  」。湯船を表す四角の上に湯気を示す3本線が乗っかっている・・・・・・何だか余りピンと来ないな。
 ここまでがどうだったかと言うと、幾つかの古文書にヘンなのがあるらしいのだが、体系的には調べられなかった。

 ともあれ、この「  」マークを皮切りに以降、発信元は若干異なるが「  」「  」「  」等、幾つかヘンなのが登場する(最後の例は、ドイツの温泉マークだそうだ)。しかし、も一つ馴染めなかったのか、いずれも短命に終わっている。
 明治18年、今度は陸地測量部とゆートコが作った地図に、いよいよそれらしいのが現れた。「  」である。湯気にナカナカ勢いがある。
 その後湯気は少しづつ真っ直ぐになり、地図記号としては、「」が定着して現在に至っている。

 では、この湯気にS字状のヒネリが加えられた経緯はどうなのか?又、明治以前に既に「  」マークは市民権を得ていたのではないのか?

 実はその辺が一番知りたかったのだが、今回、本をひっくり返しても、問い合わせても、全く判明しなかったのである。井上章一(「霊柩車の誕生」とゆー珍本で一躍有名になった)や荒俣宏(「帝都大戦」の作者。恐ろしく博覧強記で「福助さん」なる、福助人形の由来についての著作等がある)といった、何だかヘンなモノに詳しい人に尋ねてみたい気もする。

 それは今後の課題として、今回はこれでおしまいです。


附記
 この稿をまとめるに当たって、「温泉マーク発祥のまち」群馬県・安中市商工観光課より、詳細な資料を送って頂きました。感謝の意を込めてここに記すことにします。本文の内容の大半は、送付資料中の、高橋正信さんという方の記事を引用したものです。


2004補足
 時代は変わってずいぶん辞書も充実してきたけれども、相変わらず温泉マークや小唄マークは存在しない。今回、WEB化するにあたって、あちこちから適当に素材を拾い集めて再構成したが、不足した部分はそのままにしてある。
 また、S字状のヒネリの入った温泉マーク「」は、別府が発祥の地であるのが正解らしいことがその後判明した。

Original 1996 Add 2004
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