--------ゆんべのメシはすごかったなあ。男3人でも食い切れんかったもんな。
--------ああ、ムチャクチャ豪華だったよなー。
--------せやけど、あの部屋、あれはひどかった。
・・・・・・と、前泊の道後温泉の旅館の記憶を反芻して、現在VDFの店長をしているN君とは、遅い昼食の後別れた(彼は一人で知り合いの女の子のトコ行ったんだ。クソ!)。こんな時、残された野郎2人がとってもマヌケなのは言うまでもない。今夜の宿はまだ決まっていない。
--------これ、これにしません!?土柱休養村温泉、何やヘルスセンターみたいでっせ。
--------そーだなー、1泊4800円だし安いよなー。おう、これにしようや。
予約はすぐ取れた。B級、モンド、キッチュといったものに目のない2人は勝手に、ぶら下がったボンボリや造花、売れない演歌歌手のコテコテの歌謡ショウなんかを想像しながら向かったのであった。
何のこっちゃない。こざっぱりした町営か何かの「憩いの家」みたいな建物だ。裏山が有馬の蓬莱峡に似た、阿波の土柱とゆー名所なのである。
残念!こっちは想像たくましく、テスコのエレキにグヤトーンのアンプ(このセンス分かってもらえるだろうか・・・・・・)まで思い描いてたとゆーのに!
ともあれ、フロに行く。至極平凡な男女別大浴場には浴客がウジャウジャ。緑茶色がかった湯もまあまあかな。それにしても人が多い。ケロリンの黄色い洗面器と相まって、銭湯のようである。ま、四国に点在する冷鉱泉の典型だろう。
迷湯の衝撃が走ったのはその後だった。食事の時間になり、いつの間にか私達以外には数名の宿泊客だけが残っている。そして、食堂ホールに座った我々の前に運ばれて来たもの・・・・・・。
ステンレスの楕円皿には、キャベツの千切り、キューリ2切れにトマト、ちっこいメンチカツ、イカのリングフライ、エビフライ(多分四国だから、加ト吉っちゃんだ!)、後はみそ汁、タクアン。以上!!
これは、通常「ミックスフライ定食」と呼ぶもんじゃないか!どひゃー!昼飯はトンカツ定食だったんだぞ。
そしてそして、おばちゃんはニコヤカに、
--------沢山、あがって下さいね。
・・・・・・と来たもんだ。この何の疑いもない笑顔には抗えない。
何だか半泣きになりながら、2人は意地になって、ドンブリ飯を3杯食って、ついでに食卓の上の小さな壺に入った佃煮も全部たいらげて、そうしてどちらからともなくポツリと言ったのだった。
--------ゆーべの鯛のカブト焼、残すんじゃなかったなぁ・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
阿波は徳島での話だ。
誤解のないよう申し上げると、私達は決して腹が立ったワケではない。又、この鉱泉宿が悪いワケでもない。大体、値段が値段だから。
ただもうちょっと、工夫は欲しかったな。正直言って・・・・・・・。 |